リオ五輪アジア最終予選 U-23アジア選手権 日本vs北朝鮮 「五分の勝利をもって上となす」
2016/01/14 21:21配信
カテゴリ:コラム
2016年の大河ドラマ・真田丸は上々のスタートを切ったそうです。
実力派キャストを揃えたことで、骨太なストーリーが期待されており
まさしく、大河の流れを連想させるような
雄大なドラマが作られることを期待したいところです。
その真田丸で、早速の存在感を出していたのが
主人公の父親である、草刈正雄さん演じる真田昌幸です。
物語中、早くも先が見えてきた武田家にとって最後の砦とも言えた
この日本の戦国時代きっての戦術家が
青年時代に薫陶を受け、多大な影響を受けたのが武田信玄です。
彼の残した言葉は、現代でも様々な分野において
活用できる、為になるものが多いと感じます。
リオ五輪の予選であるU-23アジア選手権が開幕しました。
3位までに与えられる出場権を懸け
日本はグループリーグの初戦である北朝鮮戦に挑み
1‐0で勝利、白星発進をしました。
その内容と言えば、まさに薄氷の勝利と言えるもので
最早、その氷は割れてしまっているのではないか
と言いたくなるような内容での勝利でした。
ただ、あくまで目標はリオ五輪です。
北朝鮮戦は、その予選のグループリーグの初戦にすぎません。
試合内容にしても、コンディションのピーキングにしても
ここで全てを出し切ってしまってはいけません。
そういう意味では、武田信玄の代表的な名言である
「十分の勝利は下、七分で中、五分の勝利をもって上となす」
ということが言える試合だったのではないかと思います。
そのとおり、課題は出ました。
しかし、ただでさえ与えられた時間の少ない世代別代表のこと
公式戦で勝つことがなにより大事と言えます。
では、その課題とはなんだったのでしょうか。
課題①:ボランチのバランス
日本が、おそらくデザインされたセットプレーで
アッサリとフリーを作り出しアッサリと先制しました。
言うまでもなく、有利な状況です。
ただ、そのあとはパワーに優る北朝鮮に押し込まれてしまいました。
ロングボールやサイドからの早めのクロスから繋がれたり
そのこぼれ球からミドルシュートを打たれる場面が散見されました。
なぜかと言うと、ボールの出どころにプレッシャーが掛からないため
北朝鮮は自由にボールを動かす権利を得た格好となっていたからです。
ただ、技術の問題があってか、その権利をどのように行使したかというと
サイドからのアーリークロス、という場面が多かったということです。
ここのところ、日本は守備の決まりごとが
あまり定まっていないのかな、と感じました。
五輪代表の日本といえば、昨今の日本サッカー協会内で
ひとつの重要なキーワードとなっている
「球際」「デュエル」を念頭に置いた守備が計算の内に入っている
そういったチームという印象がありました。
そして、それを支えていたのが
遠藤航と喜田拓也のダブルボランチのバランスです。
この2人は、少なくともボランチでは似た特徴を持つ選手であり
それぞれが、相手ボールに対して前に出て奪う技術と機動力を発揮し
チャレンジとカバーリングが上手くいっていたのが
7月の中米の強豪・コスタリカとの親善試合です。
喜田のケガによる不調もあり、ここに大島僚太が入りましたが
タイプが違った選手であるという以上に
守備の穴を空けてしまっている北朝鮮戦の印象でした。
遠藤との連携が上手くいっていないというのが半分
単純に「出ていく」「埋める」という重要な役割を
理解できていないのではないか、というのが半分
といったような大島のプレーでした。
そこの不安から、大島の本来得意とする
パス回しやボールタッチでもミスが目立つというデキに
なってしまったのではないでしょうか。
グループリーグは中2日続きということで
当然、ターンオーバーも含めてメンバーが検討されるでしょう。
しかし、このポジションはターンオーバーというより
未だに先発争いが繰り広げられることになりそうです。
