【U-23】 リオ五輪代表18枠を考える ~GK編~ 【リオ五輪】
2016/04/15 12:03配信
カテゴリ:コラム
リオ五輪へ向けたU-23代表合宿が静岡県内で始まった。
出場権獲得、そしてアジア選手権優勝から早2か月半。
リオ五輪本戦まで残り4か月弱となったが、本戦に出場することが決まっている選手は当然まだ一人もいない。
五輪代表選出をかけて、壮絶な戦いが始まっている。
●18枠の五輪代表
リオ五輪本大会でサッカーの日本代表選手たちの枠は18枠。
W杯やアジアカップなどの国際大会では、23人枠であることが多いが、五輪は18枠と定められている。
その内、2枠がGKであると想定され、フィールドプレイヤーは16枠。
オーバーエイジ枠をフルに使うことになると、23歳以下の選手はGK含め15枠ということになる。
激戦中の激戦なのだ。
今日の仲間は明日の敵という表現もあるが、敵とは言わないまでも仲間であってもライバルである今。
ポジションの括り関係なく、代表選出枠を意識しての戦いがすでに始まっていることは間違いない。
本戦を想定した「チーム」として考えた時にチームにおける選手の構成バランスや状況を考えての選出となり、予選で主力であっても本戦には選出されないという厳しい現実が毎度あうのが五輪でもある。
しばらく選出されていない選手たちや、今Jの舞台で活躍し招集されたことのない23歳以下の選手たち、現在負傷による回復に全力をかけて闘っている選手たち。
たくさんの選手たちが、4年に一度の五輪という舞台を意識し、目指している。
今回の静岡合宿に選出された選手たちは以下の通り
GK
櫛引 政敏 鹿島アントラーズ
杉本 大地 徳島ヴォルティス
牲川 歩見 サガン鳥栖
DF
高橋 祐治 京都サンガ ・4/10のJ2公式戦にて脳震盪、辞退
山中 亮輔 柏レイソル ・肉離れにより、辞退
亀川 諒史 アビスパ福岡
三丸 拡 サガン鳥栖 ・初選出
奈良 竜樹 川崎フロンターレ
岩波 拓也 ヴィッセル神戸
植田 直通 鹿島アントラーズ
三浦 弦太 清水エスパルス
小川 諒也 FC東京 ・追加招集
伊東 幸敏 鹿島アントラーズ ・追加招集
MF
橋本 拳人 FC東京 ・初選出
原川 力 川崎フロンターレ
矢島 慎也 ファジアーノ岡山
野津田 岳人 アルビレックス新潟
小塚 和季 アルビレックス新潟 ・初選出
中島 翔哉 FC東京
前田 直輝 横浜Fマリノス
三竿 健斗 鹿島アントラーズ
鎌田 大地 サガン鳥栖
FW
富樫 敬真 横浜Fマリノス ・初選出
金森 健志 アビスパ福岡
オナイウ 阿道 ジェフ千葉
先日のU-23ポルトガル遠征の選出は以下の通り
GK
杉本 大地 徳島ヴォルティス
牲川 歩見 サガン鳥栖
中村 航輔 柏レイソル
DF
山中 亮輔 柏レイソル
亀川 諒史 アビスパ福岡
奈良 竜樹 川崎フロンターレ
岩波 拓也 ヴィッセル神戸
ファンウェルメスケルケン・際 ドルトレヒト
植田 直通 鹿島アントラーズ
中谷 進之介 柏レイソル
MF
大島 僚太 川崎フロンターレ ・負傷により辞退
遠藤 航 浦和レッズ
原川 力 川崎フロンターレ
中島 翔哉 FC東京
豊川 雄太 ファジアーノ岡山
南野 拓実 ザルツブルク
関根 貴大 浦和レッズ
井手口 陽介 ガンバ大阪
小泉 慶 アルビレックス新潟 ・追加招集
FW
久保 裕也 ヤングボーイズ
金森 健志 アビスパ福岡
浅野 拓磨 サンフレッチェ広島 ・負傷により辞退
鎌田 大地 サガン鳥栖
オナイウ 阿道 ジェフ千葉 ・追加招集
先日行われたポルトガル遠征と今回の静岡遠征。
両方に呼ばれた選手は、
GK杉本、牲川
DF奈良、植田、岩波、山中、亀川
MF原川、中島
FWオナイウ、金森
の11名。
●五輪選考を考える。GK編 ~オーバーエイジは導入されるのか~
五輪切符をかけた最終予選は中村航輔が怪我で代表辞退となり、この世代のGKとして長年第1GKという立場でゴールマウスを守ってきた櫛引がゴールマウスに立った。
