CHANT(チャント) FC町田ゼルビア

【FC町田ゼルビア】 10,112人の特別な日。一体となって迎えたJ2開幕、最高の舞台 【J2】

2016/03/04 19:57配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


シーズンオフが短かったようにも感じる、初めての2月開幕となるJリーグ。
それぞれがそれぞれの気持ちで迎える開幕の日。

FC町田ゼルビアが迎えるひとつステージを上げての開幕戦。
昨季、最後の最後までを戦い切り掴んだJ2昇格があったからこそ、迎えることのできた新たなステージでのチャレンジの日。

たくさんの人々のワクワクした気持ちや、待ちに待ったというソワソワした雰囲気、抱く期待に少しでも多く触れたくて、早い時間にスタジアムへと向かった。
FC町田ゼルビアが新たにJ2で迎える開幕の日を存分に感じ、試合を迎えたかったのだ。

スタジアムへと向かう道には、FC町田ゼルビアの青く身を包んだサポーター、対戦相手であるセレッソ大阪のサポーターである桜色を身に纏ったサポーターが多く歩いていた。
サッカーグッズを身に付けている人たちを多く見かける光景が心地良い。
ホームで迎える開幕を後押ししてくれるかのように、青空が広く拡がり、太陽も高い。
試合前は春を感じさせてくれるあたたかさを感じた会場では、開幕という高揚感に包まれていた。

道中、スタジアムの場所を町田サポーターに聞くセレッソ大阪サポーターの姿が見えた。
町田サポーターは笑顔でその道程を伝え、今日はよろしくお願いしますと握手を交わしていた。

Jリーグって、いいな。
改めて今年も始まるのだと、Jリーグな光景を目にして感じる。

町田市立陸上競技場。
通称、野津田。
FC町田ゼルビアが戦うホームスタジアムは、すでに活気に満ち溢れていた。

2012年。
初めてのJ2昇格で戦ったJ2の舞台は、Jリーグの壁は高く厚いと感じてしまう厳しい戦いが続き、一年での降格という結果となった。
あれから4年。FC町田ゼルビアは再びJ2の舞台へと帰ってくることができた。

相馬監督の下、時間をかけ積み重ねながら これがFC町田ゼルビアだと言える基礎を作り、過去最高であると戦う選手たちが確信を持つほどに「チーム」となり、迎えることができたJ2への再チャレンジ。

4年ぶりとなるJ2の舞台を迎える相手は、J2屈指の戦力揃う優勝候補筆頭チームであろうセレッソ大阪との一戦となった。
相手が巧く強いチームであることは言わずと知れたというほどであり、選手個々の技術は超一級が揃う。
だからこそ、自分たちの力をすべて出し、ぶつかることのできる相手でもある。

チケットは、はじめての完売。
注目度が高い試合であることは間違いない。

FC町田ゼルビアの長い一日がはじまった―。


●溢れるそれぞれの想い。特別な日となる開幕戦。


試合数日前。
インターネット上では、はじめて野津田へ向かう人たちが主となってアクセスに対し不安の声が多く見られた。
セレッソ大阪サポーターにとって、はじめての地となるFC町田ゼルビアのホームスタジアムであるが、試合前や試合後、今までに迎えたことのない来場者の中、時間内に人を運ぶことができるのかと不安の声が上がっていた。
それに対し、一部の町田サポーターは、はじめて1万人規模の観客を迎えるであろうチームの運営に少しでも自分たちも協力をしようと、行き慣れた自分たちは試合前なるべく早めにスタジアムへと行くように、試合後は試合終了後に行われる、試合に出場した選手たちなどが行う子供たちとのふれあいサッカーを観てから町田サポーターは帰ろうと呼びかけ、
試合前、試合後に出来る限りセレッソ大阪サポーターが時間をロスすることなく円滑にスタジアムに向かい、スタジアムから帰れるようにバスの座席を空けようという声掛けが行われていた。

