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【RKU】 なぜ流経大サッカー部が本格的チームバスを持つのか。生まれる「影響」 そして「モチベーション」。【大学サッカー】

2016/01/27 20:53配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


グラウンドを目指し道を入っていくと目の前に現れた大きなバス。
大型観光バスを導入するというお話をされていたものの、実際に目の前にするとそのインパクトは相当なものだった。

RKU
と大きく描かれた朱色の大きなバスは、大学サッカー部のバスと一見で理解するのは難しいと感じるほどに
大学サッカー界では見たことのないバスだ。

チームで結果を出すことだけにこだわっているわけではない。
プロへと進む選手たちを養成しているわけでもない。

さまざまなマネジメント力を持って大きくなってきた流通経済大学サッカー部の
次なるマネジメントの仕掛けはサッカー部トップの選手たちが使用することができる巨大な専用バスだ。

数千万円とも言われるそのバスを なぜ大学サッカー部が導入するのか。
お金が余っているわけではない。見栄を張りたいわけでもない。

そこにはさまざまな理由が存在し意味をもっていた。


●新たに導入されたマネジメントの「一手」。

夏の総理大臣杯でお披露目になりますよ―。

昨年5月。
流経大サッカー部を訪れた際、中野雄二監督はそう口にした。

茨城県リーグだった流経大サッカー部を、関東一部リーグ強豪校、そして全国強豪校として欠かせない存在となるほどに急成長させたのは、
指導力という部分だけではない。

少子化と呼ばれる時代となった今、大学にどれだけの生徒たちを集めることができるか、
サッカー部というひとつの部活でどれだけの影響を発信し、地域に貢献し、必要とされる存在になることができるか。
1998年に中野監督が流経大サッカー部の監督に就任してから、監督という枠を超え、マネジメント力を持って新しいことを次々と導入し実現させてきたからこそ、
今の流通経済大学サッカー部が存在する。
多くのプロ選手となった卒業生たちが生まれたことも中野監督やコーチたちの指導や引き出し方だけでなく、マネジメントによるサッカー部の確立があったからこそといえるであろう。

現在の部員数は230名を越え、スタッフの数は10名を越える。
茨城県龍ヶ崎市という茨城県の中でも小さな地域に存在し、決してアクセスも良いとは言えないが、それでも試合には2000名前後の多くの人々が応援に駆け付ける。

Jクラブにも劣らない地域貢献によって、地元の人々にも期待され夢を抱かれ応援される存在となっている流経大サッカー部。
数々のプロ選手を輩出していることによって注目度が上がっていることに加え、戦いを通して流経大サッカー部そのものの魅力に惹かれた人々や興味を持った多くの人々が、東京都内等から龍ヶ崎へと足を運ぶ。
たくさんの人々が流経大サッカー部の「今」を観たい、知りたいと求めている。

流経大サッカー部といえば、たくさんのプロ選手を輩出していることに注目されるが、驚くべきはその環境だ。
大学構内に限らず龍ヶ崎内に存在する巨大で大規模な流経大サッカー部の施設たち。
サッカーグラウンドを複数持ち、屋内練習場に、クラブハウス、ドイツの子供たちが使いこなすサッカーの足元の技術や頭を使ったプレーが身に付くと言われている壁で覆われたコートや
足腰を鍛えるビーチサッカーコート、大学内にはスポーツ部を始め学生たちが使用することのできる地上3階・地下1階建てのスポーツジムやプールなど本格的トレーニング施設も存在する。

Jクラブであっても、ここまで大規模な施設が揃っている場所はない。
しかしそれらは必然ではなく道を創りひとつひとつを実現してきた賜物たちだ。
流経大サッカー部を大きくするために中野監督が考案しプレゼンし創り上げた「今」なのだ。
そこには独自のマネジネントが存在する。

サッカーをするために流経大へと入学した学生たち、そしてそのために子供から手を放し大学のお金を支払う親御さんたちにも
流経大で良かったと思えるような環境でなくてはならない。
と、中野監督は常に心に置いているという。

