CHANT(チャント) ファジアーノ岡山

【ファジアーノ岡山】 100年先も愛されるクラブへの取り組みと一生懸命が生む一体 【J2】

2014/09/15 11:03配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


リーグ第31節を終え、終盤に向けてラストスパートの時期に突入したJ2は現在混戦といって良い。
圧倒的に勝ち点を積み重ねた湘南の優勝は現実的な形を帯びて見えており突起し、それを追う松本山雅も勝ち点は独立しており2位という場所を確立している。
しかし、それ以下プレーオフ圏内が現在混戦を極めている。

一年でのJ1復帰を最低限の目標としているだろうジュビロ磐田は厳しい戦いが続いており現在3位。勝ち点は53で自動昇格圏に位置する2位松本とは勝ち点が9も離れてしまっている状況にある。
そしてその下には勝ち点52でギラヴァンツ北九州が追っており、次の試合では直接対決となっているため順位が入れ替わる可能性が充分にある。
5位にはファジアーノ岡山がつけており、勝ち点は4位ギラヴァンツ北九州に勝ち点1差の51。次の試合の結果次第では一気に3位という位置も狙えるところにいるのだ。

6位大分からは勝ち点が少し離れるものそれ以下は勝ち点3や4以内に7チームも並びまだプレーオフに進出するクラブがまったく読めない状況だ。

技術や質としてはJ1に劣るものの戦う姿勢やクラブとしての一生懸命さはJ1にはないものを持っているJ2クラブ。
1つ1つの戦いがより緊迫してきたこの時期、J2の戦いには最高のfootballを感じることができる。

その中で、今回はファジアーノ岡山をピックアップしたい。

●死力を尽くして走り切るサッカー

ファジアーノ岡山の宣言が日本サッカー界をザワめかせたのは2010年シーズン前のこと。

ファジアーノ岡山は、選手がピッチに倒れている場合であっても、レフェリーのジャッジがない限りはボールを外に出さずにプレーを続けると宣言した。
相手チームの選手が倒れている場合も含むことで他チームや他チームのサポーターにも理解と協力を求めたのだ。

先日、日本代表監督であるアギーレ監督がJリーグについての印象を言及していた。
Jリーグは選手が倒れ込むと笛に関係なくすぐにボールを止めてボールを外に出し、試合がまた動き出すと相手ボールとして返して拍手が起こる。
これは親善試合なのかと思った、と。

Jリーグは一時期のプレーイングタイムの平均が44分ということもあり、ボールが動いているのが1試合の半分にしか過ぎないというデータもあった。
ボールが動いている時間が少ないと見る側も面白味が欠けてしまうということもあり、問題視された。

プレーイングタイムの増加により、試合内容の内容の向上や見る側の興味の向上が期待できることや、つらい場面や見せ場である得点場面で無駄なシュミレーションによって試合が容易に止まり時間が流れていくことが減ることなどが盛り込まれており、これを取り入れることで当然岡山側も時間が止まることが少なくなるため、フィジカル的に強きを求められることになるが、岡山は最後まで死力を尽くして走り切ると宣言したのだ。

それをすることで一生懸命ボールを追い、勝利を求める姿で試合を観に来てくれた方々に興味をもってもらう。
それがファジアーノ岡山の宣言の覚悟だった。

試合を応援しに来ている人たちは選手たちの魂のこもったプレーから成り立つ試合を観るからこそ、心が熱くなり動かされるものを感じることができる。
試合に選手の演出や演技を観に来るわけではないのだ。
全力でプレーする姿、勝利にこだわる姿を観るからこそ、また次の試合も観に行きたいと思う気持ちに繋げることができるとファジアーノ岡山は掲げた形となった。

●無料招待券を配らない手法

J2の多くのクラブでは無料招待券を配布したり、破格のチケット設定をするなどして集客につなげようとしているところが多い中で、ファジアーノ岡山は無料招待券を配布するというやり方は避けてきた。
無料招待券を導入せず、地道に集客活動を展開し、お金を出してファジアーノの試合を観に行こうという興味を持ってもらうための活動に専念している。

ファジアーノ岡山の平均観客数は現在J2で6位であり、松本・札幌・磐田・千葉・湘南に次いでいる。
平均観客数は8547人(2014.9.15現在)となっており、前年度の今時期との変化はなく安定した集客をしているといって良いだろう。

ファジアーノ岡山の現在の順位と昨年の順位を比べてみても、昨年は10位前後に今時期位置していたことを比べて、現在はプレーオフ圏内の5位という位置にいてもあまり観客変動はない。
これはチームが弱い状態であっても応援してもらえるクラブにと目標を掲げてきた木村社長の結果だろう。

