CHANT(チャント) 清水エスパルス

清水vsC大阪 「組織の清水と個のC大阪」

2016/04/11 17:17配信

武蔵

カテゴリ:コラム

今週のJ1は、ACLとヤマザキナビスコカップが行われたため

中3日の原則によって日曜日に一括開催されます。

それと入れ替わるように、J2全11試合のうち10試合が土曜日に行われました。


降格組の清水は3度のJ1昇格実績を誇る小林伸二新監督を迎え

非常に手堅く、組織的なサッカーを推し進めています。

ただ、手堅さを見ることができる反面、得点不足に悩む面もあり

今期のホーム戦では3戦で無得点、もちろん勝ち無しとなっています。

今節は首位のC大阪を、そのホームIAIスタジアム日本平に迎える大一番です。


そのC大阪は開幕からここまで負け無しで来ています。

人数をしっかり掛けた守備と、圧倒的な個の能力を生かした攻撃で

開幕4連勝を始めとして、ここまで6戦を5勝1分としています。

J2生活においては1年先輩であり

大熊清監督は昨季途中から就任したということもあってか

清水とは成績面において、少々の差が出ています。

システムと自由

両者とも442でのスタートであり、442での守備であります。

従ってビルドアップの際には、わざわざ陣形を変えることで

その局面においての数的優位を作り、安定した攻撃の構築ができるということです。


しかし、この点は両者に差が出ていました。

清水は相手の2トップに対して、明確にボランチが落ちて3枚にすることで

C大阪の守備をハマらせることなく、ボールを運べていました。


C大阪は清水の、半ばシステマティックなビルドアップに対して

特に有効な策を打ち出すことも出来ず

清水の攻撃に規制を掛けることが出来ていなかったように思えます。


C大阪のビルドアップはボランチが下りるでもなく

相手の2トップに対して、そのまま2CBで対峙する形が多くありました。

そこで数的同数のままであるため

ボールを運べずにロングボールを蹴らされる場面もありました。


その点、やることが決まっていた清水とは差があり

C大阪には、悪い意味での自由さを感じました。

C大阪のその点の不安

つまり、ビルドアップの際の決まりごとの無さによる不安は

攻撃だけでなく、守備にも不具合として表れます。

ビルドアップの際に自由に動いてしまうということは

その精度の計算できないビルドアップからボールを失った

切り替えの際の守備の不安に繋がるということです。

いわゆる、守備のことを考えた攻撃ではないということです。


それが無いところを衝かれたのが25分の清水の決定機で

サイドからの丸橋祐介のミドルパスをリカルド・サントスが収めきれず

奪われたボールをミッチェル・デュークに運ばれ

大前元紀とのワンツーからシュートまで行かれました。


この場面、ソウザが大前のファーストディフェンスを

一工夫入れることにより剥がし

ボランチの山村和也へボールを入れることに成功しましたが

上記のボールロストからデュークのシュートに至るまでに

いわゆるバイタルエリアを埋める位置まで移動出来ていません。

これは、無秩序なビルドアップの結果

シュートエリアを相手に与えてしまったことになります。



一方でC大阪も個人技とアイデアによってチャンスを作っていました。

28分には、ブルーノ・メネゲウのサイドチェンジから

杉本健勇が福村貴幸を食い付かせた上でキープし

その裏を衝いた松田陸が抉ってからのマイナスのクロスを入れ

フリーとなっていた柿谷耀一郎がフィニッシュまで持ち込みました。


また、31分には柿谷が収めた後の展開から

松田陸がアイデアを見せ、ワンタッチを繋ぎ

最後はファーで余っていたリカルド・サントスの決定機を作りました。



このように、勝つためのゴールを取るための方法論として

比較的、組織立ったプレーを見せる清水と

個とアイデアを駆使したC大阪という図式で試合は推移しました。


前半はスコアレスで終了します。

組織の清水、組織力を欠いた失点シーン

しかし、清水の攻撃は次第に停滞します。

それもやはり、C大阪の個の力によってもたらされたものと言えるでしょう。


C大阪の守備は、人数をしっかりと掛けることで堅さを保っています。

それだと、攻撃を考えた守備という点においては劣ることになるかもしれません。

しかし、C大阪の前線の個の力は、低い位置からでも攻撃を形作ることを可能とします。