課題②:南野の役割
その大島は、後半32分で下がりました。
警告を受け、不安の残るプレーであったにもかかわらず
それなりに引っ張った印象を受けました。
大島を引っ張ったというのも
選手交代の枠は3枚と決まっており
そして、大島より先に交代を余儀なくされた選手がいたからです。
南野拓実はこのチームのエースとして不安を残すデキでした。
南野のポジションと役割は右サイドハーフで
所属チームであるザルツブルグでのものと
さほど変わらないのではないかと思いました。
その使い方とは、ポジション中央でのプレーです。
中央でプレーすることにより、味方やゴールとの距離を近くし
得点に直結するプレーをさせるものです。
今までの各年代別代表ではFWとしてのプレーが
多かった南野を生かすための役割と言えるでしょう。
かつてのセレッソ大阪でも
スタートのポジションはサイドながら
攻撃時には頻繁にゴール前に入ってくる動きをして
2013年にはJリーグベストヤングプレーヤーを獲得しています。
しかし、この日の南野は期待されたプレーができませんでした。
というのも、日本は前線に確固たる起点が無く
真ん中でポストプレーを行いたい鈴木武蔵は
その適性が、あまり無いこともあってか
フィジカルの強い北朝鮮の両CB相手に苦戦していました。
つまり、南野が中に入っても
南野に時間とスペースがあまり与えられず
目指すべき、得点に直結するようなプレーができなかったのです。
良い形で攻撃が終われないため、北朝鮮の逆襲が何度も見られました。
その際には、南野の空けたスペースを使われることが多く
「穴」と見られても仕方がない状況でした。
ただ、そこは北朝鮮のアイデアの無さ、パワー一辺倒の攻めは
脅威ではありましたが、それと表裏一体の
技術の無さに救われたシーンもいくつも見ることができました。
また、右サイドバックの室屋成の安定感も光りました。
室屋は、前半はドリブル突破やクロスで存在感を出しましたが
後半は攻撃を自重気味、守備で貢献をしました。
ここもまた激しいポジション争いであるサイドバックですが
右は室屋が頭1つ抜きん出た印象があります。
室屋を崩せず、南野が下がって以降
北朝鮮は、日本の左サイドを狙うようになった印象があります。
南野はチームのエースであり、中心です。
それは疑う余地はありません。
なればこそ、南野が中に入ることで生じる
守備の構造上の問題を整備しなければなりません。
室屋個人の守備力というのも
この先、相手のレベルが上がることは確実であるため
どれだけ計算して良いのか分かりません。
特に右サイドの南野に代表される
組織的な守備の整備が課題と言えるでしょう。
今までの五輪予選、U-19アジア選手権との違いを踏まえて
日本はここ4大会、U-20W杯に出場できていません。
そして、2015年のU-17W杯にも出場できませんでした。
今回のリオ五輪アジア予選のような
一発勝負のノックアウト方式の大会に対する弱さが
出ている格好となっています。
五輪には5大会連続で出場していますが
今回の大会形式には不安があって当然です。
しかし、過去2回のU-19アジア選手権
つまり、この世代選手たちが経験したアジアの戦いにおいては
両方ともグループリーグの初戦で黒星を喫しています。
そんな彼らが、今回は苦しみながらも勝利を得たということは
非常に大きいと言えるのではないでしょうか。
試合後の監督、選手は口々に
「課題が出た」
「今日は良くなかった」
「今日より悪くなるということはない」
と話しました。
課題の出た北朝鮮戦は、まさしく武田信玄のいうところの
五分の勝利と言えるものと考えたいところです。
今までの五輪予選でも、幾多の危機がありました。
しかし、ホーム&アウェイ方式にせよダブルセントラル方式にせよ
少なからずインターバルが存在しました。
しかし今回は出場権を得るまでに、最長でも中3日しか空かない連戦です。
それだけに、早急な課題発見と課題解決が求められます。