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【ジュビロ磐田】 名波浩監督就任 黄金時代の選手たちが創るジュビロ磐田のこれから 【J2】

2014/09/25 19:31配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:ニュース

 

現在のジュビロ磐田はとても苦しい状況といってよいだろう。
昨年まさかのJ2降格となった悪夢。
新たなスタートを切ったはずのジュビロ磐田は今まだ長いトンネルの中にいる。

23日に行われた水戸戦では、磐田が引き分け以下で、湘南が引き分け以上の場合は湘南のJ1昇格が決まってしまうという試合だった。
優勝を目指し、J1へ一年での復帰を最低目標に掲げたジュビロ磐田は今、自動昇格圏の位置にもいない。
そんな中で首位の位置を走り続ける湘南に、少しでも追いつきたいはずの試合だったが、結果的にまさかの4失点で敗戦。
湘南ベルマーレの昇格の壁になることもできず、昇格の一席をあっさりと渡してしまう形となった。

現在勝ち点56。
首位を走る湘南ベルマーレとは勝ち点が28も離れてしまっている。
2位の松本山雅にも8離されておりJ2が甘くない場所だということをシーズンを持って思い知らされている形だ。

特に失点の数が多い。
総得点数56に対し、失点は44もある。
湘南の失点数はたった18というのは偉業だが、2位の松本で27ということを考えると、かなり多い失点だ。
ジュビロより下に位置しているものの他クラブの方が失点が少ないというチームがたくさんある。

現在のジュビロは強い時代のジュビロを見ることができない。
黄金時代のジュビロ磐田とは違う。今のジュビロは今のジュビロという人も多いが、黄金期をみてジュビロを知りジュビロを好きになった人も多いはずで、それを切って離すことはできない。
しかし、今あの頃のジュビロを重ねてみるのではなく、再建へ向けて大きくシフトしなくてはならない時期に来ているのは確かだ。

●大きなテコ入れなるか

ついに名波浩がジュビロ磐田の監督に就任することとなった。

名波浩といえば今の若者にとってはサッカーご意見番のように映るかもしれないが、Jリーグが生んだスーパースターの一人だ。
日本がはじめて出場したW杯であるフランスW杯に 背番号10を背負って出場し、黄金期のジュビロではN-BOXという名波中心の戦術が組まれたほどに名波浩の存在は絶対的だった。
日本を代表するレフティである。

名波浩がS級ライセンスを取得したのは昨年のこと。
いつかはジュビロの監督に…そう思っていたことだろう。
それは名波自身も、そしてサポーターも期待し、そのいつかが現実になるところまであと一歩というところまで来ていることに気づいていた。

ジュビロ磐田がJ1に昇格したのは、当時J2は存在なくJFLだった頃の時代。
オリジナル10にはじめて昇格という形で参入したのが、現在の湘南ベルマーレであるベルマーレ平塚とジュビロ磐田だった。
当時2部であっても中山雅史や吉田光範といった日本代表を有していたジュビロ磐田は存在が大きく、Jリーグに昇格してからもその存在感はとても大きなものだった。
その中、ジュビロ磐田に入団した名波浩は当時から有名な天才レフティと大卒から騒がれていた。
すぐに頭角を現しチームの軸になると、日本代表で活躍するのもあっという間だった。

私の中では日本代表の10の背中は一番名波浩が印象に残るほどに、日本代表を引っ張ってきた素晴らしい選手だった。

選手の時にどんなに輝いていても、監督として輝けるかどうかは別とよくいうが、名波浩の場合は監督気質といってよいだろう。
解説を聞いていてもわかるように非常に頭脳派でありつつ、天性の能力を持っているだけに戦術眼が素晴らしい。そして分析能力が高い。
たくさんのサッカー選手と関わってきたが、名波浩のようなタイプの選手は天性的に高い能力を持ちながら、さまざまな状況で一瞬で判断することができ、とても広い視野を持ったサッカー人だ。

プレーヤーとしても十分なスターだったが、監督になるときっと能力を発揮するだろうと期待できる人であることは間違いない。

名波はまだコーチの経験も監督の経験もないが、説得力のあるサッカーを観る目を持ち合わせ、現在プレーする選手たちが憧れを持って観ていただろう選手だったこともあり影響力も大きいことだろう。

 


しかし、だ。

 


ジュビロ磐田としてはクラブの功労者である名波浩をなぜこのタイミングで監督に就任させるのかという疑問は感じる。
功労者であり黄金時代を創った一人である名波はジュビロ磐田にとって特別な人間だからこそ、こんな苦しい状況で突然就任させるのは厳しい状況に置くことと理解しているはずだ。
あたためていた大事な一手をここで使うというのは、本当に先がない状況でなんとかしたいからなのか…。

複数年を提示したとされているが、ここからジュビロ再建を向けてきっと普段からジュビロの試合を全試合観て分析済みの名波がどう指揮を執るのか注目される。


●黄金期が支えるジュビロ…

現在の強化部長は昨年引退した服部年宏であり、コーチには鈴木秀人がいる。
そして監督に名波浩と黄金期を創った元選手たちが現場を創る役割にまわる。

この人事はもちろん期待はできるが、しかし不安とも紙一重の状況ではないだろうか。

強化部長を務める服部は、選手からすぐに強化部長へと転身した。
強化の仕事を一度もまだ務めたことがない元選手が、強化部長に就任するのは異例だといってよいだろう。
選手は選手を見る目があるのも確かで、服部は現役を昨年まで続けていただけに現在の選手の動向や現在の選手たちの質を相手にしてきただけにわかることもあるだろう。
しかし、選手としてピッチに立っている状況と、強化部長という立場での必要な選手を探すというのは難しいことなのではないだろうか。

