CHANT(チャント) 日本 U-23代表

【U-23】 リオ五輪代表18枠を考える ~DF編~ 【五輪】

2016/04/15 23:19配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


リオ五輪本戦まであと4か月弱となった。
五輪代表として選出される選手は18人。
オーバーエイジ枠を使うかどうか、使うとしても3枠のうち何枠を使うかというところにも注目だが、23歳以下の選手たちの熾烈な戦いは今現在も続いている。

第2回はDF編。
4-4-2をベースに敷く手倉森監督の構想におけるディフェンスラインはどういった選手たちが選出されることになるであろうか。


●4バックの手倉森JAPAN

全体で18人の枠として考えるとDFは5.6人の枠となることが予想される。
18枠という少ない枠だからこそ、複数のポジションがこなせるユーティリティある選手の選出も鍵となってくることであろう。

まずはセンターバックだ。
センターバックはこの世代では長年コンビを組んできた植田と岩波のコンビが定着している。
この二人が出てきたことで日本の守備は安泰だという言葉で表現されたこともあるように、この世代はアジアで勝てない世代だと言われるが出場したU-17 W杯ではアデミウソン(現ガンバ大阪)も出場していたブラジルとも対戦するなど国際経験を経験している。
二人ともにに体格に恵まれ、ディフェンスを統率する。
植田、岩波に加え今季川崎フロンターレに加入し、定位置を掴んだ奈良も有力な候補であろう。
そしてキャプテン遠藤航はボランチでプレーすることとなることが濃厚ではあるが、センターバックに配置することも可能だ。

・有力視されるセンターバック スタメン候補

植田は高校生になった頃にFWからセンターバックに転向した選手だが、わずか4か月で世代別代表に選出されるほどその素材が開花した選手だ。
当時すでにセンターバックとしてその世代の第一線にいた岩波にとっては、まだまだ荒削りのDF初心者だったかもしれないが、お互いの良いところを感じ生かしながら共にこの世代で戦ってきた。
ずっと二人がこの世代で安泰だったわけではない。
時に遠藤が、特に奈良が試合に出場することになり悔しい想いをした時期を過ごした経験も持つ。
16歳の頃からライバルとして戦ってきた二人は、二人で1つのようなコンビというよりは、お互いの持っている能力の長所が違うからこそ並ぶことでそれぞれの違った力が発揮されるようなデイフェンスラインとなる。
試合の流れやバランスを見ながらポジショニングを取りディフェンスを動かしつつ、最終ラインから攻撃の起点となる動きを意識する岩波に対し、危機察知能力を持って前へと出て対応し、相手に対し強さを持って恐れることなくぶつかっていく。セットプレーでも強さを発揮する植田。
お互いにない部分を刺激しながら、お互いが負けたくないという気持ちを持ってきたライバルであったことがお互いの意識を高め、成長に繋がってきたであろう。

この世代を引っ張る立場であるが、まだまだこの二人のセンターバックは世界と戦える絶対的なセンターバックであるかというと、そうではない。
優勝したとはいえ、アジアの戦いでも不安定である部分が見えたのは確かで、ボールを落ち着かせることができず相手のプレッシャーから逃げるように前へとすぐに蹴ってしまい結果、前線や中盤の選手たちの体力を削ってしまうようなプレーに繋がってしまうことも見受けられた。
五輪の舞台では、世界を知る攻撃陣がより圧力のあるプレッシャーをかけボールを持つことがこわいと感じるであろうが、ボールを落ち着かせる時間帯では落ち着かせて、チーム全体の動きの余裕をセンターバックから創り出すことも求められることになるであろう。

・センターバックとしての枠は3と考えるか。複数ポジションをこなせる遠藤をセンターバックとして考えるか否かも焦点か

今季、川崎への移籍を選択しJ1での定位置を獲得した奈良も五輪に強い想いを持つ選手であろう。
札幌時代にはユースからの2種登録から定位置を獲得し、J1昇格へと向かうチームの最終ラインを支えた。
昇格争いという誰もが経験できるわけではない舞台で、高校生の時に戦える経験を積むことができた選手は数少ない。
緊張感が長く続く昇格争いの負けられない戦いの中で、強いメンタルも育てられたであろう。

