CHANT(チャント) 湘南ベルマーレ

【湘南ベルマーレ】 18年ぶりに得た勝ち点も満足はせず 湘南スタイルの進化は続く 【神奈川ダービー】

2015/10/01 12:07配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:マッチレポート

9月26日。
関東地方を覆った低気圧の影響で肌寒く冷たい雨が降る日が続き、この日の予報も曇り、そして雨が降るかもしれないという予報だった。
しかし、神奈川ダービーとなったこの日。
湘南ベルマーレのホームスタジアム、Shonan BMWスタジアムの上空には青空が見え気温も上がり蒸し暑く、サッカー日和の空となった。

スタジアム周辺は開場数時間前ながらも多くの人であふれ、人の行き来ができないほどに混雑し、それぞれ応援するチームのユニフォームを身に纏いたくさんの人々がこれからの戦いに備えていた。

ホームゲーム開催時、たくさんのイベントを用意し試合を盛り上げる湘南ベルマーレだが、この日はその中でも人気の高い「肉祭り」開催日とあり
たくさんのスタジアムグルメが並んだ。
横並びにずらりと並んだキッチンカーの前にはそれぞれ長蛇の列ができていた。

神奈川県には3つのJ1クラブが在る。
横浜Fマリノス、川崎フロンターレ、そして湘南ベルマーレ。
同じ神奈川県内のチームには負けたくない。それはそれぞれの色の付いた魂が放つプライドだ。

スタジアムは人でいっぱいとなった。
同じ神奈川県内ということもあり、アウェイながら大勢の横浜Fマリノスサポーターがスタジアムの多くの部分をトリコロールで埋めた。
埋め尽くすとはこのことというように人の隙間なくぎっしりと埋まったゴール裏、バックスタンドも中央からアウェイ寄りのスタンドはトリコロールでほぼ染まり、メインスタンドにも多くのマリノスサポーターが溢れた。

ホームである湘南ベルマーレのサポーターもそれに負けじとスタジアムをホームカラーで染め、大きな声援を送る。
空へと突き出す拳に今日の戦いへの覚悟が籠められた。

どちらも負けられない戦い。
神奈川ダービーの雰囲気が、スタジアムには溢れていた。

横浜Fマリノスの開幕当初から存在感の大きいビッグクラブとしてのプライドと
湘南ベルマーレの身近な存在であり、チームのJ1へのチャレンジを込め全員で戦っている発展途上中のアットホームな雰囲気は
対照的なチームと捉えることもできるかもしれないが、お互いそれぞれの良さを持ってるからこその「チーム」であり「色」がある。

サポーターからの熱とプライド、そして愛が伝わり合う場所となったshonan BMWスタジアム。
15時、試合はキックオフを迎えた。


●前半から湘南スタイルを貫き、ストロングポイントを失わなかった90分

前半序盤から湘南ベルマーレがハイペースで相手へプレッシャーをかけ、ボールを奪う場面が光った。
1stステージでの戦いではマリノス相手になかなかできなかった湘南スタイルを この試合では序盤から現すことに成功した湘南ベルマーレ。

湘南ベルマーレのサッカーはハイプレスからボールを奪い、速いショートカウンターでボールをゴール前まで運び、ゴールを狙うというものだが、
横浜Fマリノスのボールを前線で何度も経由するパスサッカーを前に、プレスをかけるということは、それだけプレスに行く回数も多くなるということ。
前半にプレスをかけ続けることで後半に体力を失われてしまうだけに、湘南としては早い時間に先制点を奪いたいところだが、なかなかペースは握っても横浜Fマリノスディフェンスをこじあけることはできない。

対する横浜Fマリノスは、湘南スタイルを前に、なかなか自分たちの思い通りにボールを運べずボールがつながらないものの、個の技術の超一級が揃う前線でボールをコントロールし、湘南ディフェンスの思考の先へと突破することができるのは、さすがと感じさせるシーンも。

前半は湘南ペースで試合が進んだものの スコアレスのまま前半を終えた。
ハイプレスをかけボールを奪うことで、攻撃のスイッチを入れ続ける湘南としては、後半の体力が難しくなるかと予想される試合運びとなった。

後半がはじまり、横浜Fマリノスの連鎖する攻撃が湘南ゴールを襲う。
セカンドボールの攻防が激しくボールを奪ったマリノスが、サイドからクロスを上げると、そこに伊藤翔がねじ込み横浜Fマリノスが先制した。

そのゴールがスイッチとなり、湘南ゴールに横浜Fマリノスの攻撃が厚く圧力をかける。
湘南はしのぐことに精いっぱいの時間が続き、セットプレーを多く与えることで緊張感ある時間を繰り返し迎える。

