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【Jリーグ】 国内重視で戦う Jリーグクラブの問題ある立ち位置 【ACL】

2015/04/08 10:48配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


今季の日本のクラブの代表としてACLに出場しているクラブは、4つ。
今年はとても苦しい戦いが続いている日本勢だが、これは今年が不作といったことではなく日本サッカー全体の大きな問題の一角が浮き彫りとなった形であろう。

このままでは日本サッカーはアジアサッカーの先進国から、後退してしまうかもしれない。

このままでは、まずいのだ。

ACLという大会は日本ではそれほど重要視されていないようにも見える。
Jリーグ中心のこの国内重視体制をまずは、根本から改善することが必要であろう。
このままでは、日本は国内だけで満足することとなり、国際サッカーから取り残されてしまうかもしれない。


●国内重視体制ではACLに挑戦できない

日本のACLはとにかく観客が少ないのが目立つ。
Jリーグで動員する人数よりもACLに動員する観客が少ない現象が起きている。
これは今に始まったことではないのだが、だからこそ問題なのだ。

ACLはアジアの頂点を狙う大会であり、国内クラブでも出場権を持つクラブだけがチャレンジできる場所だ。
前年度の成績が関係し、そこで結果を掴み取ったからこそ出場できるアジアへの挑戦権なのだ。
それを理解はしているものの、クラブもそしてサポーターも本気でアジアの頂点に立つような準備が万全と言えるのであろうか。

まずはクラブマーケティング。
ACLの開催へ向けての集客と、Jリーグのホームゲームの集客においてのホームゲーム開催プロモーションにおいて、どのクラブも違いがあるように感じる。
JリーグのゲームとACLのゲームとでは、あきらかにJリーグのホームゲーム開催に力が入っているのだ。

平日だからお客は来ない。
ACLだからお客が来ない。

と、クラブが諦めてしまっては伸びないのは当たり前である。

平日開催だから。

これはよく聞くクラブ側の言い訳である。
もちろん週末の方が都合も付きやすく、対象となる人数は多くなるであろうが、試合はアジアの頂点に行くための大切な試合だ。
それをクラブが発信し、前面に出さずしてその緊張感は世間には伝わらない。

実際、平日であっても年間140試合以上あるプロ野球の試合では、投げる投手や対戦相手、大事な試合と位置付けられる試合では満員になる試合も数多く存在する。
4万人から6万人規模の球場で、平日でも関係なく集客することができるのだ。

チームの営業努力ではなく、これはその試合がいかに重要か魅力ある試合かというのを観る側が選択して足を運んでいるものであるが、それは長年培った歴史のなせる技であろう。
それは手ぶらで自然発生した歴史や認識ではないはずだ。
球団側からの発信があり、メディアがそれを取り上げ、世間に発信してきたからこそ成り立つ、世間へと根付いた認識であり、注目の1試合になるはずなのだ。

根付いているからこそ、その試合がどれだけ貴重でどれだけ見たいかという試合に位置づけられる。
そう、ACLはまだ日本に浸透していないサッカー文化なのだ。

現在、日本はクラブもサポーターもメディアも「Jリーグ」主体となっている。
そのJリーグで優勝を目指し、優勝の次はACL圏内という目標を設定し、戦っているが、結局ACLを目指しているにも関わらず、次のシーズンが明けると目標はJリーグの成績に重点を置き、ACLの戦いに主軸を置くチームは少ないのだ。
これは矛盾している。
ACLに出場したくて目指したはずの上位が、結果としてACLには重点を置かずに再びリーグに特化する。

Jリーグを捨てて良いとは言わない。
しかし、国内№1になることとアジア№1になること、どちらを目指すのかというところが重要なのだ。

国内№1になることで認知度も増え、お金の流動も多くなり、クラブ的には相乗効果も現時点では大きいのは否めない。
しかし、その図式を作っているのはJリーグクラブたちではないであろうか。

クラブがリーグを重視して戦うことで、そのクラブを観るサポーターにとってもJリーグ重視でクラブ発信習えで戦ってしまうのは仕方ない現象かもしれない。
しかし、アジアの頂点に向けての戦いにも関わらず集客活動も予算的に小さく、発信が少ないのは違和感を持つ。

ACLに出場するだけで赤字になるというほどにACLはお金のかかる大会ではあるであろう。
試合が増える以上、試合開催運営費用も掛かり、当然遠征も多くなる。選手の保有も増やすことが多く人件費もかかる。
だからこそ、集客を増やし注目度を上げていかねばらなず、ACLの価値を上げる必要があるのではないであろうか。

欧州CLに比べると現在ではシステム的にお金の流動も少なく、浸透もしていないが、各国はアジア№1となるために強化に力を入れ、集客にも成功しているのだ。

中国は現在バブルの中にあることもあり、集客人数が増え、サッカーに注目が集まっていることもあり、ACLには4万人以上の観客が集まる。
タイでも1万人以上の集客があり、盛り上がっていることがわかる。

なにかと最近のJリーグはなぜか上からの目線で言い訳が多い。

平日だから入らない
中国はバブルだから
タイも今盛り上がってるみたいだし

それはすべて言い訳に過ぎない。
だからといって日本がいつまでも立ち止まっていていいわけがない。

●アジア諸国は世界を意識したチーム作りをしている

中国はさまざまなスポーツで世界トップクラスの成績を出すスポーツ大国だ。
それは国としての取り組みが大きく文化でもあるが、今まで中国のスポーツ文化にはなかったスポーツにも積極的に力を入れ始めた。

数年前、シンクロナイズドスイミングを強化しようと日本のシンクロ界の名将と言われてきた 井村コーチを中国へと招聘。
その結果、日本は圧倒的な強さを誇るロシアの次に付けていた位置から順位が沈み、中国は日本を越え一気に世界2位の位置を確保した。

