浦和vsG大阪 鎖の弱いとこ
2015/05/08 14:20配信
カテゴリ:マッチレポート
かつてナショナルダービーと呼ばれたこのカードは
今では、というか昨季から、首位攻防戦の代名詞となっています。
首位・浦和と2位・G大阪の試合は
文字通りのビッグマッチとなりました。
さて、試合の結果は1-0で浦和が勝利を収めました。
この試合でポイントになったのは、G大阪の弱点です。
G大阪の弱点を上手く突き
反対にスキは見せなかった浦和の勝利と言え、内容に即した結果だと思います。
G大阪の弱点は小椋だったのか?
では、G大阪にとってのその「鎖の弱い部分」とはどこだったのでしょうか。
これを見て皆さんがパッと思い浮かぶのは、右SBで起用された
小椋祥平のポジションかもしれません。
確かに右SBを本職としていない彼は
米倉恒貴やオ・ジェソクのケガにより、緊急的に起用されました。
この日のG大阪のベンチにDF登録の選手が入っていないことからも
その非常事態っぷりがみてとれます。
また、実際に小椋の右SBが狙われた理由はいくつかあります。
浦和の選手の証言としては
「G大阪の右SBは本職じゃないので、そこを突くようにした」
ということです。
実際に浦和の得点はG大阪の右サイドからでのものです。
そして、小椋の対応も最善を尽くしたものではありません。
この場面を指して解説者は
「浦和お得意の人数をかけた攻撃」
という解説をしていますが、果たしてそうでしょうか。
浦和は普段から、攻撃時に5トップにすることで
4バックのチーム相手に数的優位を作ります。
しかしこの場面、浦和は少なくともサイドで2対2を作ったにすぎません。
後追いとはいえ、同サイド2列目の倉田秋が
ボールホルダーの武藤雄樹に付いています。
オーバーラップをしてズラタンのゴールをアシストした宇賀神友弥に
小椋がそのまま付いて行かなかったため
CBの丹羽大輝が釣り出されてしまい
中の人数が減ってしまい、ズラタンがフリーで合わせることができた、ということです。
金正也の理解不能な動きのおかげもあり
浦和はこの場面で、中で2人の選手がフリーになっていました。
少なくとも小椋は、ドッカリと腰を落としている場合ではなかったのです。
しかし、1つ疑問が湧きます。
これは小椋だから起こった失点だったのでしょうか。
レギュラー右SBである米倉やオ・ジェソクであれば起こらなかったのでしょうか。
その答えは、やってみなければ分かりません。
しかし、対人の強さなど多少の個性の違いはあれど
共に攻撃に特徴のある選手2人です。
小椋でダメなら、その2人でもダメだったのではないか
どちらかといえば、その手の思いの方が強く出ます。
少なくとも、この日まさに奮闘した小椋を責める気持ちは持てません。
そして、小椋よりも「鎖の弱い部分」に心当たりがあるからこそ
そういうことが言えるのだ、ということです。
それはG大阪の強力2トップについてです。
サッカーにおいて「客観的」は全て善か?
昨今言われているのは
「代表招集以来、宇佐美貴史は走るようになった」
ということです。
確かにデータ上、総走行距離もスプリント回数も増えています。
ということは、走るようになったのでしょう。
これは事実と言えます。
便利な世の中になったものです。
そして、この試合までで6試合連続ゴールをマークしています。
よく走り、よく決める
これは選手として最高の結果と言えるでしょう。
ゴールの方は確かにすばらしいです。
走行距離の増加により、決定機に絡む回数も増えるはずです。
宇佐美ほどのクオリティをもってしても、百発百中は難しいものですので
従って、チャンスに絡む回数を増やすことはどうしても必要になってきます。
攻撃面においては、必要な数値を伸ばしたと言って良いでしょう。
しかし、走行距離はあくまで客観的なデータの話です。
サッカーの醍醐味は、選手のパフォーマンスの善し悪しが
それだけでは決まらないことにあります。
走行距離が伸びたからといって、課題とされてきた守備で
チームの力となっているとは限りません。
運動「量」とは言いますが、走行距離の量だけでは「質」を測ることは出来ません。
運動「量」という表現において「質」を省くのは
質はもう大前提であるからだと思います。
Jリーグ公式サイトでトラッキングデータが導入され、便利になったと思います。
しかし、メディアによる客観的数値の氾濫が目立つようになりました。
これに対するリテラシーというものを、当然、養わなければなりません。
自分の眼に基準を持ち、主観的に見ること
そして、データはその後で照らし合わせる
それが良い見方ではないかと思うのです。
好き放題に使われた2トップの脇
そんなワケで、宇佐美とパトリックの強力2トップの守備には疑問が残りました。
パトリックは攻撃面でも効果を発揮することが出来ず
赤嶺との交代を余儀なくされています。
しかし、赤嶺がなかなか使われない理由とは
攻撃面でプレーモデルとなっているパトリックの役割が出来ないからであり
浦和守備陣の前に、赤嶺も攻撃的な能力を発揮出来ませんでした。
そして赤嶺は、守備で存在感を発揮できるような選手でもありません。
一方、フル出場の宇佐美。
確かに走ってはいました。
結果としてこの試合、ノーゴールには終わりますが
中2日ということを考えると、頑張っていました。
しかし、頑張りが評価される世界であることを、何よりも宇佐美自身が望まないでしょう。
そしてその頑張りは、守備において効果的ではありませんでした。
元々、442の撤退守備を得意とするG大阪。
その方法を可能とするものの1つが、パトリックの役割なのですが
それは、撤退守備により相手ゴールとの距離が遠くても
パトリックがスピードとパワーを生かし、ボールを運び、幅を取ることにより
相手を押し下げ、自分たちのラインを上げることが出来ます。
415でビルドアップする浦和の最終ライン4枚に
G大阪の前線2枚で対抗することは不可能でしょう。
そのため一般論として、前線2枚の守備時の役割というのは
415の1に入れさせないようにすることです。
それにより、浦和のビルドアップをサイドに限定することが
ほとんどの場面で可能だからです。
しかし、この日のG大阪2トップは、守備時において
目的意識が曖昧だったように思えます。
きまぐれに前から追ってみれば、疲れた後半は棒立ちであったり、と言う感じでした。
きまぐれに追うということは、オーガナイズの効いたプレッシングの先頭を切った
ということではなく、効果的な守備ではなかったということです。
調べてみれば、G大阪の後半初シュートは75分
遠藤保仁のFKによるものです。
G大阪の守攻移転が、後半はなかなか上手く機能しなかったと言えるでしょう。
そして、宇佐美の運動量も、あれだけきまぐれに追えば
総走行距離も伸びるよ、と言いたくなるものです。
2トップの両脇を散々に使われた事で
特に後半は、浦和は容易にボールを運ぶことが出来ました。
浦和ペースだったと言えるのは
G大阪にとって完敗だと言えるのは
一言で言ってしまえば、浦和の攻撃が上手くいき
G大阪の守備が上手くいかなかったからと言えるのではないでしょうか。
特にG大阪の場合、上記の通り
守備から始まる攻撃が根幹になっているのですから。
走らないのではなく、走れないのでは?という疑問が
私個人としては有った宇佐美が
代表招集をきっかけに走るようになったのは良い兆しです。
しかし、その質はどうでしょうか。
今後は、その質を高めていって欲しいなと思います。
運動量が足りないと言われて走るようになったら、今度は質を高めろ、というのは
それは無理が過ぎるのではないか。
そう思う方もいるかもしれませんが
本人が常日頃から口にする、代表、海外、世界を目指すのであれば
どうしても突き詰めなければいけない部分です。