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【なでしこ】 W杯優勝のアメリカ女子代表 強さの理由とサポート環境 日本女子サッカーに必要な今後 【JAPAN】

2015/07/08 11:59配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム

https://youtu.be/RqOi97yhX0o

なでしこJAPANがW杯準優勝という結果を持って、日本に帰国した。
前回大会優勝、そして今大会準優勝という結果を出したなでしこJAPANだが、現在他の強豪国と比べ環境が整っているかというとそれは否だ。
むしろ今の環境の中で世界のトップクラスの結果を出すということは容易ではなく、それだけ偉業だということだ。

今後の強化を考えると、さまざまな環境の整備や、サポートが必要となることを選手たち自身が訴えている。

強豪国であり今大会優勝した アメリカの環境を元に考えたい。


●アメリカの女子サッカーが発展した理由

アメリカは言わずと知られるスポーツ大国だ。
国内主要スポーツといえばアメリカンフットボールのNFL、ベースボールのMLB、そしてバスケットボールのNBA。
さらにはアイスホッケーのNHLと、世界的に大きなビジネスを展開するスポーツを複数持ち、その他にもアメリカ人には根付かないと言われ続けているものの発展、そして強化がみられそのレベルも高いと認められているMLSも存在する。
こういったスポーツの発展に欠かせない存在となっているのが、アメリカにおけるカレッジスポーツの存在だ。

アメリカにおいて大学スポーツは確立されたスポーツとしての人気があり
プロスポーツ並みの人気があることで知られている。日本に置き換えると日本のプロスポーツ以上の市場が存在しているのだ。
カレッジスポーツはTV放映もされているため、その放映権や、大学のグッズの売り上げ、大学によっては大学の学生数が1万人にも満たないながら、観客が8万人も入る大学もあるなど、その人気は非常に高い。
地域密着という感覚に近く、自分の地元の大学や出身大学を応援するというスタイルが多く、その他注目選手や大学としてのブランド力などによってその客層が分かれている。
ホームゲーム開催時には一日で2億円もの売り上げを上げるカレッジスポーツは、一種のプロスポーツである。

そのカレッジスポーツの中で、育ってきたのが女子サッカーだ。
カレッジスポーツの中で最も人気があるスポーツはアメリカンフットボール。
アメフトは攻撃守備合わせて22名のスタメン選手が存在し、少なくても60名以上が所属する大所帯の部となるが
その大所帯チームを創りあげるためには、それだけの有望選手を獲得しなければならない。
大きなビジネスにもなっているカレッジスポーツの世界では日本よりももっと大規模に特待生などの選手の獲得が必要不可欠なのだ。

その選手獲得に関して、そして女子スポーツ発展のため、アメリカでは「タイトルIX」という法律が生まれた。
これは男女間の機会均等のために制定された法律であり、この法律が生まれたことによって大学において男女の奨学生の数がほぼ同率でなくてはならなくなった。
アメフトで大量の選手を奨学生で獲得したい大学側は同じくスポーツの奨学生で女子を迎えなくてはならない。
サッカーは11人のスタメン選手と控えの選手含めもう1チーム作れる規模の人数が必要と考え、女子のスポーツ奨学生を多く獲得するには女子サッカーが適していると目を付けた大学が多かった。
男子がメインのプロスーポーツが多いアメリカで、女子サッカーにカレッジスポーツが強化に乗り出したことにより、発展した背景がある。

さらにアメリカにはしっかりと整備されたとは言わないまでも、芝のグラウンドが多く存在する。
これはアメフト文化がアメリカにあることと関係していることもあるが、主要都市のど真ん中ではないものの、少し離れるとたくさんの芝のグラウンドが存在する。
それを利用し、教育現場でもサッカーが授業で組み込まれていることも多くサッカーが身近である地域も存在する。
アメリカではカレッジスポーツで女子サッカーが発展していることもあり、その場を目指してプレーする女子サッカークラブが多く存在し、本格的なサッカースクールの費用は高額であることが多いため、裕福な層が力を入れるスポーツとして存在が確立されているそうだ。

カレッジスポーツというアメリカ独自の発展が女子サッカー強化に繋がったのだ。

●サッカー連盟のサポート体制

サッカーアメリカ女子代表選手はプロ選手であることがほとんどだ。
日本のなでしこリーグは知名度は近年かなり上がったものの、まだまだプロ契約をしているのはほんの一部の選手たちだけであり、働きながらプレーしている選手も多い。
女子サッカーのプロリーグとして有名なのはやはりドイツ。そしてフランスだ。
当然かなりの強豪国であり、アメリカ、ドイツ、フランスは女子サッカーを語る上で外すことはできない。
その中で考えてみると、ほとんどプロ選手がいないリーグしか持っていない日本が、優勝や準優勝するということはとても信じがたい偉業なのだ。