ファジアーノ岡山の集客作戦は地域との密着、そしてきっかけ作りを基本に置いている。
まずは試合があるということを知ってもらうこと。
平日のほぼ毎日、岡山駅や県庁前、市役所、岡山大学などで試合の告知ビラを社長含め全職員総出で配布する。
試合ごとにビラを作成し、デザインにもこだわり作成しインパクトの残るビラに仕上げている。
多いときは2万枚を配布。配布の目標を掲げ、その枚数が配布し終わらないと帰れないなんて日もあるほどだ。

その他、企業スポンサーの朝礼に木村社長が出席し、ファジアーノ岡山のPR、そしてサッカーについてを説く。
観に来てくださいという言葉はあえて使わずに伝えるというこだわりもあるそうだ。

クラブを運営するフロントが動くことで、人が伝えようとしている頑張りを示し、人々に伝えている。
積み重ねがあることで人の足がスタジアムに少しずつ向いていくのを実感した。雨の日に必死にビラ配りをするチームの職員を観て試合に行こうと決めた人が今、毎試合行くようなサポーターとなったという話もある。
熱意が伝えるものがある。だからこそ職員全員が熱意を持ってファジアーノ岡山を支え、PRしているのだ。

積み重ねた結果、岡山は現在熱いサポーターが多くいるチームとして挙げられるほど、サポーターが多く集まるチームとして存在感を示している。
昨年序盤は好調となったものの、それでも最終順位は12位となってしまった昨季。
しかし、今年は違う。
現在も5位、そしてプレーオフ圏内で死力を尽くして戦っているのだ。

●自分に負けない精神力を作るキャンプ

ファジアーノ岡山がシーズン前に行ったキャンプをご存じだろうか。
各クラブシーズン前にキャンプを行うところが多いが、ファジアーノのキャンプは戦術を浸透させたり質を向上させたりするキャンプではない。
自分と戦い、向き合い、そして全員で成し遂げることでチーム力をUPさせることが狙いのキャンプであり、そこにサッカーは存在しない。

まず岡山から選手たちは自転車に乗り大きな荷物を自転車に積んで出発する。
キャンプ先である小豆島に向けて出発するのだ。荷物は選手たちが寝泊りをする用の道具と、自分で食事を作る用の道具などキャンプ道具となっている。

自転車で新岡山港まで走り、そこからフェリーに乗って小豆島に渡る。
そして八十八か所の霊場を巡るというものがキャンプ内容だ。
自転車を持ち、大きな荷物を抱えながら命綱のない状態で崖を一本のロープで渡ったり、雪の積もった山中での野宿もする。
岩場をロッククライミングをして身体を鍛えたり、自炊したりと過酷の中の過酷を体験する。

命の危険をも感じる体験に、生きることの素晴らしさやサッカーができることのありがたさ、自分と向き合い自分に負けない精神力を感じる瞬間などさまざまなものを経験として手に入れる。
それがファジアーノ岡山が 死力を尽くして戦うことのできる理由のひとつとなっている。

人々に応援される立場にあるからこそ、死ぬ気で戦う。
これがファジアーノ岡山なのだ。

●上田康太という革命

今年の岡山はなんといっても大宮から加入した上田康太の存在が大きいだろう。
ゲームメイクをするタイプのボランチである上田が加入したことで、今まで不動のゲームメーカーとして君臨していた千明から上田に移ると岡山は新たなる可能性を次々と打ち出した。
高いゲームメイク能力がある上田は積極的に前線に効果的なパスを供給すると共に、自らも得点を重ねる。
上田康太のボールタッチする回数がとても多く、上田の動きにより前へ向かう岡山のサッカーが確立された。

上田が中心となるチームではあるものの、競争を生んだことや前へ向かう試合運びなどが浸透したことで上田不在であっても2位松本を撃破するといった結果を生むなどチーム全体が向上しているという手ごたえを得た結果となっている。
今季J2のベストイレブンを組むとすると間違いなく上田康太を外すことはできないであろうというほどに上田康太の存在感は大きく、そしてファジアーノ岡山全体への刺激と影響が大きい。

 

J2は残り11試合となった。
長いシーズンも激闘を戦った分早く過ぎていくものだ。
プレーオフ圏内にいることでJ1昇格が現実味を帯びてくる。
ファジアーノ岡山の死力を尽くして戦っているその力が、J2というリーグに今響いているのは確かだ。

中国地方第二のJリーグチームとして発足してまだ10年たらず。
隣にはJリーグ連覇をしたサンフレッチェ広島が存在し、その反対隣には母体として関わりのあるヴィッセル神戸が存在する。
J1に挟まれたファジアーノ岡山だが、当然チャレンジしたい気持ちでいっぱいだ。


自分に負けない精神力を鍛え、最後まで死力を尽くして戦うことを掲げているファジアーノ岡山。
一生懸命を武器に、そして時には盾に。

残り11試合をまずは駆け抜ける―。


 