チームを支えるサポーターである自分たちができることはなにかと考え、自らの行動で少しでもスタジアム運営が円滑になるのならという呼びかけだった。
また野津田に来たい、足を運びたいと思ってもらいたいという気持ちが生んだ案だった。

1万人規模の試合を行うに当たり、いつも以上にたくさんの人がスタジアムへと駆けつける。
人が多くなることはこの上ない歓びだが、経験したことのないその規模での試合運営によって対応しきれない部分が出てしまうことで不便を感じてしまうと、せっかく足を運んだ試合の思い出が良い思い出ではなくなってしまう危険性も秘めていることは確かだ。
だからこそ、少しでも自分たちが行えることはしようというサポーター発信のその声は、チーム愛に満ちていた。

知名度も高く人気クラブであるセレッソ大阪を迎えることで、より注目度が上がったFC町田ゼルビアのJ2開幕戦。
改めてJ2に昇格したからこそ、対戦できる相手だ。
試合の内容や戦う姿はもちろんだが、行って良かったと思ってもらえるスタジアムでありたいというサポーターにとっても大切なホームスタジアムであるからこそ、自発的なその行動を生み、多くの人々の心にあたたかさを届けた。
セレッソ大阪のサポーターだけでなく、FC町田ゼルビアを観に来るであろうたくさんのはじめての来場者も多いであろうこの日。
記録的な来場者となるであろう開幕戦を迎えるにあたり準備をしたのは、最善の準備をと取り組んだチームはもちろん、サポーターも後押しをしようと愛情を持って案を出し、
一生懸命が詰まっていた。

初めてのチケット完売。
満員の野津田で迎える開幕戦。

特別な日とならないわけがない―。
そんな雰囲気に包まれていた。


試合の約2時間前。
ゆっくりとスタジアムに入ってきたチームバスを迎えたのは、多くのFC町田ゼルビアのサポーターだった。
青空に掲げられたフラッグが振られ、チャントが響く。
手を高く掲げ叩き、敬意を持って選手たちを迎える。

バスからは、相馬監督が多くの人々の目を見て、ありがとうという声が伝わってくるほどに気持ちのこもった頷きを持って応えていた。

始まる―。
気持ちそして期待溢れる出迎えは、よりピンと空気を張り詰めさせ、戦いの舞台へと到着したチームにより高いモチベーションを与えた。

迎えた戦いの日。ここから長いリーグがはじまっていく。
相手がどこであっても、怯むわけにはいかない。

鋭く強い目をした戦いへの覚悟を持った選手たちはチャントが響く中、戦いの舞台へと向かった。


サポーターたちが楽しめる場となっているゼルビーランドでは、多くの人々がスタジアムグルメを購入するために列を作り、グッズ売り場にも多くの人々が集まり、ゼルビア劇場というイベントでは多くの人が試合前にリラックスできるイベントを楽しんでいた。
青と桜色それぞれのサポーターの多くが入り交じり、それぞれの時間を過ごす。
いつも以上に活気があってテンションも上がると言うキッチンカーでスタジアムグルメの数々を販売していた店員さんも、たくさんの客さんに声をかけながら町田の勝利を願っていた。

大阪から来たという小学校1年生の男の子は、FC町田ゼルビアのマスコット・ゼルビーを初めて目の前にし「かっこいいね!」と笑顔で喜んでいた。
町田に来ることがなかったら、出会わなかったマスコットとの出会い。
そもそもJリーグがなかったら出会わないその瞬間。

そういった光景もまた、Jリーグあってこそ、だ。

選手たちが試合前アップを行うためピッチに出てくると、会場は大きな拍手で包まれた。
J2で迎えることができるという昨年の選手たちの戦いに改めて感謝と敬意を込めて声援を送りたいという町田サポーターの声が印象的だった。
選手入場の際には、多くの町田サポーターで演出された白・水色・青で染まったコレオグラフィが現れ、ゴール裏にはMACHIDAの文字。
町田魂のビッグフラッグがサポーター席で揺れる。

最高の雰囲気、最高の舞台の中、開幕戦が始まった―。


●過去最高・来場者10112人 1万人達成!