そして新たに導入された流経大サッカー部における「環境」のひとつ。
それが、大型観光バスだ。

Jリーグのクラブであっても、クラブの持ち物として大型バスを保有しているチームは少ない。
スポンサーとしてバス会社や鉄道会社が付くことでチームバスがあるというチームは多く存在するものの
クラブでチームバスを所有しているチームは、Jクラブと呼ばれるクラブの中でも半分にも満たない。
どんな形であってもまだ専用のチームバスを持っていないというチームも多く、その理由はやはりバスにかかる費用の面にある。

バスのグレードにもよるものの、購入すると~8千万円近くがかかり、リースであっても数千万円がかかってしまう。
バスのペインティングに関しても当然デザイン料、ペイント料が高額となる。

それでも、流経大サッカー部はチームバスを持ったのだ―。

これまでも使用していた、今もトップチーム以外で使用しているバスもある。
だが、それよりも大きく立派な、Jクラブでもなかなか持っていない最高級グレードの大型バスを 持ったのだ。


●チームバスが生む「影響」と「浸透」

流経大サッカー部に導入された大型バスは、トップチームの選手たちが主に使用する。
昨年夏に行われた総理大臣杯にてお披露目となったそのバスに、多くの関係者や報道関係者、大学サッカーファンや他の大学の部員たちが
その大型バスを目の当たりに驚いた。

天皇杯では栃木グリーンスタジアムでの栃木SCとの試合、そして西京極で行われた京都サンガの試合にも、流経大サッカー部はチームバスで堂々会場入りした。

なぜ大学サッカー部がこんなにも立派なバスを持っているんだ―。
多くの人々が抱くその疑問も、マネジメントの一部といって良いであろう。

与える衝撃に近い大きなインパクト。
流経大にはプロクラブのようなバスがあり、それに乗って試合に駆け付ける―。
その現実を目にした人々の記憶に残ることとなる。

大勢の部員が在籍する流経大サッカー部だが、
トップチームに入り試合のメンバーに入ることで、あのバスに乗ることができる―。
という意識が生まれることも、チームバスが生む相乗効果となる。

選手たちが大学でサッカーがしたいと考え進路を決める際には、
早稲田大学や慶応大学といった有名大学を筆頭に、六大学である明治大学や法政大学、都内に存在する国士舘大学や駒沢大学等を優先する傾向にあるという。
立地と大学の知名度、将来的に学歴としてプラスとなる大学名や世間一般へのブランド力などが左右するためだ。
それらライバル校に比べると都内から距離があり、有名大学のような世間的ブランド力という影響力も少ない流経大は、選手獲得、学生獲得として後手となることが多い。
進学は学生だけの問題ではなく、親御さんも含めての一歩となり将来であるため、全員一致で納得しての進学となるには、それらに勝る選択すべき理由がなくてはならない。

だからこそ、中野監督はその他の大学とは一線を画した環境提供や地域貢献等への取り組みや、人間育成の部分に力を入れ、「流経大」らしさを追求している。
「この大学で良かったと4年間を終えた時に感じてもらいたい。」
「他の大学にはないものがここにはあったと実感してほしい。」
それはサッカーにおける指導や日々の生活、学生たちとの関わり方も含めて意識し、環境という部分でも「流経大だからこそ」を与えたいと考えている。

そしてそれらは流経大サッカー部だけが出来れば良いというわけではない、と中野監督。
中野監督はこれまでさまざまなことを切り開き普及に繋がる道を開拓してきた。
そのひとつが人工芝の導入だ。
天然芝はもちろん良いものだが、その手入れや維持にかかる手間と費用、天候に左右されてしまう生き物であることなどから、
人工芝で良いものを作れないかと考えた。
メーカーと何度も何度も協議とテストを繰り返し、人工芝のそれまでのマイナスイメージを覆すような人工芝を造り、
当初は人工芝なんてと言っていた周囲の考え方を一変させるほどのインパクトを与える人工芝を導入し、普及へと繋がった。

