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【日本代表】 浮彫になった世界との一歩の差 【ザンビア戦】

2014/06/08 13:21配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:マッチレポート

 

 

昨日行われたW杯最終調整試合。
その結果を受けて、浮彫になった世界との差。
試合には勝利したものの、ザッケローニ監督が「勝った試合ではなかった」と表現したのはなぜか。


●一歩の差

たくさんの評論家や解説者たちの戦評を読んだが、やはり取り上げられているのは一歩の差。
この一歩の差が昨日はたくさんの失点を生んだ。

まずは1失点目。

ボールがGK西川とDF内田の間に入った時。
GK西川は早い段階で内田に切れ!と声と手の動きで指示した。
切れ!というのはボールを外に出せということだ。
この早い段階でというのは、一般的に見ると直前に見せるのだが3歩前ぐらいに出しているので選手たちの判断としてはかなり早い段階といえる。
しかし、内田はこの西川の指示通りにピッチ外に出すのではなく、GKにキャッチしてもらうためにコースを詰めることを選んだ。
ディフェンスとキーパーの位置を把握し、ディフェンダーは相手が入り込むスペースや蹴るコースを身体で防がなくてはいけない。
しかし、内田はここで「一歩」入る位置を間違えた。
西川にキャッチしてほしいならばここでもう一歩相手が進みたい方向に身体を入れて、相手が侵入できないように身体を入れるべきだった。
しかし、その「一歩」が足りなかったために相手に入り込む空間を生ませてしまい、失点に繋がってしまった。

2失点目。

ショートコーナーではじめからトリックプレーをしようとしていたかはわからないが、コーナーのボールを受けた選手に対し、DF吉田はしっかりとコースを消し切っていたので相手がどんなシュートを打っても入らないという位置にいた。
シュートコースを完全に消していたので、良いディフェンスだった。
その後、出されたボールに対し対応が遅れたのは山口蛍。
この場面で約2歩の遅れがあり、相手選手とのスペース、距離感が生まれてしまったがためにシュートを打たせてしまったのだ。
シュートを打つにはそれなりのスペースが必要であり、相手選手との距離感をしっかりとキープしないことには守れない。
相手選手との距離感であのシュートを打たせてしまった。コースを消す以前の問題だった。

3失点目。

これも「一歩」の差が生んでしまった失点となってしまった。
山口に当たってコースが変わってしまい失点となってしまった場面。
このスペースを与えてしまうことでGKの位置を観る余裕を与えてしまったこと、そしてその位置からでも好き勝手打たれることになるのだ。
その結果。足を出すだけに終わり、それが当たってしまい失点。
あの時「一歩」を詰めていれば足に当たるのではなく身体でシュートを防ぐことができた。
せめて滑っていれば、足でもブロックできたかもしれない。しかし、あの時「一歩」の遅れによって足を中途半端に出すというプレーになってしまい、その結果当たり西川の判断できない場所へとボールが吸い込まれた。

失点だけの部分をあげたが、それでも試合中のすべての場面において「一歩」の遅れが目立った。
特にボランチの部分でその遅れが目立った。

一歩が遅いのではなく、「甘さ」がこういった現象に繋がったのではないのかと想定する。
あと一歩寄せることができれば防げた失点なのだ。すべて。
逆にいうとどんなに守れていても、たった一歩のこの違いが命取りとなるのだ。

昨日は3失点を喫した。
しかし、ディフェンスが崩されたわけではない。
ディフェンスは組織的に守れていたのだ。
すべては一歩の寄せの甘さが生んだ失点だった。


その一歩。ザンビアでも突いてきた一歩を世界的にみても最速かもしれないコロンビア、そして個人技と身体能力を持ったコートジボワール、守備的だからこそカウンターを常に狙っているギリシャが見逃すとは思えない。
この一歩が今の日本との世界との「差」だと浮彫にしてしまった。


●大久保は途中から起用という武器

大久保のプレーをみて頭から使ってくれというサッカーファンも多いがあえて、大久保はやはり途中から使うべきカードだろう。
それは90分を使って大久保を攻略されてしまうのを避けるためだ。
あれだけ途中から出ても100%の状態で試合をかき回すことができるのがわかったからこそ、90分で攻略されてしまうのではなく、後半からや後半途中から使うのがベストであろう。
相手のディフェンスが大久保に慣れてしまうのを避けるためだ。
前半は柿谷が裏へ裏へと走ることが理想であり、裏を取ることで相手のディフェンスを下げることができる。
その結果、日本代表は高くラインを押し上げることができるのだ。

