CHANT(チャント) 柏レイソル

大丈夫?工藤壮人のフィット感・・・と期待感

2015/03/19 18:07配信

武蔵

カテゴリ:マッチレポート

柏レイソルの明治安田生命J1リーグ第2節は金曜日に行われました。

相手は仙台。

仙台は開幕節で制した東北ダービーの勢いを駆って敵地・日立台に乗りこんできました。

フィットするユース組、ただ1人を除いて・・・。

柏はACLアウェイ・全北戦以外は一貫して433のシステムで戦っています。

吉田達磨新監督の目指す「相手を壊しに行くサッカー」を実現しようとしています。

そこでよく語られるのが

「柏はユース出身の選手が多く、吉田監督のサッカーが浸透しやすい」

というものです。

確かに吉田監督は、2003年から柏の育成に関わって以来

現在の柏レイソルの育成の礎どころか、その頂上部分まで作り上げた感のある人です。

柏の下部組織で育った選手達が多数在籍する、柏の現在のトップチームにおいて

育成年代からトップチームまで、一貫したサッカーをしよう、という

クラブの理想を体現するためには打ってつけの人材というところまでは分かります。

では、選手の方はどうでしょうか。

茨田陽生や武富孝介、輪湖直樹といった面々は

既に現在の柏にとって欠かせない選手となっているように思えます。

現に、この日の仙台戦では、武富は完全にターンオーバーの対象となりました。

特に主力として認められている証拠です。

ではユース組の中で、誰が主力となり得ていないのでしょうか。

それは柏のエースとも言える、工藤壮人です。

比較対象はレアンドロ。率直に1トップ失格。

この日の柏は武富だけでなくレアンドロもベンチ外。

それにより栗澤と太田徹郎がスタメン入りし、それに伴って

工藤が右WGからCFWへとポジションを移しています。

吉田監督の「相手を壊すサッカー」は遅攻がカギとなります。

速攻をキモとする場合、カウンターを仕掛ける際というのは

多くが相手の守備組織は「壊れている状態」です。

「相手を壊すサッカー」

というのは、遅攻を念頭に入れてのものでしょう。

そして、その際の1トップに要求される動きのひとつとして

0トップ的に中盤に降りてきて、味方ポゼッションを助ける、ということがあります。

レアンドロはそれが非常に上手く、それに留まらずに他の仕事もします。

昨年のネルシーニョ体制最後期で同じような役割を務めていたという経験も役立っているかもしれません。

工藤はこの日の仙台戦でそれが出来ませんでした。

たまに降りてきてのポストプレーは狭いスペースの中で潰され

味方のポゼッションを停滞させてしまっていました。

そもそも、効果的な動き出し自体が少なかったので

ボールが回ってくる回数も少なかったです。

良かったところは後半、左サイドのクロスに飛び込んだ決定機でしょうか。

しかし、ここにこそ工藤の改善点があるように思えます。

「ストライカー」からの成長は?