J1に昇格した札幌は厳しい戦いとなったが、シーズンを通して多く失点をしてしまった数、負けた数だけJ1の厳しさを痛感し、センターバックとして大きくなったはずだ。
FC東京へと挑戦した奈良だが、試合に出場できない日々が続いた。日本代表である森重はもちろん、湘南スタイルで旋風を起こしJ1へ昇格させたセンターバックを務めた丸山が後に日本代表となるなど活躍し、外国人カニーニ、大型DFである生え抜き吉本と、
さらにはボランチが定位置であるが元日本代表・高橋秀人もセンターバックができるというセンターバック激戦チームでの戦いは簡単なものではなかった。

J1で出場することができず、J3のU22選抜で試合に出場することもあった奈良の姿に、札幌に残ってJ2で出場していたほうが良かったのではという声もあったことであろう。
しかし、昨年クラブから日本代表を一番多く送り出していたFC東京で、武藤をはじめとする日本トップクラスの選手の中で日々練習できることや、東京という土地柄、控え選手であっても強豪の大学や周辺のJクラブとの練習試合を行えることなど、練習の質がJ1仕様であったことで刺激が多かったであろう。
日本を代表するセンターバックと共に練習に取り組み、その選手たちから良い部分を盗めること、勉強材料となることは、試合に出場することが第一選択としてもなかなかできる経験ではなかったことであろう。
FC東京だからこそできた経験があったはずだ。

それを引っ提げて、川崎フロンターレへと移籍。
川崎はJ屈指の得点力を持つクラブながら毎年ディフェンスの部分で課題が多く、失点がネックになっていたチームだ。
長年ディフェンスに着手しなかったわけではなく、風間監督の描く攻撃に守備にと独自の動きながらのディフェンスの構想を時間をかけて形にしながらも、やはり中心となるセンターバックに能力を持った選手がほしかったことは確かであろう。
そして今、川崎のセンターバックとして出場している奈良はJ1の舞台で上位に立つ川崎の最終ラインを統率する立場となった。

植田や岩波もチームの最終ラインの顔ともいえる存在感を持ってプレーしているが、奈良もまた確立された場所を持つことに成功しJ1の舞台で磨きをかけている。
奈良もまた植田岩波というコンビに割って入れるほどの能力を持っており、このチームに必要な存在として手倉森監督は考えているのではないだろうか。

・室屋の回復が鍵となるであろう右サイドバック

そして、一番気がかりなのは、右サイドバックだ。

U-23アジア選手権を終え、その後大学在学中ながらFC東京との契約を結び、五輪へ向けてプロの場でプレーすることを決めた室屋成。
U-23アジア選手権での戦いをみても、室屋の存在はチームにとってとても大きく、この世代にはいなくてはならない選手の一人だ。
しかし、2月に骨折が発覚。全治3か月という大けがにより長期離脱が余儀なくされた。

さらにA代表に選出された経験も持つアルビレックス新潟の松原健も、3月に右膝外側半月板損傷、全治3か月の大けがを負ってしまった。

この二人の強力な右SBが大きな怪我を負ってしまったことは、五輪代表にとっては大きなアクシデントだった。
全治3か月といってもすぐにその後プレーをして100%に戻るわけではないであろうことを考えると、他の選択肢も当然考えなくてはならず、室屋松原に代わる選手を見つけなくてはならない。

現在は亀川やポルトガル遠征で試したファンウェルメスケルケン・際といった選手たちを起用しそれぞれの良さをみせているものの、室屋や松原に代わるほどの存在感は出せてはいない。

室屋の運動量を持って90分走り続けるプレーと、目立つ部分ではないが室屋の相手の攻撃を遅らせることができるディフェンスは、何度もチーム救ってきた。
対人も強く、左右の足で正確なクロスを上げることもできることも大きな武器だ。
松原の武器であるアーリークロスと対応能力の高さも将来の日本代表候補であることを匂わせる能力の高さだ。

