「誤審」と「解釈」 環境改善のカギを握るのはサポーターだ
2016/03/10 17:26配信
カテゴリ:コラム
https://www.youtube.com/watch?v=AyHy70-fm4E&feature=youtu.be
3月5日の土曜日に行われた
J1 1stステージ第2節 川崎と湘南の試合。
4‐4の乱打戦となったこの試合のきっかけは
湘南の1点目の際の、微妙な判定だったかもしれません。
高山薫のクロスを川崎のGKチョン・ソンリョンが直接キャッチ
・・・と思いきや、ここへキリノがやや遅れてのチャレンジ。
チョンはボールをこぼしてしまい、ボールは川崎ゴールへと転がります。
高山啓義主審はゴールを認め、湘南がスコアを1‐1としました。
前節の王者・広島戦において
素晴らしい守備を見せての完封勝利を挙げたことで
今年の川崎の守備はひと味違うぞ、というところを見せただけに
この失点をきっかけにして打ち合いとなり
勝ち点1の獲得に留まる結果となってしまったことは
川崎にとって不運以上のものがあるでしょう。
そして、この場面についてライターからサポーターまでが
これを「誤審」だとして、物議を醸しているということです。
「キーパーチャージ」という反則は無いが・・・
前提として言えることをまとめると
①キーパーチャージという反則は97年に廃止されており
GKもフィールドプレイヤーと同じ基準での判定となる。
②ただ、捕球中や捕球直後、または捕球のためにジャンプした状態においては
フィールドプレイヤーよりも基準が厳しくなる
ということです。
今回のケースでは、上記の②が大きく関わっていると思われ
これがファウルでないと、試合の安全な進行について責任を負う審判員としても
特殊なポジションであるGKの保護が非常に難しいものとなってしまいます。
高山主審はどう「解釈」したのか?
では、なぜ高山主審はこれをファウルとしなかったのでしょうか。
言い方を変えると、この競り合いがファウルでないとしたら
いったいどういう状況だった時なのでしょうか。
そして、どういう「解釈」が為された時なのでしょうか。
それは、チョンが捕球する前にキリノがボールに触った場合です。
それならば、キリノのヘディングシュートということになりますし
接触も、プレー後のあの程度の接触ならば
ファウルになるとは考えにくいものがあります。
高山主審はキリノが先に触ったという「解釈」をしたのではないでしょうか。
もっとも、公式記録はオウンゴールです。
従って、その「解釈」は公式に、そして即座に否定されたこととなります。
スロー映像を見ても、やはりチョンの捕球段階において
キリノがつっかけたと見るのが自然と言えます。
やはり、キリノのチョンへのファウルを認め
ノーゴールとするのが妥当だったと思います。
「誤審」と「解釈」
物議はそこから発展して
「誤審」が出た際には謝罪し、公式に非を認めるべきだ
という記事が中心となっていると思われます。
ただ、ここで疑問に思うことは
どうすればサッカーと審判員を取り巻く環境が改善されるかということであり
もっと言うと、そうすることで環境改善に繋がるのか?ということです。
審判員批判で目に付くのは
ライターによる選手擁護の延長線上にあるものや
一部サポーターの審判員への人格批判や、過去のトラブルの晒し上げです。
売文からストレス発散まで、利害が関係した言論が目立つ
というのが現状ではないでしょうか。
公式に謝罪したところで
その手の人達の、その類の批判を助長するだけとなり
サッカー界のためにならないのではないか、ということが疑問としてあります。
そもそも、審判員がトラブルになることは年に数回程度であり
その「トラブル」といっても
昨年のG大阪と川崎の1戦における
岩下敬輔のプロフェッショナルファウルの件のような
的外れな審判員批判も含まれます。
そして今回のような、審判員の「解釈」もどうやら間違っていたようだ
というようなことは、年に何回も起こることではありません。
つまり
「審判もプロ」とは言いますが
「審判は(トラブルを年間でその程度の回数に収める)プロ」
ということです。
「選手は命がけでやっている」とはよく言われますが
プロフェッショナルレフェリーであれば
審判員も生活を懸けてやっています。
ここがあまり言われないことは非常に残念なことです。
審判員を取り巻く環境改善へ向けて
審判員の批評をするのであれば、ルールへの精通は欠かせません。
しかしそれは、商業ライターならともかく
サポーターとしては難しいものがあります。
ならばと、環境改善のためには
ルールへの精通とそのリアルタイムでの運用に
一番の精度を持つのが審判員であるとして
その「解釈」に思いを馳せることがある程度必要ではないかと考えます。
それはサッカーと審判員を取り巻く環境に、良い影響をもたらすはずです。
なぜなら、審判員を批評するエネルギーを
選手のサポートに回すことができるからです。
ありがちな例でいえば、ゴール裏のサポーターがオフサイドの判定に対して
ブーイングの声を挙げることに何か意味はあるのでしょうか?
この場面においては、副審への「解釈」への理解を示すことで
そう言った部分のエネルギーを、選手のサポートに回そうということです。
選手の擁護だけがサポートではありません。
より質の高いサポートのために
今回は、審判員の「解釈」への理解を深めてはどうかという
「サポーターハック」の提案でした。