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リオ五輪アジア最終予選 U-23アジア選手権 日本vsタイ 「関根でなく、矢島豊川を選出した理由」

2016/01/18 20:26配信

武蔵

カテゴリ:コラム

リオ五輪アジア地区最終予選となる

U-23アジア選手権が行われています。

日本はグループリーグ第2戦のタイ戦を戦いました。

日本はこの試合に勝つと、GL突破や1位通過まで決まる

可能性があるという重要な試合ではありました。

しかし、本番はまだ先であること

また、中2日が続くことも考慮され

初戦の北朝鮮戦の先発からは6人の入れ替えが行われました。

そしてその6人の中に、この日のキーマンとなった

矢島慎也、豊川雄太が含まれていました。

そして、彼らに課せられた役割が

手倉森ジャパンの基本的な戦術を示しています。

タイの「宿命的」な試合運びとシステムの穴

なぜ彼らが、この試合のキーマンとなったかというと

タイの試合運びに1つの答えがあります。


タイは433というフォーメーションを採りますが

格上である日本相手には、守備の時間が長くなり

4141という並びの時間が、より多くありました。

ただ、バイタルエリアをアンカー1枚で担う部分が大きいこの並びは

繊細な運用が必要とされます。

ゾーンディフェンス的な守備の仕方

整備されたボールマーキングとカバーリングのシステムが肝要となります。

しかし、タイにはそこまで洗練されたシステムが

有るようには思えませんでした。

ではなぜこの並びを採用したのでしょうか。

それは、タイを始めとする東南アジアの各代表にとっては

宿命的とも言える不利を理由とする面が大きいでしょう。

つまり、サイズの揃わないチームが引いてブロックを組んでも

それにより得られる利益が、他の(地域の)国々よりも少ない

ということが言えます。

4141は、前に人数を掛けた並びであることから

いわゆる前からのプレスを仕掛けやすく

タイも例に漏れず、積極的に前に出てきました。


そうなると、ゾーンディフェンスのあまり浸透していない

Jリーグで見られるような、教科書通りの攻撃を展開することになり

そこで効果を発揮したのが、この2人であったということです。

手倉森監督がSHに求めること

3センターを相手にした時の教科書通りの攻めとは

やはり、アンカー脇のスペースです。

しっかりとした守備システムのあるチームでは

ボールを動かして相手守備者を動かさなければ

なかなかスペースは得られないのですが

この日のタイにそこまでのシステムはありませんでした。


日本の矢島、豊川の両SHは日本のビルドアップ時

初めはサイドに位置します。

そして、矢島であれば右、豊川であれば左の

CB、またはボランチがボールを持った際には

相手アンカー脇に出てきます。

これにより、味方ボールホルダーに縦パスのコースを作り

味方SBにはオーバーラップのスペースを作ります。

矢島と豊川はその試合において

味方に選択肢を増やすという活躍をしていました。

手倉森監督のこのチームにおいては

このシステムが基本的な攻撃システムなのでしょう。

初戦の北朝鮮戦でも、このシステムを垣間見ることはできます。


ただ、北朝鮮が442のフォーメーションを採ったことで

得られるスペースは少なかったということがあり

また特性上、FWの久保裕也にその役割が与えられた部分が大きかったこと。

更には、北朝鮮戦ではその役割を与えられた南野拓実が

注文通りに中寄りに位置取るものの、ゴールへの意識が強すぎるのか

タイミングの良いポジショニングができなかったことが

初戦で日本の戦術が機能しなかった理由の大きな部分と言えるでしょう。


加えて言えば、初戦は精彩を欠いた大島僚太も

バイタルエリアの受け手となるSHとの息が合わなかったことが

得意の縦パス、その精度を発揮できなかった要因と言えます。

この日は、タイ側の事情もありましたが

矢島と豊川は、手倉森監督の求める役割を

良くこなしていたと言えます。

今後は、今日のタイよりも高いレベルのチーム相手に

また、よりバイタルエリアに人数を揃えるチーム相手に

戦術を機能させることができるかどうか。

そこが問われることになりそうです。

この先に控える大事な試合。

そこでは、能力の高いエース・南野がこの役割で機能するのか

または、より戦術的な矢島や豊川が起用されるのか

手倉森監督もまた、矢島豊川両選手によって

選択肢を増やすことができた人物、と言えるでしょう。

「個」の関根ではない「戦術的」という選択肢

タイ戦は、手倉森ジャパンの攻撃の戦術を見ることができた試合です。

結果を出せないでいる南野に代わり

存在感を発揮している久保も含めて

今日の戦術を磨き上げていくことが

このチームのリオ五輪への道筋と言えるでしょう。

また、一部で物議を醸した選手選考に対しても

答えを出した一戦となったと思います。

特に、ドリブル突破という強烈な「個」を持つ関根貴大の落選は

一部サッカーライターなどが取り上げ、ちょっとした話題となりました。

しかし、関根や同じく落選となった前田直輝のような

サイドに張り、足下でボールを受け

ドリブルを開始するといったドリブラーは

このチーム戦術においては、なかなか使い辛いものがあります。

また、CWCでのケガにより選考外となった野津田岳人は

体が強く、中寄りの位置でプレーができ

左足の強烈なシュートもあることから

このチームにおいては、相当に序列が高かったのではないかと思います。

チームの中には様々な特性、「個」を持つ選手が必要です。

しかし少なくとも、この戦術において生きる「個」とは

例えば野津田のフィジカルの強さであり

関根のような1対1のドリブル突破での強さではない。

そういった判断が下されたのでしょう。

基本となる戦術が機能した日本チームは

早々に1位通過を決めるという理想的な展開で

決勝トーナメントへと駒を進めました。

また、試合内容も初戦よりも上積みがあったと言えます。

手倉森監督の話す

「試合ごとに成長しつつ、五輪切符を獲る」

という言葉どおりに進んでいる

そう実感できるタイ戦であったと言えるでしょう。

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