鈴木秀人がそのままコーチとして入閣したまま、名波浩が指揮を執るとするならば、黄金期の厳しさがある二人だからこそなぁなぁになることもなく厳しく取り組むことだろう。
お互いをわかっているからこそお互いに厳しく在れるのも良い効果を生むかもしれない。
しかし、指導者としてと選手としてがイコールで結びつくかは未知数だ。

黄金期はジュビロにとって残した大きな一時代であり、その時のメンバーが集まってまた強いジュビロを創り上げるとすれば、それはクラブにとって最高の形となる。
しかし、これは大きな賭けでもあるだろう。
まだ結果も経験もない元選手たちが責任あるポジションのつくことは、今後のクラブを左右する未来への賭けに近いものがある。

輝かしい黄金期があったからこそ、今のジュビロ磐田の現状にどうしてという強い疑問を抱く人たちも多い。
その中で黄金期を知る人間が再び強いジュビロを創るというのは よい試みと映るのだろうか。

ジュビロにとって大切な人物たちであるからこそ、救うならここと白矢を立てたのかもしれないが、黄金期にすがるような形なら難しい。
残り9試合で残る勝ち点は27。
残り試合はあと2か月の間に存在し、それだけの期間で結果を残すというのは、どんな監督であっても時間が足りないだろう。
黄金時代の大切な元選手たちに苦しんでもらう役となってもらうことは、クラブとして引導を渡すタイミングとしては良いタイミングではなかったはずだ。

ジュビロに魂があるからこそ、今のこの苦しい状況を引き受けよう・自分の手でどうにかしたいと思ったというのも強いだろう。
きっと思うようにいかないジュビロ磐田を観ていて、名波浩はどうにかできないものかといろんな想いと思考を持っていたはずだ。

J2でのシーズンがはじまる時。
もしかするとジュビロは名波を監督に就任させるのでは?という噂があった。きっと本人もその気があったはずだ。
しかし、磐田フロントが選択したのはシャムスカというJリーグ経験のある外国人監督だった。
J2を戦う上で経験ある監督を呼んだのだ。

結果、このような形となり、現在3位。
ジュビロのプランとして自動昇格圏から外れるなんてことは想定していなかったことだろう。
3位といっても圧倒的ではなく、そのすぐ下に位置しているチームが今か今かとジュビロを追い越すチャンスを狙っている。

この状況でプレーオフに入ってしまうのはジュビロにとってはあまりに不利な状況となってしまう。
3位以内を目指して他のチームは上を向いて戦っているが、ジュビロ磐田はもっと上を目指している上で3位にとどまっている状況だからだ。

他のチームとのモチベーションの差がどうしても出てしまう中で、トーナメント方式のプレーオフを戦うには気力気迫の部分も大きく関係するため、試合を決定づけられるようなモチベーションで戦うのは今の段階では難しいだろう。

もちろんそれでもその結果となり、プレーオフを戦うということになったときにチームの総力をあげて戦えるようなチームでなければならない。
現在3位の位置にいる磐田は、すぐ下に位置するチームとも勝ち点差がないため入れ替わることも想定しながら6位以内を目指すということにシフトしなければならないことになるかもしれない。

そういったさまざまなことを想定して、戦うチームとするために影響力が強く理論派でわかりやすく浸透させることのできる名波氏が今就任することで、良い化学反応を起こせるかもしれない。
もう少し早く動いても良かったのではと思ってしまうのも否めないが、それでも残された時間を有効に使うための大事な大事な一手だ。

3位という位置にいながらその位置に納得ができないのは、J1のクラブであった意地とジュビロ磐田という大きな看板があるから。
他のクラブは3位に位置していたらここまで焦ってはいない。
しかし、ジュビロ磐田は3位の位置にはいてはいけないのだ。

全試合に勝利し、湘南が全部に負けたとしても優勝することはできない。
それはもう決まってしまった現実だ。
目指していたひとつの目標に手が届かなかったという厳しい現実をすでに1つ結果として生んでしまった。

しかし、昇格だけは絶対に逃すわけにはいかないであろう。

J1の順位表をみて、いまだにジュビロ磐田という名前がないことに違和感を覚えることがある。
それほどジュビロ磐田はJ1の場において大きな存在だったはずだ。

黄金期を知っている人間ならば、どうしてもあのジュビロ磐田を求めてしまう。
が、今はとにかくJ1に復帰するジュビロ磐田がみたい。


名波浩 初指揮はジュビロ磐田で―。
これは偶然ではなく必然だったと、後から名波を語る上で そしてジュビロを語る上で
そう言えるような結果になりますように。

ジュビロ磐田の再建は、レジェンド名波浩の手に託された―。

名波を支え応援してきたサポーターたちもきっとまた力となり、大きな声援で応えてくれることだろう。

だからこそ、これ以上苦しい想いはさせたくないはずだ。


ジュビロ磐田の監督として名波浩が立つ。
そう考えただけで鳥肌が立ったものだ。

それが今、現実となる。


ジュビロ磐田に残された今シーズンは残り9試合。
総力を挙げて一人でも勝ち点を積み重ねる熱き全力の戦いをまずはみせてほしいと願う。

 


 

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