CHANT(チャント) マンチェスター・ユナイテッド

"サー"はなぜ問題を解決できなかったのか 2/3

2014/04/24 21:33配信

ミノル・スアレス

カテゴリ:コラム

スコールズの後継者に仕立て上げられたトム・クレバリー

アンデルソンが一向に大成しない中、次にスコールズの後継者として期待されたのが、トム・クレバリーである。クレバリーは、昨年のワールドカップ予選で、イングランド代表で10番を背負うなど、ユナイテッドのみならず、今後のイングランド代表を背負う存在として期待された選手である。しかし、イングランド新時代の象徴と言われたトム・クレバリーという選手は、マスコミが作りだした偶像である。本来のトム・クレバリーは極めて凡庸な選手であり、それゆえ、ファーガソンが本当にクレバリーをスコールズの後継者として期待していたのかには疑問が残る。少なくとも、数年後にそのレベルまで成長してくれることは期待していたかもしれないが、現状を見る限り、その期待にすら彼は答えられそうにない。

既に多くの方が、トム・クレバリーがユナイテッドの中盤を任せられる器ではないことに気付き始めているが、そもそもマスコミに対する過激な発言とは無縁の彼が、このような過大評価、過剰な期待にされることになったのであろうか。きっかけは、2011-12シーズンのユナイテッドへのレンタルバックである。その前のシーズンにウィガン・アスレティックでプレーした彼は、及第点を与えられる活躍はしたかもしれないが、とりわけインパクトのあるパフォーマンスを披露したわけではなかった。しかし、不運にも(彼がそう思っているかはともかく)、彼の帰還は、ポール・スコールズの引退と重なってしまい、その後継者を渇望していたメディアやサポーターは、クレバリーを後継者に仕立て上げたのである。彼がユナイテッドのアカデミー出身であることも、論調を加速させる要因となった。彼が他のクラブの出身であったなら、「本当にスコールズの代わりが務まるのか。」と懐疑的な目で見られたかもしれない。「クラブの生え抜きがスコールズの後継者であってほしい。」という願望が、サポーターを盲目にしたのである。こうして、彼は本来の能力以上に優れた選手だと評価されることになった。

トム・クレバリーはセントラルミッドフィルダーの選手ではない

そもそも、私から見たトム・クレバリーという選手は、スコールズの後継者でないことはもちろんのこと、セントラルミッドフィルダーの選手ですらない。彼がその力を最大限に発揮するのは、バイタルエリア付近だ。そこから、スルーパスやワンツー等のコンビネーションでゴールに迫るプレーを得意としている。逆に言えば彼が活躍できるのは、そのような極めて限られた局面だけであり、本来、セントラルミッドフィルダーに求められる、中盤でのいわゆる舵取り役としてのプレーは得意としていない。それどころか、そういったタスクをこなそうという意識すら低いように感じられる。ポジショニングが高すぎる傾向があるのもそのためであろう。

プレーセレクションの悪さも私にネガティブな印象を与えている。彼がエゴイスティックな選手だとは思わないが、チームとして最適なプレーよりも、いかに自身の得意なプレーをするかを優先しているかのように見えるのだ。彼のプレースピードはどちらかと言えば速い部類に含まれるであろうが、それは常に一定で、遅攻が有効な場面においては、しばしば攻め急いでしまっているように映ることもある。また、彼のファーストチョイスは常に前に向かったプレーなのだろうか。横パスが前方へのプレーが無理だった場合の妥協的な選択肢となっており、その結果、パスのタイミングが遅れ、味方のプレースピードを不必要に落としてしまうことがあることもしばしば目につく。

ディフェンス能力が低い点も、本来はセントラルミッドフィルダーとしての大きな欠点といえるが、それは前任者のスコールズも同様であるため、目を瞑ることにする。以上を踏まえると、彼の適正はセントラルミッドフィルダーではなく、トップ下にあるといえるが、残念ながらトップ下としても、ビッグクラブでプレーするだけのポテンシャルは無いように思える。彼を見ていると、プレースタイルこそ異なるが、将来を期待されながら、ユナイテッドからエヴァートンに放出されたダロン・ギブソンを思い出す。実際にギブソンと同様、若くして中堅クラブに放出されることになったとしても、何ら不思議ではない。

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