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浦和対FC東京 盤石の浦和が「策に溺れた」FC東京を沈める

2015/05/20 17:04配信

武蔵

カテゴリ:マッチレポート

クラブとしての経験値

今シーズン、開幕節から首位をひた走る浦和にとっては

3節と9節に続き、3度目となる首位攻防戦を迎えました。

相手は2位・FC東京で、その勝ち点差はわずかに1。

浦和はACLによる延期分があるものの、その試合が

アウェイの難敵・柏戦だということを考えると、アドバンテージとも言えません。

ビッグクラブとしてあるまじき失態を繰り返してきた歴史を踏み台に

今年こそタイトルを・・というクラブとしての目標へ向けて

ここも、負けられない1戦となりました。

対するFC東京。

今シーズンは首位タイが1度ありましたが、それ以外では

首位になったことはありません。

単独首位になるチャンスも2度ほどフイにしています。

そして問題なのは、FC東京はクラブとして「真の優勝争い」の経験がありません。

このようにひり付くような雰囲気で行われる試合をするのは今まであったでしょうか。

あったとしてそれはいつのことだったでしょうか。


ともあれ試合は始まります。

この、クラブとしての経験値の差が、早速表れることになりました。

意外というか、それを露呈したのは

FC東京の指揮官・フィッカンデンティ監督でした。

策士、策に溺れる

FC東京は433で試合に入りました。

守備ブロックは4141です。

林容平をトップに置き、サイドに武藤嘉紀と東慶悟を置いた形です。

この433、FC東京が普段用いている4312と違う点は大きく言って2つあり

1つはサイドに人数を揃えたことです。

4312は厳密に言えば、サイドはSBしかいません。

敵ゴール、味方ゴールのある真ん中に密集させるやり方であるため

サイドで人数が足りなくなることが、ままあります。

盤石の浦和はいつも通りのやり方を変えません。

浦和はボールを持ちたい

FC東京はボールを持たせても構わない

そのため、浦和はいつも通り415の形でボールを持ち、攻撃を構築します。

FC東京の4141は、サイドに2人いる浦和の

その形に対抗すべく導入されたものだったのでしょう。

フィッカデンティ監督はもともと433(≒4141)を志向する監督です。

それが上手くハマらず、試行錯誤の上で日本ナイズさせて

3センターという意味では共通の4312を採用し

2年目の今期もそのまま続けてきました。

違う点の2つめは、その2つのシステムで共通の3センターに関する事柄で

インサイドハーフの2人の位置取りです。

4312は2トップとトップ下を置く形なので

簡単に言うと、インサイドハーフの前方真ん中に3人いる布陣です。

それとは違い、4141はトップ下がいません。

前方真ん中にいるのは1トップだけとなります。

そのため、433のインサイドハーフは4312と比べて前方に位置取らなければなりません。

そうすることで、相手にスペースを与えない形ができ

コンパクトに陣形を保つことに繋がります。

つまりフィッカデンティ監督としての狙いをまとめると

守備ブロックを4312から4141にすることで

・サイドでの数的不利の解消

・インサイドの位置取りを前方にし、よりアグレッシブな守備の志向

といったところだったでしょうか。

今回のシステム変更に限らず、サッカーのフォーメーションというものは

1つの長所を伸ばそうと思えば

1つの短所も同じように出てくる、といったものです。

そして、今回のFC東京の4312から4141への変更に関しては

早速、短所が出てくることになります。

https://youtu.be/3SIcJVJj9OQ

1点目のシーンが全てを物語ります。

浦和のシャドウである武藤雄樹がボールを受けに降りてきます。

この時に使うスペースは、大きく空いたアンカー脇

インサイドハーフの裏のスペースです。

FC東京は、空くのは初めから分かっているはずの

この大事なスペースをどうやって潰すかが、全く整理されていませんでした。

もっと言うと、FC東京の2CBと1アンカーは

数的同数ながらも対称の三角形となる浦和の1トップ2シャドウをどう抑えるか

この方法が全くもって見受けられませんでした。

そして浦和はサイドへ展開。

FC東京としては、サイドは数的不利を作らないことが目的なので

対面の守備が強い徳永悠平が宇賀神友弥と1対1を迎えても、特に誤算ではありません。

しかし、簡単にクロスを入れられると

件の3対3をどう抑えるかが仕込まれていないFC東京は

フリーを2人も作ってしまいあっさり失点。

試合の趨勢は決まってしまいました。

4141とすることでサイドを厚くしたら、中央がスカスカとなり失点。

なんとも、サッカーのフォーメーション論のお手本となってしまいました。

これは4312であれば、システム的に防げた失点ではないでしょうか。

慣れもあります。

もともと433を志向していたフィッカデンティ監督と

1年目のプレシーズンから取り組み、フィットせず

公式戦3試合を待たずに導入された4312で一定の結果を出した選手達とでは

システムへの意識にギャップが生じていたかも知れません。

ただそれ以上に、4312でインサイドがしっかり下がり、スペースを潰していれば

済んでいた話ではなかったでしょうか。

実際に昨年の浦和戦では、4312を5バックに変形させたりして

この日のようなスコアになったりはしませんでした。

昨期のような好勝負を演出してきた策士・フィッカデンティ監督が

自ら動いたことにより穴が広がってしまった

そのように思えてなりません。

それを裏付けるが如く、最初の選手交代はFC東京

それも前半28分でのことで、

高橋秀人の投入によりシステムを変更することになりました。

盤石な浦和に死角なし

ここまでFC東京側の失策ばかり書き連ねてしまいました。

浦和について取りたてて書くことがない、というと過言ですが

それだけ、浦和はいつも通りの浦和であるだけでした。

確かにこの日の浦和は素晴らしかったのですが

その素晴らしさというのは、浦和のいつも通りの延長線上にあるものです。

なので、何度も「盤石」という言葉を使わせていただきました。

それだけ浦和は、この試合で揺るがない強さというものを見せましたし

2012年から浦和にもたらされた「ミシャ式」の良さを出し切ったということです。

2点目は、その粋を集めたと言えるものでしょう。

特筆すべきなのは相手のアングルを操作する形です。

浦和は中央で起点を作ります。

この時、FC東京は中央を封鎖すべく最終ラインの4枚は真ん中に絞ります。

この時、すでに浦和の右WB・関根貴大はフリーで動き出しています。

そして左サイドに振る浦和。

この時、中央へ絞ったFC東京は浦和の左サイドを注視します。

浦和はボールを持つだけでなく、中央へのフリーランにより

さらにFC東京の注意を引き付けつつ、スペースを空けます。

この時にはもう、逆サイドの関根は裏を取ってしまっています。

ボールホルダーとフリーランナーという、注視すべきポイントを2つ作られてしまった

FC東京のDF陣は、クロスに際し、まさに視野の外から飛び込まれてしまいます。

あとは、どフリーの関根が合わせるだけでした。

相手のアングルを操り、サイドに振る。

そうしたら、それとは逆サイドで余るWBが相手の裏を取る・・・

ミシャ式にとって1つの狙い通りの、最高のゴールだったのではないでしょうか。

最終的に4‐1とスコアは開きましたが、これは首位攻防戦でした。

2位のチームに対し、これくらい思い通りのサッカーが出来るのであれば

浦和の首位は揺るがないと言って良いでしょう。

浦和にとって8年ぶりの

また、このミシャ式を導入したミハイロ・ペトロビッチ監督にとっては待望の

タイトル獲得はもうすぐそこまで来ています。

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