横浜Fマリノスにはセットプレーの魔術師ともいえる中村俊輔のキックがあるため、フリーキックはもちろんコーナーキックであっても一瞬たりとも油断はできず、キックそのものの行方も角度がなくてもゴールへと向かってくるため
ポジション取りやボールのスピードには要注意となる。
中村俊輔のセットプレーのボールは、その時々に合わせてボールスピードが変わることが特徴だ。
他のキッカーと横並びで比べる機会がないため、見た目にはわかりづらいかもしれないが、ボールのスピードがかなり速いにもかかわらずとんでもなく曲がってくるそのボールは驚異だとフリーキックを決められた、あるGKが話していたことがある。
横浜Fマリノスの大きな武器であるセットプレーを複数回与えてしまうことは理想的ではもちろんないが、湘南の精一杯のはねかえしはこの試合ではプラスになって働いた。

横浜Fマリノスは疲れてきていた湘南ベルマーレを前に早く追加点を掴み、湘南の精神的疲労を増やしたかったところだが、追加点をなかなか奪うことができず、
湘南ベルマーレは少なくなってしまったスピードをかけた攻撃機会を得た中で、良い位置でフリーキックを得ると
そこから湘南ベルマーレの精神的支柱であり大きな存在であるキャプテン永木が、直接フリーキックを鮮やかに決めた。

鮮やかという言葉はこういう時に使うものだというほどに、時間が一瞬止まったかのようにゴールネットが揺れた。上から落ちたボールはゴールのバーをかすり、その衝撃でスピードをつけゴールはゴールの中でバウンドし、ゴールネットを揺らした。
ホームカラーであるライトグリーンが揺れ、永木はベンチへと走り歓びを抱き着く形で爆発させた。
控えの選手たちも共に駆け寄り、永木を讃え笑顔が溢れる。
湘南ベルマーレに再びスイッチを入れたのはキャプテンの魂溢れるフリーキックだった。

湘南ベルマーレにとっては厳しい厳しい時間帯だった。
前半から続けたハイプレスの代償がこの時間にやってくることは、チームの誰もが認識している。
だが、永木のフリーキックによって再びスイッチの入った湘南ベルマーレはもう動かなくなってきている足を懸命に動かし、ストロングポイントである走力を使ってマリノスゴールへと果敢に攻撃を仕掛けた。

足がもつれている選手も多く、スピードはもう出ない。
それでもあきらめずボールを持ち、キック力も衰え遠いボールが蹴れない選手も出てきていながらも、追加点を獲りに向かった。
プレスに向かえないのでは湘南スタイルとはいえないと言わんばかりに、もつれた足を使ってそれでもプレスに行き、ボールを奪い配球する。
途中交代で入った選手をうまく使いながら最後まで走り続けた湘南ベルマーレは、大きなチャンスを逃してしまうシーンもあったものの、「湘南スタイル」を継続した90分だった。

試合終了のホイッスルと共に湘南ベルマーレの選手は立っているのがやっとで、動けない選手も。
結果は1-1。

湘南ベルマーレが横浜Fマリノスから勝ち点を得たのは18年ぶりという快挙だったが
試合後の湘南ベルマーレの選手たちは、誰一人満足はしていなかった。
特に途中交代で出場した大槻周平、山田直輝、藤田征也はスタートから出場している選手たちの体力の消耗が激しい中で、自分たちの走力とアポイントとなる存在感に不満を感じ
悔しそうな表情を浮かべていた。

勝機となる場面があったからこそ、引き分けで満足はできない。
それはお互いのチームがそう感じたであろう。
引き分けで満足してしまっては、その先はない。

1-1ドローという試合ながら、内容が濃厚な一戦となり、この試合を経験した選手たちはこれからのサッカー人生において大きな経験を積んだ試合となったであろう。


湘南ベルマーレが昨年J2で圧倒的強さで駆け上がったのは、J1で戦えるチームと意識をしてチームを創りあげてきたことにある。
今年J2からの昇格組で勝ち点を一番多く重ねている湘南ベルマーレは、J1で戦えているチームとなりさらなる経験を積み上げている。
上位であるチームやビッグクラブ相手にも苦しめる戦いが出来ているだけに、湘南ベルマーレが歩んできている湘南スタイルは、間違いのない道ということだ。


J1 セカンドステージも残すところあと5試合。
J1で戦うための湘南スタイルはこの後も進化が続く。


14000人を越える人々の気持ちが詰まったshonan BMWスタジアムは 暗くなった秋空の下、神奈川ダービーを終えた―。

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遠方ベルマーレサポです。
昔からベルマーレが大好きで、チーム存続危機を含め、辛いときも多くありましたが、今湘南スタイルを貫いてJ1でもたくましく定着しようとしているこのチームを、神奈川でサポーターをしている他のベルマーレサポーター同様、とても誇りに思っています!

いつも拝見していますが、今回自分自身が長く応援しているベルマーレについての記事を書いてくださり、本当に嬉しかったです。
臨場感溢れる文章に、自分もそこにいたような気持ちになれました。
ありがとうございます!

Nico  Good!!1 イエローカード0 2015/10/01|13:11 返信

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