CHANT(チャント) 日本 U-23代表

リオ総括を受けて ~東京五輪でメダルを獲るために~

2016/09/26 10:50配信

武蔵

カテゴリ:コラム

リオ五輪が閉幕してから、およそ1ヶ月となります。

男子サッカーの結果としては、残念なものとなってしまいましたが

だからこそ、次へ向けた総括が必要なのは言うまでもありません。

サッカーで切り替えが必要なのは、ピッチ内だけではないのです。


今月、JFAの霜田正浩ナショナルチームダイレクターが大会の総括を発表しました。

その中で、誰もが気になった18人のメンバー選考について

特にオーバーエージ枠の人選と、久保裕也の直前離脱について

どのような決定プロセス、内部事情があったのかが明らかにされました。


今回はこれに基づき、次回の東京五輪では繰り返さぬように

改善点などを挙げていきたいと思います。

2つの制限とケガ人の問題

まず、オーバーエージ枠の人選についてですが

これは誰が見てもベストの選択ではなかったと思います。

戦前から、不安と選出制限の存在が囁かれていました。


広島や水戸など、3バックのシステムによって世に出たものの

五輪代表では4バックのCBに入って苦しんだ塩谷司や

SHが中に入り、滑走路となった外側のレーンを使うことを想定して選ばれたものの

課題の守備でミスが重なり、そもそものチームコンセプトの崩壊を招いた藤春廣輝など

実際に、その不安は概ね的中する格好となってしまいました。


人選に関する報道も二転三転としたことからも

様々な立場の人間の思惑が絡んだ結果であったことは明白でした。

では、霜田氏の挙げたいくつかの選出制限について。

まず1つは、海外組の選出は難しかったということです。

これは後述の久保にも関わってくる問題ですが

ことオーバーエージ枠に関しては、早い段階で判明していたとのことです。


ではなぜ、海外組の招集が難しいのかというと

五輪では、国際Aマッチウィークのような選手の拘束を認められていないからです。

これは、FIFAが動かない限り、東京五輪においてもついてまわる問題です。



もう1つは、ハリルホジッチ監督の要望という点です。

A代表は、リオ五輪から1ヶ月しないうちに、W杯最終予選の開幕を控えていました。

昨今の日程の過密化による選手のパフォーマンスの低下が叫ばれる中で

A代表監督からのこの要望はやむを得ないと言えるでしょう。



この2点から、オーバーエージの大枠からは

日本代表に招集される可能性の高かった選手と海外組が省かれました。

これらの制限については、霜田氏も苦しい胸の内を明かし

「何も条件が無い中でなら、本当に簡単だった」としました。



この上で考慮されたのが、相次いだ予選組のケガによる長期離脱です。

特に上記の2人を選出するに至ったDFラインは、ケガ人が相次ぎました。


U-21代表としての立ち上げ以来

このチームの強みとして言われてきたことは、DFラインの層の厚さでした。

しかし、Jリーグのオフシーズンとなる1月に予選を戦い抜いた影響からか

室屋成や松原健はプレシーズンに離脱し

また、山中亮輔などにも筋肉系のトラブルが発生し、それを感じさせました。


加えて、岩波拓也や奈良竜樹といった主力が試合中のアクシデントにより離脱。

しかも、5月に入ってからという直前での離脱は痛かったことでしょう。

これらは、メンバー選考の方向性に、ある程度の影響を与えたそうです。


結局、この中からは岩波と室屋が本大会のメンバー入りを果たしますが

両名ともJ1への復帰は7月に入ってからと、直前も直前までズレ込みました。

その分、例えば藤春に関して「頑丈さ」(手倉森誠監督)を挙げるなど

選出理由としてこだわる要素となりました。


より、能力や人格にこだわることが出来なかったことは

オーバーエージに関する痛恨事と言えるでしょう。

久保の直前離脱と、解決に向けた取り組み

久保に関しては、招集できなかったのではなく

直前になっての離脱となったので、ダメージはより深刻でした。

能力、海外経験ともに高く予選においてもチームの中心として活躍した久保は

このチームにおいて、懸かる部分が大きい存在だったと言えます。


結果的に、同じ万能タイプと言える興梠の招集はケガの功名と言えましたが

その分、興梠に掛かる負担が増したという点は否定できません。

久保の直前になっての欠場は、チームに暗い影を落としました。


そしてこれは、先に挙げた五輪の選手拘束の問題であるため

東京でも引きずりかねない、非常に重要な問題です。


この件に関して、まずはFIFA、そしてクラブ側に働きかける材料として

霜田氏は2つのことを挙げました。

それは「五輪に送りだすメリットの強調」と「出場国が協力すること」です。


韓国のように、五輪メダルに兵役免除が掛かっているワケでもない日本人選手において

クラブが五輪に選手を送り出すメリットといえば

五輪の注目度にかこつけた、選手の価値の高騰にあるでしょうか。


ただ、これも今回のヤングボーイズのように

チャンピオンズリーグの予選を引き合いに出されると

いくら五輪と言っても、交渉カードとしては懐疑的にならざるを得ません。


また、2つめにおいても

日本は他に先駆けて五輪出場が決まっており

他国と協力する期間が非常に限定されたものとなります。

つまり、交渉する場面において、日本は孤独な戦いを強いられることになるでしょう。


やはり、東京五輪において、日本サッカー界に必要とされるのは

まずはJFAの国際交渉力ということになります。

粘り強い交渉で、日本にメダルを引き寄せてほしいと思います。

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