FC東京U-23vs秋田 石川直宏が味スタに帰ってきたぞ
2016/09/21 18:41配信
カテゴリ:コラム
タイトルのとおり、石川直宏が実戦復帰しました。
FC東京サポーターの誰もが待ちわびたニュースと言えます。
昨年の8月2日、フランクフルトとの当地での親善試合で後半から出場した石川は
競り合いの際に着地で捻り、古傷でもある左膝前十字靱帯を断裂。
その後、今年4月に全体合流するものの
同7月に同じ左膝を痛め、実戦から遠ざかっていました。
そこからまたリハビリを重ね、戦列復帰を果たしていた石川は
今節、まずはセカンドチームのFC東京U-23で実戦復帰を果たしました。
今節は秋田を迎えてのホーム戦ですが、その舞台は
FC東京U-23にとって今年唯一の開催となる、味の素スタジアムです。
この日の味スタは、メインスタンドのみの解放となりましたが
この日に向け、石川の復帰、メンバー入りが各メディアで報じられた効果もあり
雨の中、3236人もの観客が詰めかけました。
スタジアム規模の違いはあるにせよ、前回ホームの鳥取戦は1375人だったことから
石川直宏復帰試合という興行としては、成功したと言えるでしょう。
あとは、競技面での成功、そして、チームの勝利を求めることになります。
試合前練習の入退場時に、石川を大歓声で迎えたFC東京サポーターは
選手紹介の際、まずはかつて在籍した秋田の下田光平へ大きな拍手を送ったのち
再度石川へ、ひと際大きな拍手と、さらに大きな歓声を向けました。
これにより、味スタは非常に明るいムードで包まれることになりました。
得意の形を作った秋田の時間
FC東京サポーターが作ったポジティブな雰囲気の中で試合は始まりましたが
その中で、FC東京U-23は、あまり良い試合運びをすることができませんでした。
球際の勝負では優勢だったものの、秋田のポゼッションへの対抗策が不透明で
442の2トップ脇に運ばれた際の処理が整理されておらず
そこから大きな展開を許し、自陣深くまで運ばれてしまうことが多発しました。
また前半は、秋田にとって得意の形である
ゴール方向へのクロスに対して、3トップのウイングが相手のSBの裏を取る形で
久富賢に決定機を許してしまう場面もありました。
ここは圍謙太郎のビッグセーブで凌ぎましたが
セカンドチーム故のもともとの連携面での課題や
小川諒也が高校時代以来となるCBで起用されるなどの不安を露呈しました。
FC東京U-23は、ボールを持った際にも、角度を付けた展開が見られず
最終ラインから、単純に秋田のDFライン裏へ蹴ってしまうことも多々ありました。
いわゆる縦ポンでも、角度を付けて相手のSB裏へ蹴ることが出来れば
J1でも出場機会を掴んでいるユ・インスがサイドへ流れ
さすがのキープ力を見せる場面に繋がることもありましたが
単純に裏へ蹴るだけでは、秋田でノイアー的役割を任される松本拓也が処理し
チャンスには繋げることが出来ません。
両チーム、前半をスコアレスで折り返します。
その展開からも、石川への期待感は増すばかりでした。
後半の深い時間帯でもエネルギーを出したFC東京U-23
後半も秋田の方が先に決定機を掴みます。
アンカー的役割であるため、442相手にはフリーになることが多い山田尚幸が
低い位置からドリブルを開始すると、相手を2人交わし、サイドへ展開。
右サイドの浦島貴大が対面の小山拓哉との球際を制すると
左に持ち変えてミドルシュートを放ちました。
しかしこれも、今度はゴールポストの内側に当たるという不運で先制とはならず。
このイヤな流れを代えたのは、やっぱり石川・・・ではなく
1枚目の交代カードとなった生地慶充でしょう。
この日、再三セカンドボールを拾う活躍を見せた小林真鷹も
ボールを持った際には、効果を発揮できていたとは言い難いものがありましたが
59分にその小林に代わり、技術のある生地が入ると
秋田の運動量が減ったこともあり、最後尾でのボール保持が安定しました。
そして、これらの露払いを受け、66分に石川が投入されます。
石川に求められたのは、安定したボール保持のその先のアイデアです。
ただ、やはり1年2ヶ月ぶりということもあり
最初は、なかなか勘が掴めない、といったようなプレーが続きました。
しかし、試合の流れはすっかりFC東京U-23にありました。
攻撃時にはエネルギーを出し、しっかりと前線に人数を掛け
だんだんと秋田ゴールに迫れるようになりました。
87分の先制ゴールは、J1でも実績のある林容平がクロスを収め、落とし
この日、攻撃面ではドリブル突破で存在感を見せていた小山がシュート。
下田のシュートブロックのこぼれ球に水沼宏太が詰めたものです。
ボールを運べるようになったことで、相手を押し込めるようになり
より相手ゴールに近いところでシュートポイントを得られたことが
このゴールを生んだと言えるでしょう。
秋田はこの失点を取り返すべく、前に出ますが
完全に足が止まってしまっているためシステムが上手く運ばず
逆に、カウンターのピンチを食らうこととなります。
この時間でも足の止まらない柳貴博が右サイドでボール奪取、突破、キープして
最後は猛然と駆け上がった生地がシュートを放ちますが枠外。
また、生地の放り込みをユ・インスが落として石川がミドルという場面もありましたが
これはGK松本の正面でした。
FC東京U-23は、追加点はなりませんでしたが、選手交代で流れを変え
後半の深い時間帯は体力面、そして気持ちの面で違いを見せ、最後は寄り切りました。
その気持ちを支えた特別な存在というものが、何かこの試合にあったのでしょうか。
試合後のヒーローインタビューで水沼はその一端に触れ
この日、いつもより多めに詰めかけたサポーターに謝意を示しつつ
「これだけ集まってくれたのは、ナオさんが今まで積み上げたもの」とし
サポーターの声援とともに、後に控える石川の存在を挙げました。
水沼の後を受けた石川は
「宏太の積み重ねが今日の結果となってあらわれた」とし、称え合う形となりました。
積み重ねの大事さが共有されているのもまた、石川の功績と言えるかもしれません。
この日の石川のプレーは
次の吹田スタジアムでの試合のメンバーに入るに値したかは分かりません。
石川が実戦から遠ざかっていた間に、監督は2回交代しました。
それでも、自身が「これがゴールじゃなくてスタート」とする通り
目標はトップでの出場、活躍、そしてタイトル獲得ということになります。
FC東京に関わる全ての人が待ち望んだ「スタート」が
ここ、味スタで切られました。
味スタに、石川直宏が帰ってきたのです。