工藤はJリーグでも指折りのストライカーと言えるでしょう。

クロスに合わせる際のフリーになる技術、スルーパスを引き出す動き

そして、単純なシュート精度に関しては

日本を代表する選手と言っても過言ではありません。

工藤はその通り、ACL第2節のビン・ズオン戦で2ゴールを挙げました。

CFWとしての本分であるゴールという結果を残しました。

しかしこの2ゴールも、折り返しからのゴールとCKからファーでフリーになるという

工藤本来の長所を生かしたものでした。

つまり「現在の柏の433における1トップの仕事」をこなした上で

生まれたものではありません。

そして、5-1での2得点ということです。

このような得点が不要だとは全く思いません。

ですが、1トップとしての仕事と、CFWとしての本分である得点のうち

どちらも満たせなければ、何を言われても仕方がありません。

それこそ、この日の仙台戦のように、自分の型通りのチャンスが来ない日もあります。

こういう苦しい試合で、勝ち点0を1に、1を3にするような仕事をしてこそのエースと言えるでしょう。

ですが当然、毎試合得点できるワケではありませんので

「現在の柏の433における1トップの仕事」をこなせるようになる必要があります。

それは、エースということもさることながら

リーグ戦とACLとの過密日程を消化する上で、出番が増える中で必須となるでしょう。

その「1トップの仕事」が出来ているかというと、率直に言って出来ていません。

そして、試合をこなしていく中で徐々にフィットしていくだろう、という

楽観論にも疑問を持たざるを得ない悪しき実績が、工藤には存在します。

それは「現在の柏の433における右WGの仕事」に関しても

全う出来ているか、甚だ疑問だからです。

工藤が日本代表から遠ざかった理由

工藤は2013年の5月に日本代表に初招集を受けました。

ザッケローニ監督にとって新戦力として白羽の矢が立てられたのです。

期待されていたのはズバリ、岡崎慎司の役割でしょう。

①当時の代表において長所だった左からのクロスへの飛び込み

②サイドの雑務⇔ゴール前に入ってくる・・・を実現するための運動量

この点、工藤は一見、条件を満たしているように思えます。

クロスへ合わせる技術、決定力

そして守備を厭わない運動量・・・

工藤の招集は、この時点では当然のこととも言えるレベルでした。

しかし、その後の国内組主体となった東アジアカップと9月シリーズを最後に日本代表から遠ざかります。

その年のリーグ戦では最終的に自己記録となる19得点をマークし

そもそもその代表戦で4試合2ゴールという結果を出したにも関わらず、です。

ゴールを挙げたのに招集から遠ざかるというのはどういうことでしょうか。

つまり、ゴール以外の働きに不満を持たれた、ということになります。

そして、相手のレベルが上がればそのゴールに関しても望み薄だと判断されたのです。

岡崎のいたポジション、日本代表における右MFの役割に関しても失格の烙印を押されたのです。

そして、逆サイドからのクロスへの飛び込みなど

日本代表の右MFと似たような役割がある

「現在の柏の433における右WGの仕事」もこなせているかは非常に疑問です。

確かにJ1開幕節の神戸戦では決勝点を決めました。

大事な、そして大きな仕事です。

しかしアレは、相手GKのミスによるものとも言えます。

つまり、ゴールという客観的事実で、右WGに求められている仕事に関しては

有耶無耶になったというのが正しいように思えます。

現に神戸戦のデキは、ダイジェストプレイヤーというのがしっくりくるような

そんなパフォーマンスだったと思います。

今シーズンの工藤には、柏のエースというイメージとは裏腹に

このままでは柏のシステムにとってのアキレス腱になりかねないのでは?と思わされてしまいます。

それでも、代表までもう少しなだけに・・・

そして、何度も言いますが、毎試合得点を挙げることは出来ません。

その時になって表面化するようで良いのでしょうか。

仙台戦のように、チームが勝ち点を落とすような危機に陥ってからでも

良いというのでしょうか。

工藤には、得点以外の仕事がこなせるようになってほしいのです。

それが、柏の433における1トップや右WGにおいて

チームのこの新システムを円滑に回すためのものであり

それが出来るようになれば、選手として格段に飛躍できるでしょう。

現状、それに近いのは僚友のレアンドロであり、川崎の大久保嘉人でしょうか。

そしてそうなった暁には、アジアカップでは武藤嘉紀が担った役割に

取って代わる資格があると思います。

アジアカップ・UAE戦後半の、武藤が外したあの決定機は

工藤の長所を思えば、工藤ならば、と思わずにはいられません。

それと同時に、あの舞台に立つために、得点以外の武器を磨かなければなりません。

その武器とは、現在の柏のシステムをこなした

まさにその延長線上にあると言えるでしょう。

代表選出への課題は見えています。

「今ある得点能力にプラスアルファして、出来ることを増やすこと」です

楽観的には見ることが出来ませんが、それでもこの壁を乗り越えれば・・・

と思わずにはいられません。

それだけのもの、得点能力をもっているのですから。

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