"サー"はなぜ問題を解決できなかったのか 1/3
2014/04/24 21:26配信
カテゴリ:コラム
※この記事は、2013年10月22日に私が別のサイトに掲載したものを改題して転載したものです。
ファーガソンは応急処置により、問題の顕在化を防いでいた
昨期の王者マンチェスター・ユナイテッドは、先日行われた、プレミアリーグ第8節、サウサンプトン戦に引き分け、8試合を終えた時点でその成績は3勝2分3敗と、首位を走るアーセナルに早くも勝点9差をつけられる、かつてない苦境に立たされている。今期3勝目をあげた第7節のサンダーランド戦も負けに等しい内容だった。そろそろ、モイーズ擁護派の私も、自身の考えが誤っていたことを認めなければならないようだ。昨シーズンとほぼ同じメンバーで戦っているにも関わらず、成績が落ち込んでいるのは、監督の力不足に他ならないという声も聞こえてくる。しかし、ユナイテッドは本当に昨シーズンと同等の戦力で戦っていると言えるのだろうか。
ユナイテッドの問題は意図も簡単に失点を許すディフェンスにあるという意見もあるが、私の考えは違う。ユナイテッドの問題はクリエイティビティの欠如である。そしてその原因は、かつてジダンが世界最高のミッドフィルダーと評したポール・スコールズの後継者が未だ見つかっていないこと、つまり、プレーメーカーの不在にある。これは2011年の夏に、ポール・スコールズが一度目の引退を決意した以降、ユナイテッドが長らく抱えている問題だ。今思えば、2011年のチャンピオンズリーグ決勝でバルセロナに敗れてから、ユナイテッドは下降線を辿り続けている。
この後に及んでまだモイーズを擁護するのか、そう思われるかもしれないが、プレーメーカー不在に関しては、私は必ずしもモイーズの責任ではないと考えている。ファーガソンは、当然ながらこの問題の解決を試みたが、結局、答えを見出すことはできなかった。それでも、ファーガソンは、スコールズの復帰とギグスのコンバートという応急処置を施し、問題が顕在化するのを防いできた。そういった意味では、やはりモイーズの手腕に問題があるといえなくも無いが、スコールズが引退し、ギグスは40歳を迎えた今、同様の応急処置を施すことはできない。私が昨シーズンと同等の戦力という意見に頷くことができないのはこのためだ。
アンデルソンのコンバートは衝撃ではあったが、、、
ファーガソンが初めに新たなプレーメーカーの確保を試みたのは、2007-08シーズンだ。このシーズンが始まる前に、ユナイテッドはアンデルソンとナニを獲得した。当時は、両者をウイングの新戦力とみなす妥当な意見が大半を占めていたが、中にはロナウジーニョとも比較される超絶技巧を持つアンデルソンをギグスの後継者に、同胞のクリスティアーノ・ロナウドと同じウイングを主戦場としながら、よりプレーに幅のあるナニをセントラルミッドフィルダーにコンバートして、スコールズの後釜に据えるのではないかという興味深い予想をするジャーナリストもいた。実際に、ファーガソンはウインガーをセントラルミッドフィルダーにコンバートしたのだが、驚くべきことに、コンバートされたのはナニではなく、アンデルソンであった。当然、アンデルソンにセントラルミッドフィルダーが務まるのかという懐疑的な意見もあったが、アンデルソンは確かな技術に裏打ちされたパスと、恵まれた体躯を活かしたプレッシングで、セントラルミッドフィルダーにも適応できることを示して見せた。
しかし、結局のところ、良くも悪くも天才肌の選手だったのか、ポテンシャルの高さは随所で感じられるものの、1試合を通しても、シーズンを通しても、継続性を欠き、6年が経過した今もレギュラーの座を獲得するには至っていない。当時、私はアンデルソンのコンバートに衝撃を受けるとともに、やはりファーガソンの眼力は別格であると感じたものだが、今となっては本当にそれが正解だったのかはわからない。アンデルソンのプレーからはフレア(閃き)が失われ、ナニはインテリジェンスの感じられない単調なプレーヤーになってしまった。このようなあまりにも残念な現状を目の当たりにし、もしあの時、アンデルソンではなく、ナニをセントラルミッドフィルダーにコンバートしていたらといった妄想が頭をよぎるが、既に結果は出ている。ファーガソンにとって一度目のスコールズの後継者探しは失敗に終わったのだ。
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