(2014.9.16訂正)

Good!!(97%) Bad!!(2%)

プレーイングタイムって一時そんなに短かったんですか!それじゃサッカーは間延びしてつまらない!レフリーが止めるまでプレーするってのはセリエAではかなり前から当たり前だと思っていましたが・・・。
岡山は無料券はなくても子供たちへの夢パスはあります。登録した小学生まではただでもきっと保護者が来たり,数年後は有料観戦者として年パスを持った中学生以上としてカンスタに足を運んでくれるはずです。

Bunta  Good!!0 イエローカード0 2014/09/17|19:47 返信

コメントありがとうございます。
選手たちが試合を止めてしまってはサッカーの試合は成り立たないですよね。岡山の示したものはとても大きなきっかけだったと思います。

近年は子どもたちを試合に招待するプランや席が増えてきていますね。札幌にもあります。
子どもたちが試合を観る機会が多くなり、そこで感じるものがあることで次に繋がりますよね。
その繋がりを繋がりにするか否はクラブの魅せるものの結果だと思います。
それは勝敗だけでなく、スタジアムの価値だと思っています。
ファジアーノ岡山、明日観れるので楽しみにしております。

読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/22|12:54

素晴らしい記事ありがとうございます。ファジのこともれなく書いてあって凄い。本当に木村社長には頭が下がります!社長さんとスタッフの皆さん、そして勿論選手の頑張りで、ワクワクする週末を過ごすことができることに感謝してます。実際カンスタに行くの楽しいですし、ファジアーノ、地元に根付いてきたなぁと思います。上田選手の加入は本当に効きましたね!呼んできたスカウトスタッフの目の確かさに脱帽です。それに応えてくれた上田選手に拍手☆

名無しさん  Good!!1 イエローカード0 2014/09/16|20:17 返信

コメントありがとうございます。
木村社長、そしてファジアーノ岡山のフロントの方々の努力はとても興味深くそしてクラブのために尽くされている行動をされているのだなと感動いたしました。
スタジアムに行くのが楽しいと感じることができる、そういった場所があることは幸せなことですよね♪
ファジアーノの取り組みは独自のものがありこういったものがたくさんの人たちに届きますようにと思い書かせていただきました。
読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/17|08:23

スバラシイ記事をありがとうございますm(._.)m思っている事を素直に正確に読者に文字で伝える事って本当に難しいですね。でも、日頃皆が感じていることが漏れなく書かれていて感動しました。此れからも正確にそして素直に記事を書いて下さい。

シバッチ  Good!!1 イエローカード0 2014/09/16|18:49 返信

コメントありがとうございます!
そう感じていただきとても嬉しく思います。これからも様々なことに気を付けながらも自分らしく伝えたいことを伝えることができればと思います。
サポーターさんたちの想いも取り上げていきたいです。
よろしくお願いいたします。
読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!1 イエローカード0 2014/09/17|08:21

岡山すばらしい❗️

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2014/09/15|21:43 返信

コメントありがとうございます。
ファジアーノらしさを確立しており、素晴らしいクラブだと感じました。
今後も注目していきたいと思います。
読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/16|10:50

最後まで信じて
やり切ろう!

英和  Good!!0 イエローカード0 2014/09/15|16:32 返信

コメントありがとうございます。
ファジアーノにとって良いシーズンとなりますように願っております。
読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/16|10:49

あの宣言が出されたのは2年前ではなくて2010年の開幕前の事です

名無しさん  Good!!2 イエローカード0 2014/09/15|16:27 返信

コメントありがとうございます。
そしてご指摘ありがとうございます。
大変申し訳ございません。大変気を付けていたのですが誤りでしたので訂正させていただきました。
読んでいただきありがとうございます。

Tomoko Iimori   Good!!1 イエローカード0 2014/09/16|10:48

試合の度に掲げられる『ココロヒトツニ』の弾幕。そう言うことです!

みゆうのママ   Good!!0 イエローカード0 2014/09/15|16:09 返信

コメントありがとうございます。
ファジアーノ岡山の素晴らしい取り組みとサポーターとクラブの在り方素敵ですね。
昇格目指して走り続けてください!
読んでいただきありがとうございます!!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/16|10:46

岡山にフォーカスされるとは。笑
ありがたいです!

名無しさん  Good!!2 イエローカード0 2014/09/15|12:43 返信

コメントありがとうございます。
ずっと気になっていたのでやっと形にできて良かったです!
来週はファジアーノを観る機会があるので楽しみにしています。
読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/16|10:45

岡山魂

1126_FG  Good!!4 イエローカード0 2014/09/15|12:18 返信

コメントありがとうございます。
読んでいただきありがとうございます!

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/09/16|10:44

この記事も読んでみる