【FC町田ゼルビア】 上位に位置するFC町田ゼルビア 旋風を超えたシンプルな勝利への確立 【J2】
2016/05/31 22:32配信
カテゴリ:コラム
現在J2は15試合を消化し(一部、平成28年熊本地震の影響により14試合、ロアッソ熊本は10試合消化)、シーズンの1/3ほどを消化した。
ここまでのJ2を語る上で欠かせない躍動をみせているのは、J3から今季昇格しJ2で4年ぶりとなるシーズンを戦っているFC町田ゼルビアだ。
現在2位、勝ち点は28。
15試合を消化しているFC町田ゼルビアは、8勝4分3敗で2位の位置をマークしている。
J2の順位を計るにあたりひとつの基準となるプレーオフ圏内を指す上位という位置に5節に上がると、それから順位をさらに上げ昇格圏内と言われる位置にいる。
一時は首位に立つこともあるなど、昇格してきてからすぐのチームの旋風という認識を越え、確立された強さのあるチームとして注目されるようになってきたのではないであろうか。
これまでのFC町田ゼルビアの戦いを振り返りたい。
●チームの特徴である守備力 敗戦となった試合に共通しているものとは
15試合を消化し、現在負けた試合は3試合。
J2開幕戦となった初戦、ホームで迎えたセレッソ大阪戦。
J2最強と言われるセレッソ大阪との初戦となったことはJ2を戦う上でひとつの物差しとなったこの試合だが、FC町田ゼルビアが試合を握った時間帯が長くあった。
結果的に後半26分、セットプレーから一発でやられてしまうという試合内容とは違った結果となってしまったが、試合を握っていても敗戦となったという厳しい現実と共に、
J2のチームの中でも圧倒的に質の高い選手が並ぶセレッソ大阪相手であっても、町田が固めているスタイルが間違いではなく相手の脅威となる部分もあると手ごたえが自信に繋がった試合でもあった。
この一戦によって得た物差しが、大きかった。
初戦でセレッソ大阪という高い基準と戦えたことは大きなプラスとなり、その後にいきている。
戦いを重ねる事に対戦のチームへのスカウティング材料を与えてしまうことになるものの それでも町田のサッカーは戦いを増す事に手ごたえを確信と捉えることができているのではないであろうか。
セレッソ大阪との一戦は、良い内容であっても敗戦となった試合から1つの勝利を掴むまでに足りなかったものという課題を突き付けられ、その後の目標となった。
FC町田ゼルビアの今季初黒星だった。
続く、京都戦もホームで迎え、得点ができないまま後半失点してしまう。
相手に先制点を決められたのはセレッソ大阪と同じく後半26分のことだった。
しかし、町田は試合終了間際の後半48分にチーム今季初ゴールとなる中島のゴールが決まり、同点。
先制されても、負けなかった。
3節では同じくJ3から昇格したレノファ山口と対戦。
ここでは町田の思い描く展開で進むことができた試合となった。
前半40分に先制し、その後後半5分にも追加点を奪うことに成功。
そのまま2-0で勝利となり、今季初勝利を飾った。
敗戦、引き分け、そして勝利。
開幕から3戦でひとつひとつ段階を踏んだFC町田ゼルビアは、ここからFC町田ゼルビアのサッカーをJ2で確立させる。
その後FC町田ゼルビアは5連勝を経て、11戦負け無しを続けた。
その後は2連敗と今季初めての連敗を経験するが、これまで負けた3試合のスコアはすべて0-1。
自分たちの得点が奪えなかった試合で負けていることがわかる。
これまでスコアレスドローの試合はなく、引き分けの試合でも得点を獲ってきた。
敗戦に共通していること。それはすべて0-0で迎えた後半の失点であることだ。
FC町田ゼルビアは前半に得点を奪い、早い時間帯に得点を奪うことでその後守備に重点を置く。
これまでの失点は8とリーグ2番目の失点の少ないチームであることからもわかるように、しっかりと守備を敷いた上で得点し、
得点をした後は、守備リスクがどうしても生まれてしまう攻撃に無理に出るのではなく、守備を敷いてしっかり守りきるサッカーを展開する。
15試合中、無失点だった試合は7試合。そのすべてで勝利している。
岡山に2失点したが追いつきドローとなった試合は今季初の2失点を喫したものの、複数失点を喫したのはその試合のみで、これまで1失点以上取られた試合はこの岡山の1試合しかない。
得点の特徴からも、わかることがある。
FC町田ゼルビアは前半に得点をすることが多い。前半の早い時間帯に得点をマークするサッカーをしていることがわかる。
2トップに位置するFW中島裕希、鈴木孝司がこれまでのトーム総得点数17得点中、13得点を重ねている。
残りの4得点は右SHの鈴木崇文、重松健太郎がマークしている。
