川崎vs柏 「攻撃は最大の防御」にも限界がある
2015/05/07 15:53配信
カテゴリ:マッチレポート
明治安田生命JリーグはGWの連戦がありました。
J1ではG大阪と新潟以外の16チームが、土曜日からの中3日で迎えた第8節でした。
日本各地が好天に恵まれ
この日、開催されたJリーグの試合全ての観客動員は、しめて20万人。
連戦の疲れを見せない、熱い試合を期待したいところです。
良い意味でも悪い意味でもポゼションを握りたい両チーム
そんな中、等々力陸上競技場の対戦カードは
内容で客を呼べるともっぱらの両チームのものとなりました。
ホームの川崎は、ボールを保持し能動的に攻撃を仕掛けます。
風間監督の提唱する「相手の裏を取り続けるサッカー」で
どんな守備ブロックも破壊し、完全に崩したのち、ゴールを陥れます。
得点数は目下、リーグでナンバーワンです。
対する柏も、攻撃に特徴を持つチームです。
吉田達磨新監督が下部組織で築き上げたポゼッションサッカーを
今年からトップチームでも試みています。
特徴的なのは、頻繁的にボールサイドに顔を出す1トップのレアンドロで
中盤に数的優位を作り、ポゼッションを助けます。
「ヴィトーリア」から、この自分たちで主導権を握るサッカーへの転換は
アジアでは猛威を奮っていますが、Jリーグでは苦戦中です。
この、攻撃面で似通った両チームですが
実は守備面でも同じ特徴を持っています。
それは、受けに回ると弱い面を見せやすいという点です。
この「受けに回る」というのは、この両チームの場合は
「ボールを相手に明け渡した状態の時」を指します。
つまり、守備ブロックが弱く、また、カウンター対応も拙さが目立つということであり
同時に、自分たちがポゼッションをしていない、その試合の4割~5割弱の時間を
冷や汗とともに過ごしているということになります。
そのため両チームとも、攻撃面で良さを出すために
また、守備面での弱点をさらけ出さないために
良い意味でも悪い意味でもポゼッションを握りたいと考えています。
川崎は特に、前節の甲府戦のレビューでも守備の問題点として触れましたが
起点となる相手FWへのくさびを潰せないという特徴があります。
守備にかける人数の問題や、人選の問題などいろいろ理由はありますが
甲府戦でも、数少ない守備機会にディフェンシブサードまで
運ばれてしまうことがありました。
柏にもバイタル付近、もっというとアンカー脇の問題はありますが
この日、問題が噴出したのは川崎の方でした。
先制点により受けに回ってしまった川崎
前半41分、川崎は首尾良くセットプレーで先制します。
しかしそれにより試合の流れが動いたのは否めません。
その直後、同点弾を食らいます。
武富の素晴らしいドリブルシュートによるものですが
川崎の守備の問題点がこれでもかと出ているので
そちらの方が、どうしても目についてしまいます。
しかも、再三指摘されている
・人選の問題(ボランチに攻撃的な選手を2枚置く)
・人数のかけ方(ボランチが突破されたあとに、誰も武富に当たりに行かない)
という問題が揃いに揃っている、今の川崎を象徴した失点シーンです。
持ちあがる武富は、ボランチが見ると決めてあるのでしょうから
そこを突破された時点で、狂いが生じるというのは分かります。
しかし、それと同時に下がるレアンドロも離してしまっています。
せっかく最終ラインに5枚も並べて、人海戦術で守ろうとしている状態で
その通りに5枚いる状態なのだから、原始的なチャレンジ&カバーをすれば
失点を防げた確率は上がったでしょう。
これは結果論でしょうか?そうではありません。
「え、そんな原始的なことも出来ないの?」と言わざるを得ないのです・・・。
そんな川崎というクラブの姿勢
しかし、一番問題なのは川崎のクラブとしての姿勢です。
川崎の公式サイトのゲームレポートでは
「一瞬のスキを突かれて」とあります。
しかしそれならば、あまりにもスキだらけだろうと言わざるを得ないという事です。
そして試合後の風間監督は質疑応答で
・ディフェンスが良くなかったことは認識しているけど大きな問題ではない。
・それよりも攻撃が機能しなかった。
・攻撃が機能すれば、守備の弱さもカバーできるし、試合を支配できる。
ということを述べています。
川崎が負けることは、34試合のうち10試合程度とそれほど多くはありません。
しかし、その時は決まって「攻撃が機能しなかったのが問題」と述べています。
もうずっとです。
「打線は水物」と言います。
全くその通りとは言いませんが、そういう日もあります。
そういう時に耐えて、守ろうとして守れるチームが強者と呼べます。
クラブとして、悲願のタイトル奪取!と謳うのは構いませんが
実態が伴っているとはとても思えません。
内容で客を呼べる!と言うにしても
この試合内容、スコアで満足するサポーターはいないでしょう。
「攻撃は最大の防御」と言わんばかりの攻撃を持っていることは認めます。
しかし、それが機能しなかった時に勝ち点を拾う方法論の無さ
そしてそれをもう3年ほど続けているという認識を持たねばなりません。
柏は試合巧者ぶりを身に付けられるか?
対する柏は、極めて冷徹に相手の弱点を突き続けました。
4得点も奪ったのに、得点シーンは似通っているということが
それを物語っています。
この日の柏は守備の問題点がなかなか出ませんでした。
SBの裏、CBの横、俗にポケットと呼ばれるスペースに関しては
アンカーの茨田が積極的に食い付き
経験豊かなインサイドの大谷がスライドして対応していました。
そこから一旦作り直し、大きな展開をされたりしたら分からなかったですが
川崎はそれを見せることは無かったように思います。
柏の守備は、カウンターを完結させて点を奪ったことも合わせて合格点でしょう。
その点、「攻撃は最大の防御」とも専守防衛とも違う
正しい守備のあり方を実行できていたように思います。
しかし、風間監督の言うようにこの日の川崎は
攻撃が機能しなかったというのも一理あります。
つまり、相手に助けられた部分もあるということです。
それを言ってはキリが無いとも思いますが
サッカーの内容にも、概ねキリは無いものです。
それに、これからACLも含めた連戦がある中で、必然性のある役回りである
レアンドロや大谷の消耗も考えねばなりません。
そのような経験豊富な選手が出ていなくても戦術を実行できるという
この日のような試合巧者振りが求められるでしょう。