FC町田ゼルビアは来場1万人を目指し、日々ホームタウン活動とホーム試合運営を重ねてきた。
対戦相手が人気クラブだからという単純な理由だけで達成したわけではない1万人という数字は、数年という月日をかけて、FC町田ゼルビアが積み重ねた念願の達成だった。

FC町田ゼルビアは、年間200回以上を越えるホームタウン活動を行う。
サッカークラブとして高いところを目指すことはもちろんだが、FC町田ゼルビアの掲げる目標は「町田のシンボル的存在になりたい」という大きな目標を持っている。

ホームタウン町田の出身選手であり、現役時代の終盤をFC町田ゼルビアにてプレーした星大輔氏がホームタウン担当という新たなフロントでの役職に就任し、町田愛とチーム愛を持っている星氏だからこそ先頭に立ち積極的にチームのプロモーション活動を展開し、
現役選手たちも参加する機会を設けながら、チームマスコットのゼルビーや育成スタッフらと共に多くのホームタウン活動を行ってきた。

どんなに小さなイベントでも誘いがあれば出向きたいという方針を持って、スケジュールを細かく組み一日に3か所という複数個所もこなしながら、スケジュールの許す限りホームタウン活動に出向く。
サッカーには繋がらないであろうことでも積極的に関係なく取り組む。まずは知ってもらうことからと始めたホームタウン活動だが、今では多くの人々から声を懸けられる側へと変化している。
ゼルビーの存在感も高まり、今年初めて参加したマスコット総選挙では多くの有名マスコットが存在する中で7位と大健闘した。

小学生を前に、夢についての講演も多く自らの経験も多く語ってきた。
現代では両親が働いているという家庭も多く、学校が終わった後、学童で過ごす子供たちのところへサッカーボールを持って行き一緒にボールを蹴った。

試合に来てくれた子どもたちが、ピッチにいる選手たちを観て、あの場でサッカーがしたい、憧れの選手たちとサッカーがしたいと言う声を実現し、
試合後戦いが行われていたピッチで、子どもたちが選手とサッカーをする ふれあいサッカーを実施している。
実際に試合に出場していた選手も試合後すぐにピッチで子どもたちと笑顔でボールを蹴るチームはなかなか他にはないであろう。

介護施設を選手たちが巡り、おじいちゃんやおばあちゃんたちにストレッチを教え、手を取り足を取り一緒に笑顔でストレッチなど軽い運動を介してコミュニケーションを取る。
サッカーを観たことがないお年寄りでもそれがきっかけとなり、自分の息子を応援するかのようにスタジアムへと足を運んでくれることも増えた。
選手の下の名前を叫び、とにかくゴールへボールが向かうよう声援を送る。

首都圏には多くの人気選手が在籍する大きなクラブが存在するが、それでもFC町田ゼルビアを応援したいと駆けつけるサポーターが多く存在する。
期待してくれる町田市民含め、多くの人たちにとって身近な存在であり、距離感が近いように、ホームスタジアム運営やホームタウン活動を工夫しながら町田らしさを持って続けてきた。

たくさんの積み重ねと出会いを繰り返してきた日々。
1つステージが上がり、知名度のあるチームと対戦するまでになったFC町田ゼルビアの誇らしいその瞬間を観たい。
そう興味を持った人たちを含めたくさんの期待が集まった1万人越えのスタジアムとなった。

セレッソ大阪のサポーターも多く詰めかけたこともあるが、この日野津田には 10,112人という目標としてきた1万人以上の来場者が集まった。

試合後半、来場者の発表があると野津田はその数字に大きく湧いた。
1万人の達成は、FC町田ゼルビアにとって、そしてサポーターにとって達成したかった数字であり、ひとつの歴史となった。
もちろんまだまだ高いところを目指していかなくてはならないであろう。
しかし、まずはひとつの大きな目標達成をたくさんの力で達成した日となったのだ。