守護神と呼べる活躍を魅せ、五輪出場、そしてアジアNO.1を獲ることに大きく貢献した。
大型のGKである杉本、牲川もこの年代で長く選出され続けてきたGKであり、世代別代表でゴールを守った出場経験もある。
中村、櫛引、杉本、牲川と4人全員がリオ五輪を見据え昨季とは違う場所でのプレーを選択した。
中村は自身が長年育った場所・柏レイソルへと戻った。
昨年のアビスパ福岡での活躍は覚醒といって良いほどの活躍で、アビスパ福岡昇格に大きく貢献した守護神だった。
各年代代表のゴールマウスに立ち、世代飛び級をするほど将来を期待されるGKだった中村だが、重なる大きな怪我を経験し2年という長い期間、戦線を離れた。
サッカー選手にとって2年ピッチから離れるというのはかなり難しいことだが、それでも中村の素材と才能を信じた柏レイソルでコーチを務めていた現アビスパ福岡・井原監督は、中村航輔を自らが指揮を採るチームに呼び寄せた。
中村の持つ能力を本人も知らなかったかもしれないほどに、引き出すことに成功した。
福岡には不動ともいえるGK神山が存在したが、中村は24節大宮戦で2試合目の出場を果たすとその活躍からスタメンを奪うと、試合をこなすごとにその能力は開花されチームの失点を減らすことに貢献。
プレーオフ決勝の昇格決定まで存在感を持って結果を出し続けた。昨季戦国時代と呼ばれたJ2で、際立って注目を集めた選手の一人だったといって良いであろう。
今季柏レイソルへと戻った中村航輔は、開幕からスタメン出場中だ。
チームは開幕から失点を続け、開幕から4戦を4試合8失点と決して良い結果といえない状況が続いた。
もちろんGKだけの責任である失点ではないが、能力の高いといわれるGKがいるチームはディフェンダーを動かすコーチングやポジショニングによってシュート自体を打たせる機会を与えることが少なく、ディフェンスとの連携が取れているため失点が少ないことが多い。
現在の柏での結果を見ると、今は難しい状況が続いている。
J2とJ1のスピードの違いはもちろん、個々の選手能力の高さにも大きな違いがあるのは間違いないが、その違いに対応できなけれ五輪の舞台で守護神という立場になるのは難しいということになる。
しかし、GKというポジションは取られた失点の数だけ成長するものだ。
打たれたシュートの数だけ、決められたゴールの数だけ、GKは材料を得て成長へと繋がる。
セーブが目立つことはもちろん良いことだが、セーブができるということは自分が対応できる範囲内ということ。
自分の手や足が届かなかった経験をたくさん積むからこそ、自分の課題を見つけて向上することができる。
GKが試合経験が必要だというのは、シュートを打たれゴールを決められるという経験を積むからこそ得られる経験も必要だからだ。
日本のGK史上最も印象を残す元日本代表・川口能活も、楢崎正剛も若き頃から起用され続けた選手たちだが、最初から無双のように失点の少ないGKだったわけではない。
経験を積ませるため失点が増えることも覚悟しつつディフェンダーが踏ん張りながらの我慢の期間があったからこそ、多くのことを吸収し成長したのだ。
4試合で8点の失点は多い失点だ。
その後、U-23代表遠征を挟み帰国してからは失点が減ったが順応したかといえば、そんなに甘くはないのがJ1だ。
しかし、その失点の数、シュートを浴びた経験が必ず中村を強くするであろう。
櫛引は鹿島アントラーズに期限付き移籍したが、鹿島で長年守護神として君臨する曽ヶ端から定位置を奪取するには至っていない。
機会が与えられたナビスコ杯2試合でディフェンダー陣がA代表に五輪代表遠征と選出されたことも左右した材料であろうが大量失点となった試合もあり2試合6失点。
先日のナビスコ杯3戦目では昨年のチャンピオンである鹿島が後がない状態となったこともあってか曽ヶ端がリーグと同じくゴールマウスに立ち、櫛引は今、ほとんどの試合で出場機会を得られない状況となっている。
リオ五輪のことを考えると、この世代でゴールマウスに長年立ってきたGKとはいえ、試合に出場していないGKが五輪に出場するというのは厳しい。
