サテライトとセカンドチーム 育成効果の差を産む「自由」と「制限」
2016/02/29 19:06配信
カテゴリ:コラム
2016年は日本の育成にとって変革の年と言えます。
それは2つの大きな変化があったからです。
1つはセカンドチームの創設。
J1、J2の計3クラブがU-23チームを発足させ
J3の舞台を間借りし、選手育成を図ろうというものです。
この形式では新たな試みであるということもあり
やってみなければ分からない点も多くありますが
是非とも、軌道に乗ってほしいところではあります。
3月12、13日の明治安田生命J3リーグ開幕に注目です。
もう1つはサテライトの復活です。
2009年を最後に廃止となっていたサテライトリーグが
今年復活を果たし、J1の9チームで行われます。
この2つの施策は、ともに昨今の問題となっている
プロクラブのU-23年代での
出場機会の減少を解決するために行われる取り組みです。
今回は、この2つの施策
育成効果の差について考えてみたいと思います。
サテライトの利点は「自由」
今回、この話題を出すのは
サテライトの開催概要が発表されたからです。
サテライトの注目点といえば
なんといっても自由なレギュレーションです。
それはサテライトにとって、大きな利点となります。
なぜなら、この年代の問題は出場機会の少なさであり
実戦経験を積むことでそれを解消することが目的です。
規約が自由であれば、若手に思うがまま
出場機会を与えることができるからです。
あるJ1クラブの社長が、サポーターから
「ウチはセカンドチームを創らないのか」と聞かれた際
「セカンドチームはJ3に参加するため、そのリーグの規約に縛られる。
出場できるのは、先発と交代合わせて14人に限られるため
育成効果が限定的である。」
と答えました。
これはもっともな意見です。
規約の自由度が増せば、それだけまんべんなく出場させることができ
客観的な数字であるところの出場時間と
それに伴う負荷を計算に入れることができます。
ちなみに交代枠でいうと
J3は今年からベンチ入り18名の交代枠3名となったのに対し
サテライトリーグでは交代枠が7名ということです。
これは逆に言えば、セカンドチームのデメリットとも言えます。
「自由」と「制限」それぞれの育成効果
ただ、規約などによる「制限」が育成効果を産む可能性はあります。
それは、育成に必要な競争を生み出すからです。
ベンチ入り18名、出場14名という枠が
U-18も含めた競争をもたらすことは確実です。
そして、成長の場は何も試合だけとは限りません。
日々の練習の強度に良い影響をもたらすことは自然な流れと言えます。
練習は実戦ではないですが
その2つは地続きです。
練習の強度が上がることは育成効果に繋がります。
これは先ほどとは逆に、セカンドチームの優位性と言えるでしょう。
サテライトが廃止になった理由として
サテライトでは練習でも試合においても強度が上がらず
育成効果が疑問視されたことを挙げる識者も居たということです。
J2昇格を目指す熾烈なJ3とサテライトリーグでは
強度に差が出るというのは仕方のないことかもしれません。
サテライト、廃止の諸問題は解決されぬままの復活
サテライトは試合開催自体もいまだに不透明な部分があります。
中には新潟のように、現段階で4試合の発表に留まっているクラブもあります。
当然、第30節まで発表済みのJ3とは隔たりがあります。
試合数が確保できないのであれば
サテライトの優位であった「負荷」に関しても
優位性の主張を取り下げざるを得なくなってしまいます。
サテライトの問題はもう1つあり、それは移動の問題です。
今回でいえば、J1クラブの中で
鳥栖はサテライトリーグに不参加となっており
それは長距離移動が問題となっています。
サテライトはその問題解決のために
各クラブでトップチームの日程と連動させることで
負担を減らすという取り組みが試みられていますが
遠征費がかさむ割に育成効果が得られないとされた
かつてのサテライトの問題点を、これも解決できていません。
だから、鳥栖はセカンドチーム創設に意欲的でした。
新規スポンサーを確保するなど、具体的な話も進んでいたのですが
リーグ側の審査を通らなかったことは残念なことです。
ただ、セカンドチームであれば、その費用を
公式戦という有料試合の運営(と新規スポンサー)により
賄うことが出来るという構想は
J3リーグが拡大する中で、実を結んでほしいと思わせてくれるものでした。
結論として、サテライトの育成効果は疑問です。
それは、サテライトがかつて廃止となった理由を解決できないまま
復活となったのではないか、という疑問を解消出来ないからです。
今回のサテライトの復活は、セカンドチーム創設の動きに乗り遅れたクラブと
そのクラブを救済したいリーグ側の焦りが招いた施策であり
その育成効果は甚だ疑問である、ということです。
U-23年代の育成方法として
セカンドチームにメリットしか無いワケではありません。
しかし、現行のサテライトと比べると
セカンドチームには未知の魅力が有り
また、よりビジョンがハッキリとしている分だけ
軍配を上げたいと思わせてくれるものがあります。