つまりC大阪は、ラインを低く設定し、人数を掛けてしっかりと守ったとしても

そこからの攻撃において、怖さを失うことが少ないということです。


C大阪は守備においても山下達也やソウザらが個の力を発揮するため

低いラインで守備ブロックを形成した場合には

少なくともJ2においては、なかなか打ち破ることは難しいと言えるでしょう。


清水はそれにより停滞していきます。

小林監督はその対策として、デュークに代えチョン・テセを投入しますが

その直後にスコアが動きます。



C大阪の先制のシーンでは、清水は組織力を欠いてしまいました。

それまでもC大阪はシュート2本に抑え込まれており

攻撃方法も、単純なクロスに限定されていました。


このシーン、山村と松田陸のパス交換の際に

清水のビョン・ジュンボンが10歩ほどバックステップを踏んで

ボールから遠ざかるように移動しました。

これにより、ニアの三浦玄太は1人で2トップを相手にしなければならない状況となり

遠ざかっていったリカルド・サントスをビョンに受け渡すようにして

より近い柿谷を見るように位置します。

しかし、ビョンはリカルド・サントスを見てはおらず

結果として、ゴール前で相手のFWを

フリーにしてしまうという場面を作ってしまうこととなりました。

この時、ビョンは自分の後ろ側のスペースと

鎌田翔雅の裏に位置するブルーノ・メネゲウが気になったのでしょうか

そのスペースを埋める必要はありません。

なぜなら、ボールホルダーである山村の体の向きと

そのマーカーである六平光成の位置を考えれば

その方向にボールが出るわけがないからです。


そうは言っても、状況は刻々と変わります。

例えば六平が剥がされ、サイドチェンジをされたらどうするか。

そうしたら、サイドチェンジのボールが出たとしたら

その時になって初めて、サイドのケアをすればいいのです。

サイドにゴールはありません。

ゴールは真ん中にあります。

サイドのケアをするために、ゴールのある真ん中を空けるというのは

本末転倒も甚だしいと言えるでしょう。


ビョンの採るべき行動は

自分は山村の出し得るパスコースと、そこの位置する相手FWを見ること。

そして、鎌田へコーチングをすることで自分の背後のスペースをケアする

ということだったと思います。


国籍の違いにより、意思疎通に支障を来しているのかもしれませんが

それにしても、組織力を欠いたことには間違いありません。



C大阪の2点目はこれぞ個の力というゴールです。

松田陸の単純なクロスから

そのこぼれ球を拾った山村が豪快なドライブシュートを突き刺したもので

C大阪が個の力で2‐0とし、試合を決めました。

清水は組織力の浸透まで我慢が出来るか

C大阪は要所要所で個人能力の違いを見せることで

得点を奪う、失点を防ぐという場面を見せてきたという

これまでどおりの戦いぶりで、この試合でも難敵を下しました。


個の力を生かすサッカーの弱点は

その代えがなかなか効かないという部分がありますが

田代有三が離脱しながらも、途中から関口訓充や玉田圭司を投入でき

また、茂庭照幸が離脱しながらも田中裕介がその穴を埋めるという選手層であり

少々のことではビクつかないように思えます。

清水は小林体制で頼みとなる、組織力が浸透していない印象を受けます。

この試合でいえば、ビルドアップの一歩目はスムーズでしたが

その後はC大阪の穴、例えば杉本健勇が突出してくる際に生じるスペースなどを

効果的に衝けていたかというと、そうではありませんでした。

この試合で訪れた決定機も、コンビネーションによるものがありましたが

今後は、そういったパターンを増やしていくことが求められるでしょう。


ただ名門清水のこと、1年でのJ1復帰を意識しないわけにはいきません。

従って、自動昇格へ向けた結果を残すことが

現体制維持に向けては非常に大切と言えます。

当然、組織力を伸ばすためには時間が必要であり

どこまで我慢が出来るか、というのは1つのカギと言えそうです。



なお、今回の試合は

スカパー!オンデマンドの会員登録(無料)をすれば

どなたでもライブで見ることが出来ました。

そして、現在は見逃し配信も視聴することが出来ますので

是非、利用してみてほしいところです。

Good!!(0%) Bad!!(0%)

この記事も読んでみる