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遠藤航、浦和移籍決定 その移籍の真意を読み解く

2015/12/26 13:53配信

武蔵

カテゴリ:コラム

J1の8クラブが興味を示したということで

去就が注目されていた、日本代表の遠藤航が

2016年シーズンより、浦和へと移籍することが発表されました。

これにより遠藤は、ユース時代から合わせて

8年間を過ごした湘南に別れを告げることとなり

彼にとって、また新たなチャレンジが始まります。

どのチームでも主力であり続けた遠藤航

遠藤航は湘南にとって、主力中の主力であることは

今さら言うまでもありません。

湘南ユース所属時代から2種登録され

J1のピッチで出場を果たして以来

ケガに悩まされた2013シーズン以外は

軒並み、30試合以上の出場を続けてきました。

本業の守備力も

そしてPKキッカーを務めたり

セットプレーの強さを見せたり、という得点力も

魅力として発揮しました。

そして各年代別日本代表でも、主力であり続けました。

2010年のAFC U-19選手権に

早生まれとはいえ飛び級で出場して以来

2012年のAFC U-19選手権にも出場し

2014年以降はリオ五輪を目指す日本代表においても

当然、チームの中心を担い続け

7月の国際親善試合・コスタリカ戦からは

チームのキャプテンを務めるようになりました。

そして同じく7月の東アジア杯では

日本A代表に初招集され、初戦の北朝鮮戦で早速、先発出場し

いきなり前半2分、武藤雄樹の得点をアシストしました。

ハリルホジッチ監督の信頼を確かにした遠藤航は全3戦で先発出場を果たし

9月のW杯2次予選でも招集を受け

日本代表に欠かせない選手となりました。

遠藤航の長所は数え切れないほどあると思いますが

今、挙げたチームにおいて

全てポジションが異なる点は、特に見逃せません。

・3バックの右CB

・4バックのCB

・4バックの右SB

・ボランチ

そして、ハリルホジッチ監督はメンバー発表の際のプレゼンにおいて

遠藤航を、複数ポジションで計算が立つ存在として挙げました。

11月のW杯2次予選・カンボジア戦では

ボランチとしてスタメンに抜擢しました。

移籍を後押ししたカンボジア戦

そして、今回の移籍における1つの布石となったのも

そのカンボジア戦と言えるでしょう。


遠藤航にとって、このポジションの問題は

将来、今後の方向性を考える時に、とても重要な事柄です。

今回の移籍に際し、湘南公式HPにアップされた遠藤航の挨拶文では

「海外」

というキーワードが強く印象に残ります。

そして、その「海外」で成功するためにはどうすれば良いか。

もっと言うと、どのポジションに的を絞るべきか、ということです。


11月のカンボジア戦において

遠藤航は4231のボランチとして先発出場しました。

現代表においてレギュラーと言える山口蛍と組み、その役割としては

541、もしくは5311で引いた相手を崩すための縦パスや

ハリルホジッチ監督の求めるサイド攻撃の出発点となるべく

サイドへの展開力が求められました。

しかし、その役割を果たしたとはとても言えないデキでした。

後半開始とともに柏木陽介との交代をし

チームが活性化をする様をベンチで見届けることとなりました。

これが1つ、移籍の後押しとなったと考えられます。

現在、日本人選手が多く活躍するドイツ・ブンデスリーガでは

ほぼ全てのチームが4バックで戦っています。

そして、ブンデスリーガ各クラブは今でも

Jリーグで活躍する日本人選手に注目をしています。

ブンデスリーガへの移籍を念頭に置いた場合

4バックへの適応力が求められる事は言うまでもないでしょう。

その場合、遠藤航が採る選択肢として

3バックの右CBというものは不適当と言わざるを得ません。

つまり、海外移籍に備えるということは

4バックで何ができるのかを示し続けることであり

その経験を積む必要があります。


そして、ボランチを任されているという点においては

目前に最終予選となるU-23アジアカップを控えた

五輪代表においても変わりません。

遠藤航が、その将来をボランチに見込むというならば

湘南ではない道を選ぶことが

より良い選択肢となることは否定できません。

浦和でなくてはならないワケ

では、なぜ浦和なのでしょうか。

浦和の基本システムは湘南と同じ3421です。

一見、浦和へ移籍しても何も変わらないようにも思えます。

しかし、浦和移籍でなくてはならない点が2つ存在します。


1つはミシャ式です。

基本システムは3421と言えど

浦和の、いわゆるミシャ式と呼ばれるシステムにおいて

ポゼッション時には415と言える形となります。

ここにおいて、4バックの経験値を積むことは可能でしょう。

ウイングバックがサイドの高い位置に張ったシステムも

カンボジア戦で痛感した展開力を育む助けになります。

数字の並びは一緒でも、このシステムで戦うことは

きっと、遠藤航の成長を促すことになるでしょう。


もう1つは、浦和がビッグクラブであるという点です。

遠藤航自身は挨拶文中において

浦和を、プレッシャーのある環境と評しており

浦和へ向けた短い動画においては

浦和は、タイトル奪取が義務付けられた存在であるとしています。


そして、浦和のようなビッグクラブでは

選手層において、湘南とは差が出ます。

湘南ではチーム事情もあり、なかなかボランチ起用とはいかないでしょう。

もし、湘南に残留した場合

8位という好成績を残したチームにおいて

主力であった遠藤航を動かすリスクを取ることは考えづらく

まず、計算の立つ存在として

元のポジションに留め置かれる可能性が高いと言えます。

しかし、浦和ではそれが可能と言えます。

というのも、今年の浦和で特に問題となったのは

DF那須大亮の控えに関することです。

守備の要と言える那須の控えは、今まで永田充が務めてきましたが

敗れた広島戦においては途中交代となるなど

永田はあまり信頼を得ることができていません。


累積などで那須が不在のリーグ戦において、チームの成績は

4試合で2勝1分1敗でした。

これだけを見ると悪くない数字ですが

4試合で8失点という数字を見てみると

34試合で40失点のチーム成績からすれば

悪化した、と言わざるを得ません。

ターンオーバーをあまり好まないペトロビッチ監督でも

リーグ戦とACLが並行した過密日程の中では

ターンオーバーを余儀なくされます。

その中で、ボランチで能力を発揮したい遠藤航が加入したことで

阿部勇樹を那須の位置で使うことが可能となるなど

総じて、選手とクラブ、双方にとって良い移籍となることが予想できます。

遠藤航は、浦和のようなビッグクラブへの移籍が必要だったのです。


遠藤航の成長は、浦和だけでなく

日本代表にとっても必要なことです。

日本のサッカーファンとして

今回の移籍がよりよい移籍になるよう願っていますし

その可能性は高いと言えるでしょう。

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