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名古屋は「就任ブースト」で残留を目指す

2016/09/29 19:22配信

武蔵

カテゴリ:コラム

いよいよJリーグも10月を迎え、佳境に入ってきました。


多くのチームは年間勝ち点1位を目指していると言えるかもしれませんし

もちろん、セカンドステージの優勝争いもあります。

各陣営、ラストスパートに入りたいところです。



ラストスパートといえば、戦術面ではなくメンタル面への作用に

思いを馳せる向きも少なくないのではないでしょうか。

それはモチベーションと呼んだりもしますが

何かが懸かっているとき特有の、爆発力がチームに備わることがあります。


そういった、気持ちの面での上乗せが顕著になるのは

特に残留争いではないでしょうか?

そしてその、気持ちの面に特に作用するのが

監督解任のようなショック療法であったりします。


俗に「監督解任ブースト」と呼ばれたりもしますが

それにより、チームの危機をあらためて肌で感じ

サッカーがメンタルのスポーツであることを示すようになる選手が数多くいます。

そんな中、初のJ2降格が現実味を帯びていた名古屋は

小倉隆史前監督からボスコ・ジュロヴスキ監督へとスイッチして以降

2勝1敗1分けとし、残留圏内まであと勝ち点1と迫っています。


しかし、これは「監督解任ブースト」ではないように思えます。

理由の1つとしては、小倉前監督は「休養」であり「解任」ではないからです。


それはさておき、重要なのはもう1つの方の理由であり

それは、サッカーの内容が劇的に変化したからです。

監督交代による、選手の気持ちの面での変化を否定はしませんが

それよりも、内容の良化により、再現性を伴った結果を得ることが出来ているのです。


名古屋は、いわゆる「監督解任ブースト」ではなく

「監督就任ブースト」でJ1残留を目指します。

ボスコ就任により、劇的に改善された内容

その変化は、就任1発目のセカンドステージ第10節のFC東京戦で表れています。

4141の布陣を自陣深めに置き、アンカーを中心に中央を固めることで

相手をサイドに追いやり、望まぬクロスを上げさせ、屈強なCBが跳ね返し

442よりも厚くなった中盤がセカンドボールを拾うという順序立てが形作られました。


そこに、ストイコビッチ政権の名参謀として名を馳せたボスコ監督を慕って

昨シーズン限りで退団した闘莉王が復帰したことで

より、屈強な守備陣形を形成するに至りました。


その点で「守備の決まりごとが少ない」(酒井隆介)

と言われた前体制とは、一線を画したと言えるでしょう。



攻撃面では、ウイングをサイドに張らせ、相手のブロックを引き伸ばしたところで

相手のボランチ脇、CBSB間のスペースを攻略する形が示され

フィニッシュに至る回数が増えました。


このFC東京戦では、インサイドハーフの田口泰士が

この形から3度もフリーで得意のミドルシュートを放ち

そのうち、1本が先制点に繋がりました。

田口ほどの選手であれば、再現性ある攻撃を得点に繋げられます。



ボスコ監督の就任以来、名古屋はゲームの内容が劇的に改善しました。

これは「監督解任ブースト」で期待されるメンタル面の改善だけではなく

監督交代により内容が良くなり、勝ち点を積めるようになるという

「監督就任ブースト」であることを示しているのではないでしょうか。

「就任ブースト」は、名古屋というクラブの積み重ねの証

よく、残留争いをするクラブから発せられる言葉として

「〇〇は降格するようなクラブではない」というものがあります。

これは、負け惜しみや強がりであることも少なくないでしょう。

もっと言うと、そのクラブを総合的に見て、根拠に乏しいと言えるケースはあります。

結局は、その順位に値するものしか見せられていないのだ、と。



ただ、ボスコ監督が就任してからの名古屋を見ると

「名古屋は降格するようなクラブではない」と言いたくもなります。


それは予算のこともあるでしょう。

J1有数のビッグクラブであることから、年俸に凡そ比例して

選手の質で他の残留争いをしているクラブを上回っていることは否定できません。


ただ、ここでクラブを救ったのがボスコ監督である点は、非常に重要です。

なぜならボスコ監督は、このクラブのレジェンドと言える存在だからです。


2010年には優勝を果たしたストイコビッチ政権の名参謀であったボスコ現監督は

つまり、このクラブの一番良い時を知っているということになります。

そして、現在の改善された内容のサッカーは

その際のものと、かなりの部分で共通しています。


その上でまた今回、ボスコ監督を、今度は監督として招聘するに至ったのは

久米一正社長が、その時のコネクションを切らずにいたことが挙げられます。


ボスコ監督、闘莉王、久米社長と、クラブの黄金期を作ってきた人物たちが

この期に及んで、チームを救いつつあるという点については

ひとえに、このクラブの積み重ねてきた財産によるものだということが

言えるのではないでしょうか。



名古屋は他の残留争いをするクラブに対して

今までの積み重ねによって、優位に立とうとしています。

名古屋は「監督就任ブースト」により、サッカーの内容が改善されましたが

そのブーストは、名古屋というクラブの厚みによって生み出されたと言えるものです。

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