増え続けるサイドハーフの役割
2016/09/01 20:29配信
カテゴリ:コラム
サッカー戦術のトレンド、その最先端であり続ける欧州サッカー界。
そこで行われるサッカーが、システマティックと言えるものとなってから
いったい、どれほどの時が経ったでしょうか。
広義としては、サッキによるゾーンディフェンスの発祥からでしょうか。
それともトータルフットボール=オーガナイズの重要性を提唱したミケルス?
コンピューターを導入し、データサッカーというものを確立したロバノフスキー?
ともあれ、サッカー界に確かな変革をもたらした人物は
限られた人数ではありますが、確実に存在します。
ただ、ロバノフスキーに関しては、自身
「フットボールに革命は無い。あるとすればトータルフットボールのみである。」
というニュアンスの言葉を残してはいるのですが。
彼らが概ね共通して唱えたのは
「チームとは、個が11人いる結果ではなく、11人で作る1つのシステムである」
ということです。
そこから始まり幾星霜、今でも「個か組織か」という二元論で語られることは無く
チームのそのポジション、あるいはそのエリアに課せられた役割を全うした上で
確かに存在する「個」をいかにチームのために上乗せしていくか、という研究が
日々、繰り返されているように思えます。
役割が増え続けるサイドハーフ
サッキやロバノフスキーが好み、磨き上げたのは、442という布陣です。
この、最もバランスが良く、基本と考える指導者も多い布陣において
より、その役割が増え続けているポジションがあります。
それはサイドハーフです。
今日のサイドハーフは、非常に多くの役割を求められています。
前から数えて2列目であることから、攻撃では決定的な仕事が求められ
サイドに張れば、ボールを引き出してドリブル突破
またはサイドバックや真ん中の選手とのコンビネーションによる崩しが必要です。
また、そのチームの横幅を出すのがサイドバックであれば
サイドハーフは、中央の相手ボランチ脇のスペースでボールを受ける必要性が出るため
そこで受けるための細かいう位置取り、動き直しと
受けたらそこから決定的な仕事をするためのドリブル、パス、シュートといった
採り得る選択肢の豊富さが求められます。
そして、味方の攻撃が逆サイドを経由したものであれば
クロスに対してのフィニッシャーとして、相手サイドバックと勝負する必要があります。
もちろん、役割は攻撃だけではありません。
そのように相手の最終ラインと勝負したかと思えば
攻→守の切り替えの際には、守備ブロックを形成するために所定の位置まで戻ります。
そして、後ろから数えて2列目として守備ブロックに参加した場合には
442の急所となる2トップ脇に対して目を光らせ
周りと連携して、ボールを取りにいきます。
その際には、当然のように球際の強さが求められるでしょう。
また、チームがボールを取る場所
相手を追い込む場所をどこに設定しているのかにもよりますが
敵が逆サイドに展開すれば、味方の中盤と連携してスライドし
ボランチ脇の急所を埋めます。
突破されれば、まるでディフェンダーのように、マーカーの選択を行い
相手の攻撃のフィニッシャーであるサイドバックなりボランチなりに付いていく
ために、ゾーン守備から人に付く守備に切り替える必要があります。
そして、奪ったところからカウンターが開始されます。
いわゆる、守→攻の切り替えです。
前から数えて2列目であることから、決定的な仕事が求められます・・・。
どこのポジションもそう、と言えばそうです。
大変でないポジションなどありません。
しかし、サイドハーフの役割がどんどん増えている現象は
特にここ最近では顕著と言えるでしょう。
サイドには、昔はもっと攻撃でスーパーな選手が置かれていました。
もっと言うと、攻撃でスーパーであれば、守備はほとんど免除されていました。
今でもそういうチームはありますが、それはトレンドとは言えないでしょう。
ローテーションの導入などで、サイズ、フィジカルからパスやドリブル、決定力まで
総合的なものを持つ選手が求められるようになってきた世相を特に反映しているのが
今ではサイドハーフのポジションであり、この役割過多であるのかもしれません。
サイドハーフ問題、次世代の日本代表ではどうなるか
代表チームはその国のサッカー事情を表すと言います。
日本代表では、ブラジルW杯で「自分たちのサッカー」により惨敗し
また、W杯アジア3次予選のシンガポール戦でスコアレスに終わって以降
ようやく聞く耳を持ち、攻撃面で欧州基準の初歩を取り入れ始めました。
6月のキリンカップでは、4231のサイドハーフはサイドに張る形が増え
ブルガリアからは7得点を奪っての圧勝
ボスニア・ヘルツェゴビナ戦は敗れたものの
「ビッグチャンスを9回ほど作った」(ハリルホジッチ監督)ものであり
その内容の改善は、ポジティブにとらえたいものと言えました。
ボスニア戦での得点もその形からです。
ボスニア戦で両サイドハーフを務めた宇佐美貴史と浅野拓磨の
ドイツ(再)挑戦が成功するかどうかも、ボスニア戦で見せたプレーと
それを包括した上記のサイドハーフの役割を全うできるかに懸かっているでしょう。
宇佐美とは違い、既にドイツでサイドハーフとして成功したのが原口元気です。
ハリルホジッチの要求を満たしたことで信頼を得て
ここまで、サイドバック、ボランチ、インサイドハーフなどを歴任し
技術と適応能力の高さを存分に見せつけました。
ただ、最終予選では、サイドハーフで起用されるのではないかと思われます。
現在、日本のサイドハーフのトップランナーであり
重要性を増す、そのポジションでのトップランナーということはすなわち
原口は次世代の日本を牽引していくべき存在と言える、ということでしょう。