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【ヴィッセル神戸】 躍進の原動力のひとつである育成という形 【三木谷ハウス】

2014/05/02 14:24配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム

 

昇格を決めたのは歓喜の中というわけにはいかなかった。

1年でJ1復帰を掲げた昨年、神戸は途中首位になるなど1シーズン走り続け、結果として2位でJ1昇格となった。
J1に戻るんだという強い意志はチームをひとつにし、フロントやサポーターもひとつになり昇格を目指し戦っていた。

昇格が決まったのは自分たちが勝って決めたという試合ではなかった。
その日の試合が始まる前に他チームの負けによって昇格が決まったという決まり方で、その後昇格が決まったと聞かされてから挑む試合はモチベーション的に難しく、札幌に敗戦した。
昇格が決まったのは自分たちの力の結果。しかし、そう手放しでは喜べないような試合をしてしまったヴィッセル神戸。

サポーターたちと昇格の歓喜を喜ぶことは、その時はできなかった。


J1に帰ってきた神戸は今、リーグ3位と好調な結果を見せている。
今年から加入したマルキーニョス、シンプリシオ、ペドロ・ジュニオールという能力が高い外国人を核としている。
そこだけ見ると神戸の資金力からの今の結果と思う方も少なくないだろうが、注目すべきは神戸の育成の開花だ。

●神戸のアカデミーの開花

Jクラブには下部組織を持たなくてはいけないというJリーグ100年構想に沿った決まりがあり、各チーム下部組織を運営しているが、神戸の下部組織に今だからこそ注目をしたい。

ここ数年の神戸U-18の結果は著しいものがあるのをご存じだろうか。
昨年Jユースカップでの優勝は14年ぶりの快挙となったのだが、神戸は9年前に下部組織の強化にテコ入れをし、発掘そして育成型クラブを掲げた。

下部組織は2005年からそれまでの土のグラウンドでの練習から、人工芝でのグラウンドにて練習を移したことから始まった。

本格的な育成を目指し、まずは下部組織の選手たちがプレーをする環境面を整えることから着手した。
育成選手たちが練習場に通いやすくなるというメリットを作ることで、少し遠い場所からでも通いやすいように考えられジュニアユースが練習する場所も移動した。
関西には他にガンバ大阪下部組織、セレッソ大阪下部組織、京都サンガ下部組織と複数の下部組織を持つプロクラブがあることで、下部組織のセレクションが行われる際には各クラブのて大量の選手たちがふるいにかけられることになる。
関東圏や関西圏ではJクラブが多いだけにふるいにかけられている選手たちの数も多く、そして複数のクラブのセレクションを受ける選手が多いのだ。
その中で、神戸は通いやすいからという理由で兵庫県内だけではなく、同じ関西圏の各地からも選手たちが通いやすくなるように考慮して新しい練習場が確保された。

●三木谷ハウスのスタート

さらに関西圏以外からも選手たちが神戸でサッカーができるよう、三木谷ハウスという寮も建設された。

三木谷ハウスは選手たちをただ単に寮生として受け入れるのではなく、高校生年代、またはその下の中学生年代でもしっかりとした人間形成の上で関わっていけるような施設を意識して作られた。
寮長になった村野氏、そして寮母を務める村野氏の奥様である村野明子氏はコンサドーレ札幌では有名な寮監と寮母さんだった。

村野氏は日本サッカー協会強化部として任務していた時期もあり、岡田監督が札幌の監督時代に札幌に招聘したスタッフの一人だった。
それと同時にその時寮母としての知識も経験もなかった奥様がコンサドーレの新しい寮の寮母として赴任したのである。

当時の札幌は若手選手たちの度重なる問題に頭を抱えていた。
それまでは寮がなく、練習場近くの数か所のマンションの部屋を借りて選手たちを住ませるといった形で管理していた。
しかし、寮ではなく一般的なマンションの部屋を借りているだけの状況だったため、選手たちの管理ができるわけではなく、若手選手たちの素行のことで何度も問題となった。
そういったことを無くすために造られたのがコンサドーレのしまふく寮だったわけだが、そこで村野夫妻は6年間寮監と寮母を務めた。

札幌の選手たちの素行問題もなくなり、寮生に関係なくたくさんの選手たちが憩いの場、食事の場として活用し、その様子はブログという形で公表され、話題となり、寮母さんの食事はとてもおしゃれで選手たちの栄養を考えた食事として注目を集め、本も出版された。

ユース選手たちからトップの若手選手たち、そして寮生ではない選手たちの良き相談役、そして現地の父親のような包容力も寮監である村野氏の評価はとても高かった。

2008年コンサドーレ札幌がJ1から降格をした年。
その責任を取る形で村野氏が札幌を退社。当然奥様である村野明子氏も札幌を離れることとなったその時。

遠く離れた神戸ではすでに話が動いていた。
三木谷ハウスを建設すると決め着工していた神戸の寮のコンセプトは
選手の心に残り、生涯の母校となれるような運営、そして新たな出航にチャレンジするためのアットホームで安らぎのある家とある。
そこで必要なのは村野夫妻のような寮管理者だった。