日本のサッカーとは、パスをつなげて組織的に崩すサッカー。
しかし、昨日の得点は

1得点目 PK

2得点目 香川のセンタリングがそのままゴール

3得点目 森重の個人技が生んだゴール

4得点目 青山の絶妙なロングボールからの大久保の個人技と素晴らしい体幹でのゴール

ひとつも相手を崩して得た得点は、ない。

日本のやりたいサッカーができなかったのだ。

もちろんどんなサッカーであっても得点ができれば問題はなく、勝てば良い。
しかし、ザッケローニ監督がやりたいサッカー、そしてこのチームが4年間かけて追い続けて作ってきたチームはこういったサッカーをするチームではない。

まず前半はディフェンスラインがかなり下がっていた。
そのため、前線の岡崎や香川もかなり下がった位置にいなくてはならなかった。
それはなぜか。
キーパーとディフェンスの距離の間に入られたくなかったからだ。
日本は逆に裏を突かれることへのリスク回避のためにディフェンスラインが下がってしまっていた。
それでは日本のサッカーはできない。

日本のサッカーは高い位置でボールを奪い、ディフェンスも高く保ってパスで崩していくサッカーだ。
しかし、昨日の試合ではほとんどの場面でダイレクトでのパスもなく、ザンビアがエンジン全開な前半はディフェンスラインが下がってしまった。
そして柿谷が思うように裏に抜けられず、相手ディフェンダーの前でボールを受ける機会が多かったたけ、裏に抜けるプレーは少なく相手が高くラインを保ってしまった。

当然、W杯でもそのような状況になることも十分にありえる。
そういった意味では想定パターンその1としての調整はできたかもしれない。
しかし、それを攻略することなく終わってしまったのだ。

崩して得た得点はない 4得点
崩されて失点したわけではない 3失点

これが、日本代表の最後の調整試合の結果だ。


これは勝つべき試合ではなかった。
そういった指揮官の言葉が最大の良い点かもしれない。

この結果でも良いとする監督ならば、日本は3戦全敗であろう。

この結果を経て、見つかった課題がとても大きく問題であること、そしてそれを徹底的に修正すること。
これではW杯が戦えないと受け止めたこと。
それが一番の大きな「前進」かもしれない。


そしてその一歩の甘さを痛感した選手たち。
そこから生まれる危機感とレギュラー争い。

山口蛍は一歩の甘さから2失点に絡んだことで、世界を知りその一歩を詰めなければこうなるというリスクを理解しプレーしてきた長谷部がいいと思われるかもしれない。
一歩の遅さ、そして攻撃でも光らなかった遠藤は、一本の絶妙なパスを出し体力的にも上な青山を出すべきという判断になるかもしれない。
大久保の存在の大きさ、そしてとんでもないゴールを見せられ、思うように裏でボールを受けることも相手のディフェンスを引き連れてスペースを作ることができなかった柿谷もこのままで終わるか!と思っていることだろう。
ザッケローニジャパンではいなくてはいけない存在と言われる今野も東京でコンビを組んだ森重の守備の安定と攻撃力を痛感し、本番は森重になるかもしれないと思っているかもしれない。
3失点をしたものの、キーパーの判断やミスからの失点ではない上でディフェンスは崩れることがなかっただけにキックという世界的な武器を持つ西川に川島だって闘志を燃やしているはずだ。

この選手が絶対なんてことはない。

壁にぶつかればぶつかるほどに乗り越え、強くなるはずだ。

世界と戦うことで、自分も「世界」のプレーヤーになり得る可能性を23名全員が持っているのだ。

 

そういう争いが。
選手たちを向上させ、より確実でミスのない選手へと成長させる。
その期間は4年間かけなくても1日でも感じることはあるはずだ。


日本代表は決戦の地 ブラジルについに足を踏み入れた。

いよいよ。

W杯がはじまるのだ。

 


日本の5回目の挑戦まであと 1週間。

 

 

 

 

 

 

 

 

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