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2016年 レンタル選手の動向

2016/09/16 17:49配信

武蔵

カテゴリ:コラム

9月国際Aマッチウィークも終わり、いよいよシーズンの方が佳境を迎えています。

J1では2ndステージの優勝争い、または年間勝点1位を目標にし

J2ではJ1昇格争いが激化の一途を辿っています。


ただ、最重要と言えるシーズン終盤戦ではありますが

この時期から、既に来季の動向に注目が集まる類の選手たちがいます。

それが、レンタル移籍組です。

もちろん、選手自身はプレーに集中したいところですが

当該チーム関係者、サポーターとしては、次第にやきもきし始める季節と言えます。

三田啓貴(FC東京→仙台 27試合4得点)

レンタル移籍といえば、下位カテゴリーへの移籍が1つのパターンです。

育成という意味では、より出場機会の多くなりそうな方へ送りだしたいというのが

レンタル元の偽らざる本音と言えるでしょう


また、同カテゴリーへの移籍となると

同カテゴリーでも戦力と見なされたということであり

ともすれば、敵に塩を送る格好になることも、しばしばあります。



FC東京の下部組織で育ち、大学経由で帰ってきた三田啓貴は

今シーズン、レンタル元と同カテゴリーのベガルタ仙台へとレンタル移籍をしました。


FC東京は、「自分に合っている」(三田)というインサイドハーフで三田を起用した

フィッカデンティ監督が退任し、代わって城福浩監督が就任したこと

それと、ACLがあることから大量補強を敢行したことで、構想外となった格好です。


仙台では、自ら志願したという442のボランチで起用され

累積警告やレンタル元のFC東京との対戦以外で先発起用されています。

持ち前の、パンチのあるミドルシュートでいくつもの勝ち点を引き寄せてきましたが

仙台では更に、組織的守備や中長距離のパスの精度、また視野が向上しています。


FC東京との試合には出られませんが、そのレンタル元のクラブと仙台との

年間勝ち点差は28試合終了時点で3となっております。

仙台がFC東京の順位を上回ることが、三田のできる「恩返し」と言えるでしょう。

長澤和輝(浦和→千葉 30試合4得点)

左利きのボランチ、そしてレンタルと言えば、千葉の長澤も取り上げたいところです。

長谷部新体制となって以来、ボランチとしての存在感を増した長澤は

コンビを組むアランダ、または富澤清太郎と良好な関係を築き

このチームの中心として君臨しつつあります。


2‐0の2得点に絡み、相手のシュートをセットプレー絡みの2本に抑えた岐阜戦は

チームが安定したことを如実に示した試合だったと言えるでしょう。


専修大学時代は主に433のインサイドハーフとして

ケルン時代は4231のトップ下、あるいは2列目で起用されるなどしましたが

ここにきてボランチとしての経験を積んでいます。

専大卒業時にもオファーを受け、そして今、複数年契約を結ぶ浦和では

現在、ミシャ式と呼ばれる特殊なサッカーをしており

また、日本を代表するビッグクラブであることから、巨大戦力を有しており

戻った際には、厳しいポジション争いとチームへの適応が求められそうですが

ボランチとしての経験が、彼を浦和でも生かすことになるかもしれません。

矢島慎也(浦和→岡山 24試合3得点)

巨大戦力を抱える浦和は、もう1人、重要人物をJ2に送り込んでいます。


昇格争いを続ける岡山にとって、矢島はその可変システムの中心と言えます。

今年から10番を背負う矢島は、3142、442、532と変化する布陣の中で

インサイドハーフ、ボランチ、サイドハーフを歴任し、能力の高さを見せています。

U-23での激闘を終え、スウェーデン戦でのゴールを手土産にして

いよいよ、クラブ初のJ1昇格を懸けた、岡山での激闘に本腰を入れる矢島ですが

もちろんレンタル移籍ということで、来季のことは不透明と言えます。



年代別代表選手と言っても全く例外ではないのが、出場機会の確保の難しさです。

出場機会を得られないことなどにより、成長の機会が無いことで

いつしか、年代別代表から遠ざかったという選手は数多くいました。


矢島も、ジュニアユース時代から籍を置く浦和において

トップチームでの出場機会は非常に限られたものでありました。

その中で、常にリオ五輪を目指す代表チームに選出され続け

終ぞ、リオ五輪まで到達することができたのは

レンタル先の岡山で出場機会を得たおかげと言えます。


ただ、もちろんのこと、岡山で出場機会を勝ち取っている矢島の

その基礎を作ったのと、保有権を持つのは、ともにレンタル元の浦和です。

岡山で経験を積み、その上で巨大戦力を有する浦和に戻り

それでも出場を勝ち取ることができれば

高卒、ユース卒選手の出場機会という日本サッカー界の育成面の課題を

乗り越えた象徴と呼ぶことができる、そういう存在と言えるでしょう。




ここまで、レンタルバックを基本線として話を進めてきましたが

もちろん、そのまま居付いてしまうということも考えられます。

レンタル元の戦力とはならなくとも、違うチームで活躍することで

Jリーグ全体の財と見なせれば良い、そういった考え方も存在します。


とにかく、選手にとって一番良い、あとから見て良かったと思える選択をしてほしい

それが一番の、日本サッカーのサポーター目線での願いではないでしょうか。

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