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CL決勝 マドリード・ダービー 「理屈以上のモノ」

2016/06/03 22:22配信

武蔵

カテゴリ:コラム

欧州サッカーの2015/16シーズンもいよいよクライマックス。

それを飾るのはもちろんチャンピオンズリーグ決勝です。

今年の組み合わせは、レアル・マドリードとアトレティコ・マドリード。

2年ぶりのマドリード・ダービーとなりました。


2年前はレアルが制しましたが

この時には、リーガを制したアトレティコと分け合った感がありました。

しかし今年は、バルセロナがリーガと国王杯を制しており

未だに主要タイトルは無冠である両チームによる

この欧州最高の栄誉を巡る激戦が予想されました。

試合の入り方に成功したレアル

レアルが433だったのは戦前の予想どおりでした。

ただ、アトレティコは442に加え、4141も実装しており

433のレアル対策、また、より攻撃的な姿勢を示す可能性も指摘されていました。


ただ、アトレティコは442で試合に入りました。

そして、シメオネ監督は若干、消極的な姿勢をピッチで表現しました。


アトレティコの代名詞となった、442による猛烈なプレッシングは出ず

レアルのビルドアップには比較的、時間が与えられました。

そうなるとレアルは、自慢の3トップに思い通りのボールを供給し始めます。

最初の決定機はそこから得たセットプレーでしたが

これはGKオブラクのセーブが阻みました。


これに対してアトレティコは前への圧力を強めて対応します。

しかし、レアルは待ってましたとばかりにGKナバスをビルドアップに組み込み


①プレッシングを回避して逆サイドへ展開

②相手の圧力を逆手に取り、相手を縦に間延びさせる


これらに成功します。

その直後に得たセットプレーは、プレッシングを回避したビルドアップのパスが

若干間延びしたライン間に落ちたベイルが受けたファウルによるものでした。

そこからレアルが先制します。


財政規模の違いから、保有できる選手の質に差があることは仕方がないところです。

現実として、出来ることが多いのはレアルだと言うことは否定できません。

ただ、実際に相手の出方を想定し、それに合わせて

幾通りも戦術パターンを組み込むことが出来るのは、指導者の腕に依ります。

ジダン監督は、この欧州最高の舞台で戦える存在であることを

この立ち上がりの10分で示しました。


名将・シメオネの後手の対応と

そして何よりジダン監督の試合前の準備が光った立ち上がりとなりました。

アトレティコのポゼッション、前半と後半の違い

これだけの試合となると、試合の入りは慎重になるケースが多いものです。

しかし、ペースを掴んだとはいえ望外と言える早い時間での先制点を手にしたレアルは

その後、徐々にボールをアトレティコに渡しがちとなりました。

ただ、この時点では、ペースまでは渡していないと言えるものでした。

いわゆる、アトレティコは持たされている状態でした。


レアルは最終ラインを揃えることにこだわらず

アトレティコの2トップ、特にグリーズマンを見るためには

レアルの最終ラインは、ギャップが出来ることも厭いませんでした。


最終ラインを揃えて守ることは、常識の「ように」なっています。

ただ、これはスタンダードであり、利点が大きいというだけで

もちろん、そうせねばならないわけではありません。


ギャップができるということは、最終ラインの裏を衝かれる可能性が高まります。

しかし、アトレティコにはこのレベルで裏を衝けるパスの出し手がいないこと

そして、それでも残る小さな可能性を

レアルがキチンとコントロールすることで芽を摘んでいました。


相手をコントロール出来ているのであれば

例え最終ラインがデコボコになっても怖くはありません。

逆に言えば、最終ラインにギャップが出来ていても

大してピンチになっていないという点で、アトレティコは「持たされていた」と

言うことが出来るのではないでしょうか。



ただ、後半頭からカラスコを投入し4141に変更して以降は

アトレティコの時間となりました。

アトレティコは4141にしたことで

サイドハーフとインサイド、さらにはサイドバックとアンカーが同サイドに集うことで

相手守備陣を真ん中から引っ張り出すことに成功します。


PKを獲得したシーンでは、数的優位を作っています。

4対3という状況を利用し、フリーとなったグリーズマン。

この縦への突破を警戒するためにCBのセルヒオ・ラモスが動かされました。

