CHANT(チャント) 流通経済大学サッカー部

【RKU】 3年ジャーメイン良 すべての「リアル」を掴む背番号10の戦い 【流通経済大学】

2016/05/02 12:06配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


Jリーガーをはじめプロサッカー選手を多く輩出し、名門と呼ばれる強豪校 流通経済大学。
部員は約240名。
その中でチームの「顔」となる背番号10を今季背負うのは、3年生のFWジャーメイン良だ。

1年生からチームのタイトルへと向かう試合に出場してきた経験を持つ彼は、今季3年生を迎え背番号10を背負う。
サッカーにおいて背番号10は言うまでもなく、特別な番号だ。

そこに課せられる期待は大きい。

流経大付属柏高から流経大へと進学し、3年目となったジャーメイン良選手にお話を聞いた。

●サッカーを始める前からターゲットを定めた 乗り越えるべき相手

小学校3年生からサッカーを始めたと話すが、サッカーをはじめる前から決めていたことがあるという。
「同じ学校にサッカーがめちゃくちゃうまいと言われているやつがいた。絶対にそいつよりうまくなると決めて、サッカーを始めた」
サッカーを始める前から、身近にいる同級生を「目標」にするのではなく、「ターゲット」として定め、同じチームに入り、追い越すための日々を重ねた。
「自分で聞くのが悔しかったから」と現在同じ流経大でプレーする弟にその同級生がプレーするチームを聞かせ、あえて同じチームに入り、サッカーをはじめた。

その身近な同級生に追いつくために「高校まで付けていった(笑)」という。
同じチームでチームメイトとして切磋琢磨し、サッカーがうまいと言われている友の背中を追った。

現在はFWだが、小学生の頃はサイドバックを任されていたという。サイドバックの選手ながらも「当時から得点を獲ることが好きだった」と話す。
中学1年の終わりにFWへと転向を告げられ、本格的に得点を取ることが求めらるポジションとなった。

高校は名門・流経柏。
千葉県は高校サッカーの名門が多く、市立船橋や習志野高校、八千代高校等に加えJクラブユースである柏レイソルU-18、ジェフ千葉U-18と高校生年代のサッカー激戦地区だ。
ジャーメイン良が3年生時、流経柏は高円宮杯プレミアEASTで優勝し、WEST優勝のヴィッセル神戸とのチャンピオンシップではPK戦までもつれる熱戦となったものの試合を制し、高円宮杯優勝を果たした。
強豪故に当然激しい競争が存在した中で「自分でもなぜ出れていたかわからない。特に高校生の頃は特徴のない選手だった」と振り返る。

サッカーをやり続けてきた中で、漠然と目標にあったプロへの道。
標的として追いかけた同級生の背中を追いながら、将来プロサッカー選手になれたらいいなと思い描きサッカーを続けてきた。
しかし、それは本当の意味で目指していたのではないと、大学に入り知ることとなる。
プロサッカー選手を目指すということはどういうものか。流通経済大学に入り本格的なその道を知ることとなった。

●流経大で変化した「考える」ということ

ジャーメインは1年生の夏に、トップチームへと昇格。
夏には総理大臣杯が待っていた。
連覇のかかった総理大臣杯で、チームは見事優勝。大学タイトルの瞬間を全身で感じた。
4年生たちの存在感が大きいチームで、引っ張られ戦った夏の陣。
プロになるのだと本格的な「リアル」になったのは、プロを目指し注目される流経大のトップの選手たちと揃って戦うようになってからのことだった。

流経大に進み、自分に変化があったことを自身が感じ取っている。
「高校生までの自分は役割を監督やコーチに与えられて、それをこなす選手としてプレーしていた。
大学では自由にやらせてもらえている反面、自分で考えながらプレーすることが求められている。すべてを与えられて動くのではなく、自分で考えて自分で乗り越えてプレーすることが求められているので、考えてプレーすることができるようになった」
と、その変化を話した。

中野監督は選手たちに「考えること」を与えるようにしている。
どの選手たちであっても、すべてを与えることはせずに、選手たち自身に考えさせる。
指導の中ですべてを与えてしまうと、選手たち自身がサッカーはもちろん、物事について考えることができなくなってしまう。
自分がどうしたら良いのか、自分にはどういったことができるのか、なにを求められているのか―。
答えは自分で探させる。
中野監督は、流経大の選手たちを監督イズムに染めるのではなく、選手たちが疑問を解決しながら自分を探ることで自らの力で成長することに繋げている。

そしてジャーメインの大きな特徴のひとつであるスピードは、大学に入ってから特徴といえるほどに成長した部分だと話す。
「大学に入ってから足が速くなった」というのだ。
それは練習からという理由ではなく、「血」だという。
アメリカ系ハーフであるジャーメイン良だが、ハーフ選手が持つ特徴は18歳から開花するという話があるという。
同じく流経大1年のGKオビ パウエル オビンナもアフリカ系ハーフだが、彼も18歳頃から肩が強くなったりと身体的変化を感じているという。
ハーフの選手だからこそ持つ成長期の先に存在する伸びしろ。まだまだここからの伸びがあると自分の「血」にも手ごたえを感じている。