国際試合というのは日本でプレーする以上に想定外のことが起こる舞台。クセもリズムもすべてが違う相手を迎えることとなることはもちろん、日本にはない技術を持っているチームが多い。
そのため試合勘というのは絶対であり、今の残りわずかの準備期間の中で試合に出場していない状況が続くとマイナスとなることは否めない。
杉本は出場機会を求めて期限付きで徳島へと移籍したものの、開幕からベテラン相澤が出場することが続いていた。簡単にポジションを奪取できるポジションではないだけに我慢の時間を過ごしていたが、徳島は今季すべての試合で失点をするなど良い状態ではないことで、
チームの流れを変えるためか、杉本が7節で出場。今季チーム初の無失点を記録しチームが勝利したことでこれから杉本の出場機会が増えることが予想される。
牲川は磐田ではJリーグで1.2を争うGKであろうカミンスキーからポジションを奪うことが難しく、さらに八田も控えているため第3キーパーという位置だったが、今季鳥栖へと期限付き移籍。
鳥栖にも日本代表に選出されることも多い守護神・林が存在し、その壁は高く、さらに長年在籍するベテラン赤星も控えており第3.4キーパーという位置にいる。
ロンドン五輪でゴールマウスに立ち守護神の役目を全うした権田修一(現・SVホルン)は、五輪時にはすでにA代表に選出されており、日本を代表するGKの一人となっていた。
北京五輪での守護神・西川周作も、五輪時にはすでにA代表への選出経験があった。
28年ぶりの五輪出場となったアトランタ五輪では川口能活。
その後のシドニー五輪ではオーバーエイジで楢崎正剛。
北京五輪では西川周作。
アテネ五輪ではオーバーエイジで曽ヶ端準。
そしてロンドン五輪では権田修一。(バックアップメンバーにオーバーエイジで林彰洋)
過去5大会で23歳以下で出場したGKは川口能活、西川周作、権田修一。
川口能活はこの時までにA代表経験はなかったもののすでに次期日本代表として大注目されていた選手であり、西川・権田はA代表経験を持つ所属チームでは絶対の存在感をすでに持つGKとなっていた。
世界で戦うからこそチームの底となるGKはオーバーエイジが必要となることも多く、楢崎、そして曽ヶ端がOAで選出され出場した大会もあった。
現在J1で試合に出場しているGKは中村だけだが、今季から柏レイソルに復帰し6試合を消化したばかり。
昨年はJ2で24試合目からスタメン出場し結果を残したものの、20試合のJ2での経験と現在J1で経験を重ねることを始めたばかりの今、世界と戦う経験として充分かといえば難しい。
この世代を一番後ろから支えてきた櫛引にもこの世代を背負う意地があるであろうが、所属チームで出場機会がなければ五輪でゴールマウスを守るのは厳しい状況だ。
オーバーエイジ枠を使うとなると、Jクラブからの選出となればチームの第一キーパーが引き抜かれる可能性が高く、Jリーグが五輪開催中ストップしないことを考えると、どこまでクラブが理解を示すかわからない。
欧州組からと考えると川島永嗣がいるが、川島永嗣が所属するクラブは現在スコットランドのトップリーグで最下位。降格することがあれば契約が今季終了までのため移籍ということも考えられる。
しかし欧州の多くが8月に開幕を迎えることとなるため期間が重なってしまうことになるが、多くの出場国がオーバーエイジを使用するため欧州から多くの選手が五輪に出場することとなり、理解を示すクラブが多いのではないであろうかと考えるがオーナーエイジは国内組からという可能性が高いとされている。
GKにオーバーエイジを使うかどうかはわからないが、世界をみるとA代表のGKであっても日本のGKの質という部分での課題は大きいのは確かだ。
ゴールキーパーの枠は2枠と考えられる。
23歳以下とはいえ、オーバーエイジで攻撃陣に多くの選手が出場するとみられ、世界のトップリーグで活躍する選手たちを前にすることとなる。
プレーの質はもちろんだが、一番後ろからチームを鼓舞するような存在感あるGKが必要だ。