この時点で、フェルナンド・トーレスとペペの1対1が演出されています。



この要因としては、アトレティコがエネルギーを使ってきたことや

レアルの3トップ、特にクリスティアーノ・ロナウドは

局面に合わせてサイドのスペースを埋めたりはしないことなどが挙げられますが

アトレティコが相手をしっかり崩した場面でした。

安定感を誇り、相手をコントロールしていたレアル守備陣が

この場面では相手にコントロールされてしまいました。

このPKはグリーズマンがバーに当ててしまいますが

この後もアトレティコがペースを握り続けます。

それに対してレアルは、3トップでのカウンターを窺うこととなります。

勝敗を分けたシメオネの決断

この後、レアルは窮地を凌ぎ、劣勢を徐々に盛り返しました。

強力な攻撃陣によるカウンターで相手を走らせ、押し込む場面も増えました。


ここでイスコやルーカス・バスケスを投入し、布陣も433のままで

バランスを保ちながらも、追加点を狙いに行きました。

そして、狙いどおりに決定機も作りました。

しかし、3トップにそれぞれ訪れた機会を生かすことが出来ないでいると

その直後に追い付かれてしまいます。


そこでアトレティコが駆使したのは

パスアンドゴー、ワンタッチでのクロス、ワンタッチでのシュートです。

この場面に関しては、最終ラインのルーカス・バスケスが入ることで

人数は揃っていたレアルを、基本のキを使って崩しました。


ジダン監督は選択を誤ったのでしょうか?

いや、そうではなく、得点を狙いに行き、実際に作った決定機を決めていれば

試合はその時点で終わったはずです。

劣勢を跳ね返したことで追加点の奪取に色気を見せた采配は

間違ったものではなかったと思います。

徐々にセットプレーでのチューニングが合い始めたアトレティコを見て

後ろに人数を掛けて押し込まれるのは得策ではない、というのは見て取れました。


ただ、結果として追い付かれてしまいました。

逃げ切りに失敗してしまいました。

ケガ人もあり、交代枠を全て使い切ってしまっていたレアルは

突如として延長戦を視野に入れなければいけなくなり

まさに窮地に追い込まれました。

そして、まだ交代枠を2つも残していたアトレティコの時間が始まるはずでした。

しかし、ここでの名将シメオネ監督の選択は、442への再変更でした。

442は最もバランスの取れた布陣と言われ

実際に、アトレティコの基本布陣も442です。


同点に追い付いたカップ戦決勝の残り10分を戦うのに選択したのは

優位に立つために駆使した4141ではなく

バランスを重んじた442でした。

これが結果論的には、勝敗を分けることとなります。


シメオネ監督が442を選択した理由としては

後半の最後の方、ベイルやモドリッチは足がつり始め

クリスティアーノ・ロナウドもコンディション不良の影響からか

フィジカルお化けっぷりを発揮できなくなっていました。


こうした惨状のレアルを見て、バランスを崩してでも残り10分で攻め切るより

延長の30分を使ってじっくりと崩していくことを選択したということになります。


アトレティコがバランスを重んじた結果

90分以内で決着が付くことは回避されました。


しかし、決められる時に決めておかないと試合の趨勢が分からなくなってしまいます。

これは理屈ではありません。

理屈を積み上げて、バルセロナやバイエルンを下し

レアル・マドリードを伍してきたシメオネ監督としては

ある意味で当然の選択だったのかもしれません。

ただ、もう一度言いますが結果論的に、誤った選択をしたということになりました。

結論として、アトレティコは延長戦で失速します。

4141に再々変更してボールは持てるのですが、アトレティコも足が止まり始め

有効な攻撃の手段を打ちだすことが出来ませんでした。

そうこうしているうちに、フェリペ・ルイスやコケといった

主力の足がつり始め虎の子の交代枠を消費することとなり

エネルギー面での優位も無くしてしまいました。

アトレティコもまた、消耗が激しかったということでしょう。


当然と言えば当然ですが、いささか拍子抜けしたのは

延長戦の低調な試合ぶりです。

試合を決めるはずのアトレティコは、決められず

レアルに「逃げ切り」を許してしまいました。



あのシメオネ監督ですら、結果的な1つの選択ミスにより

好機を手放してしまうことがあります。

チャンピオンズリーグ決勝の恐ろしさを

見ている側に改めて刻みつけた、そんな試合になったと言えるでしょう。

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