だからこそ、前回大会で日本に負けたアメリカは大きな屈辱だったと表現している。
プロリーグでもない、そしてアメリカよりも圧倒的に競技人口が少なく、環境も整っていない。
その日本に負けたことはスポーツプライドの高いアメリカにとって屈辱的なことだった。
打倒 日本。
その一心でやってきた4年間だった。

前回大会で敗戦したアメリカは打倒日本という目標を置き、二度と同じことは繰り返さないよう4年間を計算し、強化を図ってきた。
強化資金はもちろん、代表として活動する日数も強化のために組んだ試合数も、なでしこJAPANとは桁違いの4年間を過ごしてきた。
最新鋭の機器を用いてのスカウティングでなでしこJAPANを分析し、効果的な戦いができるよう練習を重ねてきた。
日本の女性たちよりも身体の大きいアメリカ女子代表だが、大きいだけでなくプロ意識を高く持ち、身体作りにも時間をかけた。

並大抵のものではないと感じるほどに、アメリカ女子代表は打倒日本へ向けての準備を4年間かけて行ってきたのだ。

その結果が今大会で大きく出た。
試合開始からの4得点は、日本にとっては悪夢だったがその時間帯にアメリカが懸けてきた4年間の結果が出たといっても良いであろう。

アメリカには女子のプロリーグが存在し、多くの女子サッカーファンが存在するが、それでもリーグ自体が潤っているわけではなかった。
独立リーグとしてアメリカ国内には全米女子サッカーリーグ【WUSA】とアメリカプロサッカーリーグ【WPS】が存在したが、どちらも財政難によって短期間で廃止の道を辿った。
独立リーグのため下部リーグは存在していなかったが実質2部という扱いに近かったセミプロリーグであるUSLがその後1部リーグとして活動したものの、今後の代表選手の強化の面を考えるとこのままでは難しいと2013年、新たに女子サッカーリーグを新設した。
それが現行のナショナル・ウーマンズ・サッカーリーグ【NWSL】だ。

アメリカサッカー連盟が協力し、代表選手クラスにはサッカー連盟から給与を支給する形でクラブの財政を助け負担している。
リーグとサッカー連盟が協力的に運営し、アメリカ国内で女子強化が進むようリーグを運営しているのだ。
その形となってまだたった3シーズン目を迎えているところだ。

日本のプロスポーツ界全体にいえることで、日本社会全体にもいえることだが、日本全体として不足している部分。
それが妊娠出産に関してのサポートだ。
そういった女性としての生活のサポート面もアメリカは充実している。

結婚は相手の理解などによって女性アスリートがアスリートとして続けることはできるものの、妊娠や出産という大きな節目を迎えてスポーツ界に復帰することは現在の日本では難しい。
しかしアメリカでは、妊娠出産した選手たちのサポートも必要だと考え、サポート体制を充実化している。
妊娠期間は休むことができ、出産した後は遠征や海外試合に子供を連れて行くことができる。
チームでベビーシッターを契約し、サポートしてもらえるのだ。
宿泊施設で夜に子供が泣いたりしても他の選手に迷惑がかからないよう部屋割りが考えられ、サッカー連盟ができる限りサポートができるよう動いている。
子供がいるからアスリートを辞めなくてはならない、ではなく、子どもと共に過ごしながらサッカーをすることができるようアメリカサッカー連盟はサポート体制を1996年頃から強化している。
それによって、結婚や妊娠、出産という機会で引退するという選択をしなくなり、才能ある選手たちが女性としての生活もしつつ長く現役生活を続けているのだ。


プロ選手も少なく、競技人口も少ない。
環境も整っていないなでしこJAPANが世界有数のチームとして名を挙げられるのは本当に途轍もないことなのだ。
だからといって、今の環境でもできるのだからということに甘えず、これから先女子サッカーを強化する上で必要となることが日本女子サッカー界には山積みといえる。
選手たちが結果を出し、訴えるという状況の今。
その声によって自然発生する観客や手をあげてくれるスポンサー候補に頼るのではなく、協会やクラブが発展を見据えて本気になって動き出すことが重要である。
これだけ日本国民全体に感動を与え、なでしこJAPANという存在が浸透した今。
改革の時を迎えているのではないだろうか。

強豪国の良い部分をモデルにしつつ
なでしこJAPAN、そしてこれからサッカーをはじめる少女たち、今なでしこを目指してプレーしている女子選手たちの未来が明るいよう。
世界を切り開いてくれた現なでしこJAPANの戦いを無駄にしてはいけないと感じる。


世界への道を開いた今、次なる発展へ。
日本女子サッカー界の発展は、これからが勝負となる。

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