相馬監督は試合後の会見にて、まずは集まってくれた多くのサポーターに感謝の言葉を口にした。

1万人を超える多くのサポーターの方々が会場を満員に埋めてくださって、最高の舞台を用意してくれたことに感謝したい―。

自身の選手時代にも満員のスタジアムでプレーするという時は、やはりモチベーションが違ったという経験をしたという相馬監督。
そういった中で戦えるのは選手として幸せなことであり、力が入る試合となること。素晴らしい舞台を用意してくれたことに感謝をお伝えしたいと言葉にした。


怖がらずにプレーすることができた。
それがこの日のFC町田ゼルビアにとって一番大きなことだったであろう。

試合を握ったのはFC町田ゼルビアだった。
序盤こそセレッソ大阪の技術の高さを前に、試合における基本線を掴むことに多少時間がかかったものの
その後は高い位置から積極的にボールを奪い、選手の距離感が空いてしまっていたセレッソ大阪のスペースをうまく突く形で、間に入ることができゴール前でボールを動かすことが出来た。
シュートで終わる回数も多く、決定的という場面でいうとシュート本数に比べると少なかったかもしれないが、それでも終始積極的に攻撃を仕掛け続けた。
疲れる時間帯に入っても集中が切れることなく、最後までゴールを目指し続けたものの、セットプレーから失点してしまい、0-1で敗れ黒星を喫した。

どんなに惜しいで終わっても負けは負けであることは間違いない。
どんなに攻めていても1点を奪えなかったという点は今後戦う上で、ゴールを決めなければ勝つことができないスポーツであるサッカーであるため、課題として見つめなくてはならない。
しかし、会場を何度も湧かせる試合ができたこと。
攻撃を続けることができ、手ごたえを感じていたからこそ敗戦は悔しいながらも、その中で手ごたえを掴むことができ自信に繋がる試合ができたことはプラスとなった。
負けは、マイナスではなくプラスになる機会となる。
決めきれていれば試合は大きく違った形となっていたであろうが、結果がすべてであるが故に、たらればは次に繋げる貴重な材料として今後に生かされるであろう。


試合後、多くのサポーターが立ち上がり大きな拍手でゼルビアの選手たちを迎えた。
攻め続けた中、勝利できなかったことは決して歓べることではないかもしれないが、それでも強豪相手に攻め入るサッカーをしたこと、果敢に怖がらず怯むことなく一生懸命にゴールへと向かったその姿が
多くの人々の心に伝えたものがあった。
逆視点でいうと、あれだけ攻められていてもゴールを割ることがなかったセレッソ大阪はやはり堅く、そのゲームを獲るという戦い方を持っているということだ。
その結果を受けて、FC町田ゼルビアもまたひとつ大きな経験を重ねたことになるであろう。


試合後、途中から出場した選手たちなどがピッチに登場し、子どもたちとボールを蹴った。
元気なスクールのコーチの声に子どもたちもくしゃくしゃの笑顔でボールを蹴る。

今日ゼルビアかっこよかったね!惜しかったね!と声をかけてくれたサッカー少年は、ゼルビアのタオルマフラーを巻き、ボールを蹴って出た汗を拭きながら、キラキラとした笑顔に満ち溢れていた。
今日も楽しかったね!と親子で手を繋ぎ会場を後にする。

FC町田ゼルビアで染まり沸いた野津田は、長い一日を終えた―。


footballは、多くの人を繋ぐ。
今日という日が、1万人を越える人々の特別な一日になったのだろうと感じながら、
すっかり太陽が落ち気温が下がっているものの人々の温かさが溢れていることを実感する 野津田を後にした―。


J2 第1節

FC町田ゼルビア×セレッソ大阪
町田市立陸上競技場・10,112人

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