遠回りした生まれながらのストライカー 2/3
2014/05/20 19:43配信
カテゴリ:コラム
大久保は純粋なストライカーという位置付けではなかった。
私も含め、多くの方々が大久保嘉人というフットボーラーを知ったのは、
国見高校が全国を制した第79回高校選手権であろう。
国見高校での大久保は、佐藤陽介、松橋章太とともに流動的なアタッキングトリオを築いていた。
フィニッシュに専念するストライカーではなく、
組み立てにも参加するプレーエリアの広いフォワードだったと記憶している。
ただし、そういった幅の広さは副次的なものに過ぎず、
当時から彼のプレゼンスはフィニッシュの局面において最も発揮されていた。
高校卒業後、セレッソ大阪に入団した大久保は、
ここでも西澤、森島という日本有数のアタッカーとトリオを構築することになる。
プレーに幅のある2人の名プレーヤーと共に、大久保は得点を重ねながらも様々なタスクをこなした。
2003年から2004年にかけては、
アテネオリンピックを目指すU-22日本代表や、
当時ジーコが監督を務めていたA代表で数多くの試合に出場する。
この頃の大久保は、代表ではストライカーのポジションで起用されることもあったが、
少なくともクラブレベルにおいては純粋なストライカーという位置付けではなかった。
そのためか、資質的に最も適しているはずのストライカーのポジションで起用された代表戦では、
却ってゴールから遠ざかってしまうという現象が起きた。
オリンピック代表でこそ、最終予選、本大会でゴールを記録したが、
A代表ではこの2年間で17試合に出場しながら、ただの1ゴールも記録することができなかった。
スペインでも通用するだけのポテンシャルはあったと考えているが、、、
今、思えば、大久保はストライカーとして類稀な才能を持ちながら、
MFとしてもプレーできるほどの高度で幅広いスキルを併せ持っていたことが、
結果的にはストライカーとしての覚醒を遅らせる1つの要因となってしまったように思える。
それでも、マジョルカへの移籍というチャンスを掴んだ大久保は、
確実にステップアップしていくかに思えた。
しかし、マジョルカでは、出場すれば印象的な活躍をすることも少なくなかったが、
最後まで監督の信頼を獲得できず、わずか1年半で日本へ戻ることとなる。
スペインでも通用するだけのポテンシャルはあったと私は考えているが、
ストライカーとして、完成していなかった大久保が、
パーソナリティを欠いていると捉えられたとしても不思議ではない。
再びセレッソ大阪に加入した大久保は、かつてのようにゴールを挙げることができず、
チームも2部に降格してしまう。
なぜこれまでの監督はそうしてこなかったのか、理解に苦しんでいるほどだ。
ここから大久保は、ストライカーとしてのキャリアをさらに停滞させることになる。
移籍先のヴィッセル神戸でMFにコンバートされ、さらにゴールから遠ざかってしまうのだ。
それでも、ポテンシャルの高い選手であることに変わりはなく、
当時、長谷部が所属していたヴォルフスブルグから声がかかる。
それに値する活躍をしていたとは言いがたいが、それでもこのようなオファーが舞い込んでくるのは、
大久保が強運の持ち主でもあることを示しているのかもしれない。
しかし、実際にはこのオファーは大久保にとって、決して良い話ではなかった。
前線にジエゴ、グラフィッチ、エディン・ジェコをクラブへの移籍はあまりにも無謀で、
大久保ゴールどころか、ピッチからも遠ざかってしまう。
今度は、マジョルカでの挑戦よりもさらに短く、わずか半年で日本へ帰還する。
クラブレベルでは、そのような状況だったにも関わらず、
サイドハーフのレギュラーとして、ワールドカップに出場したことは、驚嘆に値する。
それでも、大久保がフォワードとしての道を突き詰めていたらという思いは今でも捨てきれない。
大久保は、昨シーズンに移籍した川崎フロンターレで、
ようやくストライカーとしての才能を開花させることになる。
風間監督の手腕を評価する声もあるようだが、
私に言わせれば、大久保をストライカーとして起用することは当然の選択であり、
むしろ、なぜこれまでの監督はそうしてこなかったのか、理解に苦しんでいるほどだ。
ストライカーとしての才能に溢れる大久保は、
その幅広いスキルとキャリア選択(指導者との出会いといってもいいかもしれない)が災いして、
開花の時期を大幅に遅らせることとなったのだ。
次回は、大久保のプレーヤーとしての特性に迫り、このコラムを締めくくりたい。
1/3はこちら → http://chantsoccer.com/posts/111
3/3はこちら → http://chantsoccer.com/posts/126
反町監督の手腕??
大久保とは無縁ですよ
名無しさん | 0 0 |2014/05/23|12:05 返信
返事が遅くなり申し訳ありません。ご指摘の通り誤記です。申し訳ありません。先ほど修正しました。ご指摘ありがとうございます。
ミノル・スアレス | 0 0 |2014/05/29|22:50