リオ五輪アジア最終予選 U-23アジア選手権 日本vsサウジアラビア 「イラン戦へ準備万端?」
2016/01/22 20:14配信
カテゴリ:コラム
リオ五輪男子サッカーの予選であるU-23アジア選手権が行われています。
日本はグループステージで2連勝し
早々に1位通過まで決めてしまいました。
そのため、第3戦のサウジアラビア戦は消化試合と言えます。
しかし、手倉森監督の目指す
「大会の中で成長しながらリオ五輪の切符を掴む」
という目標を踏まえると
この90分も、無為に過ごすわけにはいきません。
とはいえ、次戦のイラン戦までは中2日
そしてイランはその試合まで中3日ということで
この手のコンペの日程は、開催国(の組)が有利に組まれているので
仕方のないことではあるのですが
そういった不利も踏まえ、選手の温存というのも考えながら
試合を消化する必要がありました。
スターティングメンバーとフォーメーション
日本は、先発は中2日のタイ戦から10人を変更し
タイ戦までに出場機会の無かった選手も4人起用してきました。
これで、今回招集したフィールドプレイヤーは
全て起用したことになります。
そしてフォーメーションも
従来に442から433に変更してきました。
これには2つの狙いがありました。
1つは戦いの幅を広げることです。
このチームの、442での基本的な戦い方としては
前からのプレスを強めるやり方をメインとしている節があります。
従って、相手ボールの時に間延びしてしまうことがありますし
また、僅差のリードを守り切りたい時などにおいて
適当と言えるやり方とは言えません。
そういった時に、アンカーを置くシステムがオプションとして在ると
速攻性のある守備的な作戦として有効だということです。
もう1つは、先を見据えてのことです。
次戦のイランは433のフォーメーションを採っています。
両ウイングがサイドに張り出し
そこにロングパスが供給されるシステムがあります。
4バックで守る際には非常に苦労することでしょう。
そこで、433を導入すると
フォーメーションを相手と噛み合わせ
キッチリとハメ込むことが可能になります。
また、451の並びにすることで横幅をより多い人数で埋め
サイド攻撃を受ける際の懸念である
スライドの負担と相手に与える時間を
より軽減できるというメリットもあります。
いずれにせよ、守備面でのメリットがあるという
手倉森誠監督らしい時間の使い方と言えます、
もちろん、試しておいて損はないでしょう。
消化試合とはいえ、相手は重要なものが懸かった公式戦です。
テストとしては非常に恵まれた環境と言えます。
ちなみにこのチーム
一昨年のU-22アジアカップやアジア大会では
実戦の中で433を導入していた実績があります。
433が全くの初めてというワケではありません。
433と左サイドの狙いから生まれた先制点
この試合での日本の攻撃は左サイドを中心に行われました。
442で守るサウジアラビアに433で対することで
攻守にギャップを作ることができます。
ギャップを作り、そこに選手を配置することということは
良くも悪くも、攻撃面でも守備面でもマークがズレる
という特徴があります。
従って、攻撃面ではそれを生かすこと
守備面ではそこをいかにカバーするかがカギとなります。
攻撃面では、件の左サイドが効果を挙げました。
左ウイングの中島翔哉、左サイドバックの山中亮輔
そして左インサイドハーフの井手口陽介が流動的に動き
ボールを収め、運び、チャンスを作っていました。
特に中島の適切なポジショニングは
サウジアラビアの2ボランチを混乱させ
日本の井手口と大島僚太の両インサイドハーフが
フリーで前を向いてボールを持つことができていました。
その左サイドでの素早い切り替えからミスパスを誘発し
そこから大島の素晴らしいミドルシュートにより先制したことは
433を採用した手倉森監督にとっては
面目躍如といったところでしょう。
その大島のミドルシュート。
シュート自体も素晴らしかったですが
その前のプレーでの、相手ボランチを外すドリブルは特筆です。
これは川崎・風間監督の教えである
「常に相手の逆を取る」
というプレーが、このリオ五輪予選で出たということです。
Jリーグが世界に繋がっているということを
見る側に実感させてくれるプレーであったと思います。
イラン戦へ、準備は万端整った?
後半、日本は追加点を挙げますが
これもインサイドハーフの得点です。
右ウイングの南野拓実が個人技で相手を引き付け
バイタルエリアで完全に浮いていた井手口が
ダイレクトで決めました。
サウジアラビアは日本のインサイドハーフへのマークがハッキリせず
433に対応できたとは言えないまま、時間が過ぎていきました。
この試合の日本の失点は、正直言ってよく分からないので良いとして
失点にはならなかったものの、ロングボールへの対応は不安視されました。
特にロングボールに対して
相手選手と競り合いながら背走している時に
相手選手に対して手を上から出して、掛けてしまうケースが目立ち
奈良竜樹、松原健は前半のうちに警告を受けてしまいました。
これらのファウルにより、いずれも自陣深くから
フリーキックを与えてしまいました。
この先、一発勝負の試合が続く中でのこの選手たちの起用は
不安としか言いようがありません。
ただ、守備陣はイラン戦へ向けて
遠藤航や岩波拓也、室屋成などを温存しており
出来るだけのことはやっている、といった印象を受けます。
主力である彼らは違いを見せてくれるでしょう。
あとは433で特殊なサッカーをしてくる
イランと対峙してどうか、という面ですが
そればっかりはやってみなければ分からない部分が多いです。
総じて言えることは
100%ではないにしろ、やれることはやった、ということです。
あとはその準備を無駄にしない
当日のパフォーマンスが試されているということが言えるでしょう。