五輪が開催されるのは8月だが、本戦登録メンバーが発表されるまでの時間はさらに1か月ほど早いため、それまでの回復状況と右サイドバックの選手たちとの照らし合わせで選考されることになるであろう。
室屋と松原共に大きな怪我を負ってしまったが、長く目指してきた五輪のピッチに絶対に立ちたいという想いを持っているはずだ。
これまでも五輪前に大きな怪我をした選手たちがいたが、五輪を目指してつらいリハビリを乗り越えてメンバー入りしてきた選手たちも過去には存在する。
そしてもちろん、その逆の例もある。


室屋には室屋にしかない良さがある。
松原には松原にしかない良さがある。
それは他の選手だって同じだ。
しかし、室屋ほどの質を持ってチームに貢献するプレーができる右SBがいるチームで世界で戦うところがみたい。
松原ほどのクロスに研究を重ね状況によって使い分けが多彩な技を持つ右SBがいるチームで世界を戦うところがみたい。
そう感じてしまう期待を、ない物ねだりという表現で終わらせたくはない。

室屋の骨折は疲労骨折だった。
疲労骨折は衝撃を受けての骨折とは違い、再発する可能性を持つ骨折だという。
だからこそ慎重に今後を見据えて回復に努めなければならないが、それでも五輪のピッチに立つという想いは多少の無理をさせてしまうことになるであろう。
献身的なその姿は内田篤人のプレーを思い起こさせる室屋だが、ハングリーさを持って内田と長友両方の良いところを持った選手になりたいとさえ口する。
がむしゃらに今はサッカーができない。でもその期間があったからこそ、という選手になってもらいたい。

相手に攻撃を受けるとしっかり付いて、攻撃の時間を遅らせる。
その間に味方たちが戻り、守備を敷いてくれる。
攻撃を遅らせた室屋はまた走る。その選手が次にどこに出すのか、どういった攻撃を展開するのかを危機察知能力を持って、その可能性を潰しに走っている。

チームのために走れる選手であり、攻撃にも積極的に顔を出す。
左右のキックに正確さもあるため、ゴールを狙うシュートを遠くからでも放つことができる。
縦への勝負も中への切り込みも恐れない。

また日本にもこういった選手が出てきたかと、期待を持って右サイドを任せることのできる選手といえば、室屋なのだ。

全治3か月という苦しい時間を過ごしている最中だが、室屋は五輪に出るためにプロになることを選択した選手だ。
室屋にとって明治大学でのプレーも想いのある特別なものだったであろう。
明治大学が快く送り出したほどに、たくさんの人たちが背中を押してくれることへの感謝を胸に、五輪へのこだわりを持ってプロへと進んだ室屋。
多くの選手の怪我と向き合ってきたFC東京だからこそ、回復への選択肢を多く持って、日本を代表する選手となるであろう室屋を良い状態で回復させてくれるはずだ。

3か月といっても全治の基準であり、それからすぐに100%のコンディションに戻れるわけではない。
そこから本格的にプロレベルでプレーできるまでにどれほど時間がかかるのかはわからない。
18枠という枠の中で、負傷明けの選手をどう取り扱うかと考えるとその道はかなり険しいであろう。
ただし、それほどに室屋に、そして松原も含め日本を代表するサイドバックである23歳以下の選手で世界と戦う姿がみたいと感じるのだ。

左サイドバック候補の山中も今回も肉離れで辞退と、怪我が続く五輪代表。
全員が8月に万全の状態とはいかないかもしれない。
だが、絶対に出たいという気持ちを持っていることは戦うために絶対的に必要なモチベーションであり、回復への一番の薬となるはずだ。
その座を目指すライバルたちの活躍もリハビリ中であっても刺激として強くしてくれるはずだ。

4バックと考えるとDF6枠が妥当となるであろうか。
センターバックとサイドバックのバランスがどうなるかはわからないが、リオへと向かうのはどの選手となるであろうか。
5月中までにメンバーを固めたいという手倉森監督。負傷の選手にとっては厳しい期間となる。DFにはオーバーエイジはDFには必要ないと想定する。

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