鈴木はセットプレーという武器を持ち直接FKを決めており、鈴木崇・重松と右SHでどちらかが出場している時に得点をマークしている。
どのチームも対戦するにあたり、このことを把握しているであろうが、それでも町田の得点を止められるにまだ至っていないといって良いであろう。
長いリーグはまだ折り返してもいない状況であり、これから町田はさらに分析を受けるであろうチームとなり、前半の得点機会に注意することと現在得点を重ねている選手たちにより厳しいチェックをされることになるのは必至だ。
現在2位という位置にいるFC町田ゼルビアを警戒するチームが増えたことで、より今後の戦いは厳しくなることが予想されるが、FC町田ゼルビアはひとつひとつの試合を前に常に全力で出来る限りの準備をすることに余念がない。
長崎や金沢といったJ2昇格一年目に旋風を起こしてきたという近年の結果もあるが、FC町田ゼルビアはFC町田ゼルビア「らしく」戦えていることが、今の結果に繋がっている。
●この先を切り開くチカラ
昨年のJ2を振り返ると思い出されるのはツエーゲン金沢の旋風だ。
ツエーゲン金沢もJ2において旋風を起こしたことで、チームの状況を大きく動かした。
J3から昇格しすぐに結果を重ね上位に位置したことで地域に強くアピールすることとなり、J1ライセンス取得に向け動き出し、結果的にJ1ライセンスを取得できるほどの設備整備等が行われた。
J1へと昇格するには、J1ライセンスが必要となる。
その壁を乗り越えなくては、結果を得てもJ1への昇格をすることはできない。
現在、FC町田ゼルビアもJ1昇格資格は難しい状況だ。
中島裕希が「自分たちが良い順位を残すことで今の環境を変えていきたいという思いもある」と話したように、
結果を掴むことができている今だからこそ、夢を現実に変えることができるかもしれない。
金沢はピッチの整備とクラブハウスを持っていないことでJ1ライセンスが難しいといされていた中、チームの旋風を受け建設計画が決まり多くの人々の寄付金や協力などによって実現した。
サポーターだけでなく地域の人たちの関心を引く結果を残したことで、チームはJ1に行くことが可能である条件を満たせるクラブへと進化をしたのだ。
FC町田ゼルビアにとってJ1への一番の壁はスタジアム問題となる。
J1ライセンスにてホームスタジアムは15000人以上の収容が必要とされているが、現在ホームスタジアムとして使用している町田市立陸上競技場・通称野津田の収容人数は10600人。
J1ライセンスの壁を乗り越えるにはスタジアムの改修が必要となるが、Jリーグ参入をするにあたりすでに一度スタジアムの問題に直面した町田は、改修工事を前倒しする形ではじめて昇格した年の2012年に大規模なスタジアムの改修を終えたばかりなのだ。
それ故に、再びスタジアムの改修となると乗り越えなくてはならない厳しい現実が立ちはだかる。
チームが戦いを持ってJ1への昇格を現実的にすることで環境を変えるような力となるかもしれない。
現在FC町田ゼルビアが練習している小野路グラウンドも、J1ライセンスの基準には満たしていない。
人工芝のグランドであり、FC町田ゼルビアが優先的にスケジュールを入れられるという町田市が貸し出してくれている施設だ。
グラウンドに併設されている建物をクラブハウスとして使用しているが、FC町田ゼルビア専用のクラブハウスではない。
チームがJ1という道を現実的とする順位に位置することや、J2に定着することによって、今後のチームを取り巻く環境を変える力になる可能性を持っている。
FC町田ゼルビアを指揮する相馬直樹監督や選手たちは、常に勝利を重ねても結果を得ても首位に立っても、浮かれることなく、我々はこれからが勝負と口にしてきた。
自分たちが勝っていることが当たり前ではないと、常にチャレンジャーである立場を忘れない。
これから分析をされる立場になることで戦いが難しくなることを覚悟しながら、自分たちができる最大限を出し尽くしひとつひとつを戦っている。
シーズンは1/3を消化し2位の位置に付けているが、この結果に座るつもりはない。
慢心となったときには命取りになることをチーム全員が知っている。
結果を出すことで、一人でも多くの人々にFC町田ゼルビアを観に来てもらいたい、その気持ちは揺るぎなく持ち続けている。
町田のシンボルになりたい。
その目標に、変わりはない。
町田ゼルビアのやりたいサッカーは至ってシンプルだ。
得点を奪い守って、勝つ。
旋風だけで終わらせる気持ちはもちろんない。
ここから先も変わらず。
FC町田ゼルビアの「挑戦」は、続く。
(PHOTO by Ⓒ町田ゼルビア)