近年は日本サッカー界にハーフの選手が本当に増えた。
Jの下部組織や高校サッカーをみていても、ハーフの選手の多さに驚く。それだけ日本がインターナショナルな国になったということだが、
その在り方の歴史は違うもののさまざまな人種や民族から成り立つフランス等では珍しいことではない。
日本もさまざまな血が入ることで新たな力となり、生む力もあるであろうと感じる。

大学から自らを語る上で欠かせないほどの特徴となったスピードを手に入れたジャーメインだが、
スピードは武器とはいえ、大学でプレーし3年目を迎え今、相手にもかなり警戒されていると感じるようになった。
常にボールが入るときには相手が2人ピッタリと付くようになり、それを打開できなければいけないと感じているという。

「自分のスピードを生かせなければ意味がない。そのためにどうしたら良いのか今考えている」と話す。
自分で考えてプレーする。大学で身に付いた選手としての在り方であり、中野監督が与えた考えるべき課題だ。

大学1年生の頃、自分の一番身近でプレーしていた選手の一人である先輩・江坂任(現・大宮アルディージャ)の活躍等、先輩たちの活躍が気になるというジャーメイン。
プロ一年目となった昨年、江坂はザスパクサツ群馬で13得点を挙げた。
大宮に移籍してからもゴールを決めている。
その活躍は「やっぱり気になる」という。
4年生、そしてチームのエースとして引っ張った江坂と共にピッチの上に立っていた自分と重ねると、よりプロの世界が現実的に感じる。
現実的ながらも自分がそこに立てるという補償はもちろんない。
江坂に限らず、流経大で同じピッチに立ち同じ戦いをしていた先輩たちがプロの舞台に立っている。
自分も絶対にプロの舞台に立つ―。
漠然としていたプロサッカー選手になりたいという夢が本格的に「目標」となり目指すようになったのは、流通経済大学に進み、得た「変化」だ。


●一度「干された」という経験から得た「今」

3年生になった今季。背番号10を背負う。
特別なその番号から連想されるのはやはり「エース」としての期待だ。

「自分はまだまだ結果を出すことができていない。エースだとも思ってはいない」
と話すが、「流経大は全員でハードワークをするチームだから、誰かが一人で得点を獲るチームではないため得点王は出ないチームと言われてきている。
でも自分はそれを言い訳にはしたくない。そういった中でも点を獲れる選手でありたいと思っている。」

そう話すということは、やはりエースとしての「自覚」があるのだ。
チームから期待されていることは「得点」。どんな戦い方であっても得点という部分で結果を出さなければならない、得点を決められる選手でありたいと目指しているのだ。

今までのゴールの中で一番印象に残っているものは、1年生時のゴールだという。

「関東大学リーグを戦い残留を決めた後の、中央大との試合。
残留を決めたということもあって、なにも気負うことなくリラックスしてフラットの状態で試合に入ることができた。
自分では一番良い状態で試合に入り、勝負することができた試合だった。
真ん中でボールを受けて、ドリブルで2枚交わしてシュート。サイドネットに決まったそのゴールが一番気持ち良かった」と話す。
今年、チームの勝利が一番なのはもちろん、それを超えるゴールも生み出したい。

2年生の頃、一度外された時期があったという。
試合に出ていない状況に、「自分はまだ2年だし」という甘え、そして「監督の今の好みの選手が出ているんだ」と勝手な想像を抱き、自分と向き合うではなくその状況が去るのをただ待っていた。
そこで気づいた「干されているんだ」という状況。それを受け入れた時、マイナスではなくそれはメッセージだと受け取った。
「干されているということは、自分に今なにかが足りないということ。それは期待でもあると感じた」とジャーメインはそれをプラスに取り、すべての生活の意識を変えた。
練習はもちろん日常生活でも意識を持って行動し、求められているものはなにか、とそのメッセージを受け止め考えた。

その結果、再び試合に出場することができるようになった。
「まだ2年だから」という考えはなくなった。
4年間の時間は長くはない。少しの時間も無駄にすることはできない。
監督は「みている」のだ。一人一人に必要なこと、欠けていること、変化、成長…すべてにおいて。
そして与える、それぞれへのメッセージ。

受け止めることが、考えることができないと流経大ではピッチに立つことができないということを身をもって知っている。
10の背中はそのことを受け止め乗り越えたからこそ、今あるものなのかもしれない。

今季の目標は、リーグ優勝。
関東大学リーグで優勝することは、全国大会で優勝することよりも難しいとされている。
強豪ばかりの関東の頂に立つことを目指し、試合を重ねチームになくてはならない「エース」を目指す。

「数字を決めるのはあまり良くないので。とにかく多く得点を決めること」
と、目標を語った。

成長を続けるジャーメイン良が3年生となり、背番号10として戦う。
ゴールを決め、チームを勝利に導くこと。献身的かつ得点も決めるそんな選手になりたいと目指す。

与えられた使命に、応えることができた時。
「目標」とするその先に続く道が開かれることに なるであろう。

◇ジャーメイン良◇
1995.4.19生 FW
184㎝ 72㎏
2014 デンソーカップチャレンジ関東選抜B
2015 デンソーカップチャレンジ全日本選抜
2016 全日本学生選抜

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