中国が本気を出したとき、世界を見据えて動く。
国内で勝つことを目標に動くのではなく、世界を見据えて動くのだ。

中国一のバブルクラブである広州恒大が良い例であろう。
中国国内で勝つためにアジア有数の巨大なクラブを創っているわけではないであろう。
世界的に見ても巨大な施設を持ち、英才教育ができるサッカー機関となっている。
監督にリッピを招へいしたのも、現在のカンナバーロを招へいしたのも国内で勝つためではない。
アジアで、そして世界で勝つためだ。

タイのクラブをまだまだ発展途上であると下に観ているひとも多いと思うが、今タイがサッカーに力を入れ、たくさんのお金が動いているリーグだからこそ外国人を積極的に獲得しレベルの底上げに繋げている。
この現象はJリーグ初期にも似ていて、その動向はもう5年以上前から日本サッカー協会は把握済みだった。
タイは年々力を付けており、ACLでも結果を出せるような力を付けてきている。
同じく大きなお金が動くカタールリーグも欧州から外国人を多く獲得し、国内選手が力を付け、ACL優勝という結果を残したアル・サッドアルアハリのように力を付けてきたクラブも存在する。

巨額なお金が動く場所と、現在は落ち着いてしまった感があるJリーグとでは違いがあるなんていうのは、負け惜しみに過ぎない。
お金がないから負けても仕方ないのであろうか。
それは違う。

当たり前のことであるが、Jリーグクラブはプロサッカークラブ、である。
今一度確認したいが、楽しいだけの「興行」チームではない。
戦うためのサッカークラブなのだ。

ホームゲームで多彩なイベントを開催し、グッズをたくさん並べ、人を笑顔にし、楽しませることもJリーグの良さのひとつだ。
しかし、それによって楽しくてスタジアムに来てもらうという集客のやり方今はシフトしすぎて、サッカーで魅せるという部分や、チーム強化に怠りが見えるのは気のせいであろうか。

キャンプも国内キャンプを行うチームが多く、当たり前のようにJリーグのクラブと練習試合を重ねる。
韓国のクラブは荒いからとリーグ前に対戦するのを避けるクラブも多く存在する。
しかし、逆から考えると、どうであろうか。
韓国や中国のクラブ、そして最近ではタイのクラブや代表チームなどが積極的に日本で合宿を行っている。
それは日本が過ごしやすいからでも治安が良いからでもない。

日本のサッカーを知るために来ているのだ。

国内で強化すると、国内レベルでしか強化ができない。
だからこそ、アジアを知るために日本でキャンプをし、日本のサッカーレベルに触れ、持ち帰り分析し、チームの強化に繋げているのだ。

しかし、日本のクラブはどうであろうか。
国内でキャンプし、国内のクラブと練習試合をこなす。
それでは、国内レベルから向上することもなく、そしてアジアを知ることはできない。
ACLに出場するチームだけでなく、強化をする上でアジアを知ることは重要なことではないだろうか。

Jリーグが一番質の高い一番上のリーグだと思っているのは、日本人だけかもしれない。
そこで一番になったクラブであっても12回のACLで頂点に立ったのは、2度。
韓国のクラブは優勝が4回準優勝が3回、近年急激にサッカーに力を入れた中国も広州恒大が優勝を経験した。
そしてオーストラリアがACLに2012年から参入し昨年ウェスタン・シドニーワンダラーズが優勝。
Jリーグのクラブが最後に優勝したのは2008年のガンバ大阪。それ以降決勝の舞台に日本のクラブは立っていない。


ACLはお金がかかる大会かもしれないが、勝ち上がって№1になることで国内ではなく世界にその名を大きく発信できる。
日本で一番のクラブとアジアで一番になったクラブとでは、世界サッカー界的に評価が大きく違ってくる。
クラブ価値が上がることで、所属するリーグの評価も上がり、世界規模で注目度が変わる。
そうなると世界から選手を獲得することに繋がったり、所属する日本人の評価が上がり獲得の金額にも変化がみられることであろう。
さらに優勝することで出場できるクラブW杯に出場することで、ACLでかかった費用は回収できるほどに大きなお金がクラブに入ることとなり、世界と戦う機会を得ることができる。

ホームタウン活動ももちろん重要であり、人々に楽しんでもらうことに力を入れることも必要だが
アカデミーで育成をしてもトップで選手を育てる強化に力を入れることができず、ひとりひとりのその時に持った能力重視で構成する日本のクラブの今のやり方では
有望な選手たちは世界へと出ていく結果となってしまうであろう。
強化という面で手ごたえをクラブで感じることができなければ、もっと先へと行きたい選手は魅力的な強化を受けられる海外のクラブへと旅立ってしまうのは当然だ。

今、Jリーグは伸び悩んでいる。
しかし、それは本気で強化しようとしていないからではないであろうか。
せっかくアカデミーで力を入れ育成し、世界で戦わせてもその機会がトップで減ってしまうと若い年代で積んだ経験がそこでストップしてしまう。
アカデミー組織が今、力を入れ各クラブアカデミーが積極的に世界へと進んでいるからこそ、ピラミッドの頂点であるトップチームが国内だけを重視するのは矛盾を感じる。

アジアの頂点に日本が立つためのプライドと、挑戦がほしい。
もう言い訳はいらないのだ。

強化の努力がないことには、日本代表だって強くならない。
もちろん代表も今国内に留まりすぎという問題もあり、国外合宿が減ったからこその問題点も浮き彫りとなっている。

クラブマーケティング、クラブでのACLの位置も含め今、アジアに遅れを取り始めている日本。

このままでは
アジアの雄でいることは、できない。

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