三木谷ハウスは施設としても恵まれた環境が整う場所として完成し、
そして村野夫妻が寮管理をすることになり、育成選手たち、そしてトップ選手たちの新たな【場】を作りだすことに成功したのだ。

ヴィッセル神戸には「選手会」という日が存在する。
その日は試合数日前にトップの選手たちが三木谷ハウスに集まりみんなで同じ釜のメシを食うといった昔ながらのスポーツのあり方に沿って、一緒に食事を取ってコミュニケーションを図る。
それはヴィッセル神戸の選手たちにとってとても大切な時間となっている。

●提携大学との協力

提携大学、付属高校との育成の提携も注目したいところがある。
ヴィッセル神戸は神戸学院大学との提携をしているが、神戸学院大学付属高校はユースの選手たちの受け入れという形で強い協力をしてくれている学校だ。
どうしてもユース所属の選手になると現在のプレミアリーグの形から遠征の数も多くなり、その他大会の期間になると学校の授業に支障が出てし合うほど神戸を離れることが多くなる。
高校の部活の場合、公欠という取扱いになるがユースの場合そうもいかない。
それもあってユースというクラブチームを避ける有能選手もいるということに着眼している神戸はこの提携によって神戸学院大側と協議し、付属高校へのユース選手の受け入れという形で支援をしていただけないかと提案した。
その結果、付属高校で特待生としての受け入れをしてくれることになり、ユース選手たちは多くこの付属高校へ通っている。

そしてヴィッセル神戸からは、定期的に付属高校サッカー部に育成目的でコーチを派遣し、サッカー指導を行っている。
そして神戸学院大学には監督としてヴィッセル神戸からS級ライセンス保持者である指導者を派遣し、神戸学院大学サッカー部を急速に強化・育成している。
関西にはたくさんの強豪大学があるが、その中で戦えるようなチームになれるよう提携先として神戸は育成を派遣しているのだ。

●9年間の結果

2005年、環境を一遍し、育成クラブとして根付くと公表したヴィッセル神戸の育成組織として
ジュニアユースにてその年からプレーし、トップ選手となり結果を出している小川慶治郎をはじめ、現在トップ選手の中には名のユース出身者がいる。
小川や岩波など将来の日本代表に期待のかかる選手が頭角を現すなど、2005年からはじまった下部組織の育成が今、開花しているといって良いであろう。

昨年Jユースカップで優勝を果たした選手たちの中で3年生はたった3名しかいなかった神戸ユース。
主体が1.2年生となったのには理由がある。
それは黄金期ができてしまったことなのだ。
岩波他、4名のトップ昇格選手が出た時の次の年代はどうしても狭間の世代になってしまう傾向にある。
試合経験を積めない年代となってしまうからだ。
黄金世代は一年生から三年生まで試合に出ることを考えるとその下の学年の世代はなかなか試合に出る機会がないのだ。
黄金世代はチームとして結果を出すと考えるとその数年だけは良いが、その世代が卒業してしまったときに、次の世代が育っていないという傾向にはまってしまうという。
神戸は黄金期を経て、狭間の世代を作ってしまったものの昨年の優勝を経験したメンバーはまだ健在。
今年も強さを発揮することになり、経験を積むことになる6だろう。

目指すべきは黄金世代ではなく、コンスタントな結果が出せるアカデミー
そしてトップに輩出し、トップでチームの核となる選手に育てることだ。

現在の神戸は育成型、選手発掘型のクラブとしては完成系ではなくまだこれから!というところだろう。
撒いた種を温かくそして優しく、時には厳しく育て上げ、やっと今結果として芽が出始めているという手ごたえがある頃だろう。
それらがどんどん開花した時。
ヴィッセル神戸の取り組みはきっと注目を集めることになる。

各クラブにはさまざまな色がありそれぞれの育成があるが、ヴィッセル神戸が今強きチームへと進化している理由のひとつはこういった育成の結果だ。

J2からの復帰を果たし、もう二度と降格はしたくない想いも強いことだろう。
サポーターの応援を見ているとJ2降格を経てまた団結力を増したように感じる。
苦しい時を経験することはチームもサポーターも貴重な体験であり、強くなる大きな一歩のきっかけになる。

ヴィッセル神戸のこれからは、まだまだ未知数。
そこが、各チームから見ると良い意味で「こわい」存在と言えるのではないだろうか。

今年の神戸の躍進、ユースの躍進に注目だ。

ヴィッセル神戸はファミリーです。
そう口にする選手たちが多い。

それは三木谷ハウスの存在やチーム内のアットホームさが選手たちをあたたかく包むからだろう。


ファミリーといえるクラブ。
それは理想形のクラブの形といえるだろう。

 

 

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最高

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2014/10/31|11:02 返信

まちがうな

名無しさん  Good!!0 イエローカード6 2014/05/02|18:34 返信

大変申し訳ございません。訂正いたしました。ご指摘ありがとうございます。

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード2 2014/05/02|19:24

神戸学院大

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|18:34 返信

ご指摘ありがとうございます。
訂正いたしました。大変失礼いたしました。

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|19:25

提携校の略称間違ってません?

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|18:17 返信

ご指摘ありがとうございます!申し訳ございません。訂正いたしました。

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|19:24

「略称」じゃなく「校名」でした。

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|18:19

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