都内でサッカーグラウンドが作れるような広い土地を探すことも、その高い土地価で購入することも大変。
ココだからこそ可能だった部分はある、と中野監督は言う。
それでもお金がないから無理。という考え方を中野監督は絶対にしない。
絶対に必要だと感じるとそのためにどうすることでお金が生み出せるか、お金を準備し購入して実現してからどんなメリットがあるか
とマネジネントした上ですべて繋げ、そこに関わるすべての人たちが納得のいく形で導入する。
驚きの現実を実現するのだ。


大型バスも同じく、だ。

大型バスが道を走る。
関東大学リーグの試合や総理大臣杯の予選など都内を中心とした数々の競技場へと走るが
その時にすれ違ったり、バスの周辺を走る車のドライバーたち、すれ違うバスに乗っている多くの乗車客たちや、道を歩く人々など、
たくさんの人々が大きなRKUの文字を目にすることになる。

中野監督は言う。
渋谷に行くとさまざまな宣伝のラッピングカーが走っているでしょう。
一日数百万円のお金をかけて、広告として走らせている。
その広告価値があるからこそ、一日数百万円のお金をかけて広告を出す企業や会社がある。
ならば、あのバスなら―。


大きなその文字と共に
大学サッカー部のバスであるという衝撃も加わることで、大きなインパクトを与えることができる。

あのバスに乗りたい―。
バスに乗るためにサッカーをやる選手はいないが、それでも選手たちが選べる立場にあった時
環境という利点も大きく働くことになるであろう。
さらに、サッカー部内でも230名以上いる選手たちがトップチームで試合のメンバーに選ばれる20数名の選手たちとなることで
あのバスに乗って試合へと向かうことができるという、ひとつのモチベーションにも繋がる。

流通経済大学という大学の名前
サッカー部のバスであることが一目でわかるラッピングとなっており
さらにバスの内部には座席のひとつひとつに東京西川製の低反発マットが敷かれ、
バスにもスポンサーバナーが貼られている。
他にも常陽銀行、KIRIN、TOYO TIRESのバナーが並び
ボディ部分にはアディダスのロゴマークも描かれている。

アディダスのマークはもちろん勝手に使用することはできず、ドイツ本社の承諾が必要となるが
流経大サッカー部のバスに使用しても良いという許可が下り、しっかりと描かれている。

バスに大きく描かれた3つの星は流経大が獲得してきたタイトルの数々が表現されている。
総理大臣杯、関東大学リーグ、そして全日本大学サッカー選手権大会…通称インカレでのタイトルが輝く。


朱色に光るそのバスは、選手たちの、龍ヶ崎の地域の人々の そして大学の未来を乗せ、試合会場へと堂々と走る。

大学サッカー部が可能とした大型バスの導入は、サッカー界への刺激となっていることは間違いないであろう。

なぜ流経大サッカー部がチームバスを導入できたのか―。

できた、のではない。
実現するために、考案しマネジメントしその先の利点を持って誕生したのだ。

簡単な道のりではないからこそ、そのひとつひとつに大きな愛情を持っている中野監督。
チャレンジすることに意味がある。
チャレンジを口にすることに意味がある。

中野監督が何度も言葉にする言葉だ。

 

流経大サッカー部の未来はまだまだ先へ続く。

 

 

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いい記事だと思いますが、常陽銀行?じゃないでしょうか。スポンサーに対していいところで台無し。

名無しさん  Good!!3 イエローカード0 2016/01/27|08:58 返信

大変申し訳ございません。
ご指摘ありがとうございます。
大変失礼な箇所での誤りがあり本当に申し訳ございません。修正させていただきました。読んでいただきありがとうございます。

Tomoko Iimori   Good!!1 イエローカード0 2016/01/27|20:54

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