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女子W杯 日本vsオランダ 全ての選手が手本とすべき3つのこと

2015/06/26 17:08配信

武蔵

カテゴリ:マッチレポート

FIFA女子ワールドカップ カナダ 2015が行われています。

日本時間6月24日、日本は決勝トーナメント1回戦の

オランダとの試合を行いました。

結果は2‐1で勝利。

グループリーグの3戦と同じく1点差という僅差の勝利とはなりましたが

ディフェンディングチャンピオンということもあり

チームとしてマークを受ける立場であり

またそれ故に、対戦相手のモチベーションも

高くなるであろうことを考えれば

一発勝負のトーナメントで勝ち切ったことは

とても良かったことだと思います。

ワールドカップ連覇へ向けて、内容は充実していると言って良いでしょう。

さて、今回の日本対オランダですが、非常に良い試合でした。

非常に見応えがあり、日本だけでなく

オランダも非常に良いチームだと言えるものでした。

前回W杯の覇者にして、前回の五輪では銀メダルの日本はともかく

FIFAランキング12位。

今回がW杯初出場となるオランダも非常に良いチームでした。

良い試合というからには、見るべきポイントがあります。

この試合に関して、感心したポイントは大きく分けて3つありました。

それは、性別に関係なく

プロアマ、年代などのカテゴリーに関係なく

まさにお手本とすべきことばかりでした。

①サイド攻撃

オランダは男子顔負けのサイド攻撃を見せ続けました。

オランダでは基本と言える433のフォーメーションを採り

素晴らしいサイド攻撃を仕掛け続け

再三、日本ゴールに迫りました。

男子代表と比べ、やや引き出しが少ない感じはしましたが

むしろ、ブラジルW杯での男子代表が採った532の戦術が

少々、オランダの基本から逸れたものだと言えるもので

今日の女子代表は、堂々たる433を見せてくれました。

裏を返せば、そのような引き出しが今後増えてくれば

大きな大会を勝ち進めるようになっていくでしょう。

サイド攻撃の基本は、スタートの段階で

サイドプレイヤーがサイドに張って

相手の守備を引き付けることです。

大きな展開でボールを動かし、そのサイドプレイヤーにボールを入れ

相手の守備ブロックを動かす(=スライドさせる)こと

それと、守備者の視野を動かすことが重要です。

DFが機械でもない限り

スライドをすることで選手間の距離は微妙に変化します。

攻撃側はそのスペースを狙うのです。

また、サイドに張るだけでなく

斜めに走り込むことで

相手DFラインの裏に走り込むことも同じく重要です。

オランダはメリスが、再三その役割を果たしました。

シュートまではいけませんでしたが

前半7分には斜めのランニングで惜しいシーンを作りました。

また、後半30分のオランダの決定機となったコーナーキックですが

そのコーナーキックに繋がったプレーは

まさに大きな展開で、サイドに張っていたファンデフェンを生かしたプレーでした。

日本はこの役割に、男子を含めて一番長けていると言えるのが川澄奈穂美です。

グループリーグ3戦では主に大野忍が右SHを務めてきましたが

大野がポジションを移し、川澄が先発したということで

いよいよコンディションが上がってきたと言えるでしょう。

後半8分にはカウンターのチャンスで長い距離をスプリントし

相手のSBの裏を取り、チャンスを演出しました。

例えば男子代表は、シンガポール戦で相手の守備ブロックを崩せませんでした。

それは、サイド攻撃のやり方に問題があると言わざるを得ない出来でした。

男子代表を始め、全ての11人制サッカーのプレイヤーに

ぜひとも参考にしてほしいサイド攻撃が、この試合に詰まっていました。

②3セントラルのゾーンディフェンス

オランダは433のフォーメーションで

日本ではトップカテゴリーの選手達が

四苦八苦しているゾーンディフェンスを

当然のように採用しています。

女子サッカーとは、身体能力に劣る女子が

男子と同じ広さのピッチで同じ競技を行わねばならないものです。

従って、より効率的に守備を行う必要があります。

オランダは育成システムが

まさにサッカー先進国と言えるものであるということもあり

ゾーンディフェンスの導入は当然のことなのです。

この試合でもオランダは

433のフォーメーションを採る場合に一般的な4141の守備ブロックを形成し

日本の攻撃を食い止め続けました。

再三の日本のシュートチャンスは

ランキングが示すような力差の表れでしょうか。

逆に言えば、日本がその武器であるアジリティを生かして

よくその守備網をかいくぐったと言えるでしょう。

日本の2点目は、これ以上ない美しい形で決まりました。

とはいえ、オランダは力差を埋めるべく、上手く守備を形成しました。

例えば日本の男子代表は、ロシアW杯を始めとして

今日のオランダのように上位の国々と戦う時が必ず来ます。

果たして、今日のオランダのようなゾーンディフェンスが

運用できるようになっているでしょうか。

そうでなくとも、育成年代では基礎教養とすべきゾーンディフェンスの

お手本と言えるものが、今日の試合にはありました。

③手を使わないクリーンなディフェンス

最後になりましたが、ある意味でこれが一番重要です。

今日の試合で目に付いたのが

いや、「目に付かなかった」のが

ホールディングの反則です。

手を使ったプレーでのファウルが非常に少なかったのです。

唯一と言って良いほど目に付いたのが

後半25分の岩渕真奈がスルーパスに抜けだそうとした際の

ファンデルフラフトが手を使って止めたように見えたシーンですが

これのプレーはファウルを取ってもらえませんでした。

それを含めても、ホールディングの反則が少ないように見えました。

ホールディングの反則で私が個人的にイヤなのは

手を使いってファウルとなった後の見苦しい抗議です。

それは男子でもトップカテゴリーでも、頻繁に見掛ける行為です。

ペナルティエリア内で手を使って、当然のように笛を吹かれPKを献上。

その至極妥当なジャッジに対して、照れ隠しもあるのか猛抗議・・・。

そういった場面をよく見かけます。

「ある程度は手を使わないと守れない」と言うのかもしれません。

しかし、それによりホールディングの反則を取られるのは当然のことで

取られない方がラッキーな出来事なのです。

「手を使わないと守れない」というのは

単に守備の技術が足りないということではないでしょうか。


今日の試合で、特に日本はクリーンなディフェンスをしました。

手を使うことによるリスクを感じたシーンはありませんでしたので

その点については、安心して観戦することが出来ました。

手を使わない守備でも1失点に抑えましたし

その失点も、人工芝でイレギュラーしたのかという

不運も重なった失点でした。

手を使うことのリスクを考えると

クリーンなディフェンスで守れたら、それが一番だと思います。

そしてその上で結果が出れば、説得力も増します。

今日の日本はそれを示してくれました。

結果もさることながら、大変意義深い試合だったと思います。

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