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【Jリーグ】 チャンピオンシップという形式に感じる「違和感」。真のチャンピオンとは何を指すのか。【CS】

2015/12/11 21:40配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


3月7日から始まった今季のJ1は
12月5日。サンフレッチェ広島の優勝で幕を閉じた。

今季から新たに形を変えて行われた2シーズン制のJ1リーグ。
11年ぶりに復活し決して単純明快とはいえないシステムのNEWチャンピオンシップが導入された。

チャンピオンシップへの出場資格を得たのは
年間勝ち点1位である サンフレッチェ広島
同じく2位である 浦和レッズ
同じく3位である ガンバ大阪。

―果たして、チャンピオンシップは本当に必要だったのであろうか。
改めて思う。
リーグで勝ち点を一番重ねたチームが年間チャンピオンではないか、と。

●勝ち点よりもチャンピオンシップで決める「真の」チャンピオンという違和感。

改めてチャンピオンシップへと出場できる権利の発生をおさらいしておきたい。

・年間勝ち点1位・2位・3位
・1stステージ優勝チーム
・2ndステージ優勝チーム

この5つのチームが出場権利を得ることになるが
・年間1位の広島が2ndステージ優勝
・年間2位の浦和が1stステージ優勝
となったことで、
・年間1位・2nd優勝の広島
・年間2位・1st優勝の浦和
に加えて、出場権利は年間3位のガンバ大阪という形となり
今季は該当が3チームとなった。

複雑なチャンピオンシップの形式だが、年間勝ち点の1・2・3位が出場するという図式となり
年間1位となった広島に、2位・3位の浦和とガンバ大阪が敗者復活のような形でチャンピオンに挑むような形となった。と、いうのが正直な感想だ。
敗者復活という言葉を使うとマイナスなイメージを持つかもしれないが、歴史に残る年間勝ち点74も積み重ね73得点30失点という驚異的な数字を残す広島がどうして年間チャンピオンではないのか。
という不思議な感覚が起こったことは否めない。
年間一番勝ち点を重ねた本来ならばチャンピオンであるべきチームに、2位、3位だったチームが改めてチャンピオンに挑む大会。
それがチャンピオンシップという形式の大会であり、リーグとはまた別物のような大会位置のような感覚を覚えてしまう違和感。

広島を最後まで追った浦和は、浦和の過去最高勝ち点である72に並んだが、年間1位になれなかった。
1stステージを無敗優勝するなど今季の浦和は本当に強かった。年間を通しても敗戦の数は一番少ない。しかし、チャンピオンにはなれなかったという現実。
それだけ今季の年間順位1・2位の戦いは熾烈な戦いであり、多くの勝ち点を重ねた=両チーム強かったといえる。

3位のガンバ大阪は勝ち点が浦和から9も離れ、3位争いを最終節まで繰り広げ3位の位置を得てのチャンピオンシップ出場となった。

チャンピオンシップ準決勝という名の打たれた一発勝負は
年間2位の浦和レッズが、勝ち点9差の3位ガンバ大阪に敗戦を喫した。
延長まで進んだ試合はガンバ大阪の劇的な勝利となり、ドラマがあったものの浦和レッズのサポーターとしては勝ち点が9も下のチームがこれによって「2位」という扱いになることに納得がいかないであろう。
いや、浦和のサポーターは納得がいかないという点ではしっかりと示していた。チャンピオンシップへの反対の意だ。

チャンピオンシップ準決勝はタイトルのかかる試合だったが、埼玉スタジアムのチケットは完売せず空席が残った。
埼玉スタジアムの最高層の座席にはSAITAMAの文字がハッキリと読み取れるほどの空席が目立った。
試合2日前のチケット販売ということが左右したように言われているが、決してそうではないであろう。
試合前日であっても浦和のサポーターは埼玉スタジアムを埋めることは可能であろう。それどころか、埼玉スタジアムに入りきらないほどの人で溢れかえる熱気を魅せるであろう。
しかし、2ステージ制に関して、チームをあげて反対してきた。選手、チーム、サポーターが2ステージ制への反対を決定からひとつになって唱えてきたのだ。
だからこそ強く示してきた年間優勝という強い意志。完全優勝することで浦和レッズとして2ステージ制は必要ない、意味がないと示すはずだった。
強い覚悟を持って挑んだシーズンだったからこそ、浦和レッズ史上過去最高に並ぶ結果を出したことも繋がったであろう。
しかし、それ以上に強さを持ったチームが立ちはだかった。それがサンフレッチェ広島だった。
年間1位という場所を獲れなかったという結果を前に、チャンピオンシップという場所が「異空間」となった。
準決勝という場所で広島に挑む相手を決める。その戦いを前に、少なからず年間1位を獲れなかったということがすべてという考えを持ったサポーターや、チャンピオンシップというシステムに反旗を持つ行動として
試合会場には行かないという選択をとったサポーターが存在した形が、あの日の空席に繋がったのではないであろうか。

年間勝ち点9離れたはずのガンバ大阪に敗戦したことで、浦和レッズは年間勝ち点72という結果を持っているにも関わらず、 年間「3位」という位置でのフィニッシュとなった。
違和感を感じずにはいられない。

サンフレッチェ広島とガンバ大阪との戦いは1戦も2戦も白熱したものになった。
試合としては劇的であり、大きな感動を生む試合となった。
年間チャンピオンであるサンフレッチェ広島が強さを魅せ締めくくったものの
これでガンバ大阪がタイトルを獲っていたとすると、議論が確実に起きていたであろうことは想像に難しくない。

もちろんガンバ大阪に不満があるわけでも、ガンバ大阪が悪いといっているわけでも当然ない。
ガンバ大阪というチームの強さを そして熟成を改めて感じることになった3戦だったと思う。
しかし、Jリーグが構想を重ねたというこのシステムにどうしても「違和感」を感じてしまうのだ。

ガンバ大阪はチャンピオンシップ第一戦を埼玉で迎え、その後チャンピオンシップ決勝のホーム&アウェイの2戦と、1週間で3試合という試合をこなした。
年間1位で迎える広島より1試合多いのは、アドバンテージとして考えることはできるかもしれないが、それにしても選手たちを酷使しなくてはいけない日程だったことは確かだ。

チャンピオンシップを限界ギリギリのモチベーションと緊張感で戦った1週間。
2戦を戦った広島は、さらに休むことなくクラブW杯を中4日で迎えた。
試合中の接触もあったもののそれでも3人の負傷者が出たことは、疲労という可能性を関連付けたくもなる。

来季のスタートが早まりJリーグ史上初めての2月開催が決まった。
提案する側のJリーグとしてはたった1週間かもしれないが、各チームとしてはその1週間が大きな1週間だ。
今季、ACLに出場したチームは1月15日前後にスタートし早いスタートとなったが、来季はJリーグだけでなくさらにACLも早まっていることもありさらなる始動が早まる可能性もあり、
リーグが1週間早まったことでどのチームも15日前後の始動となることが見込まれている。

1週間早まったことで雪国のチームは練習場が確保できずキャンプ先から試合会場との往復をすることになったり、開幕2戦をホームは使わずアウェイ連続試合となるという「違和感」がすでに発生している。
この日程を早めた理由。
それがチャンピオンシップ日程緩和のため。というから「違和感」だ。

●どんどん過密になるチームと空白が生まれるチームの格差がある違和感

サンフレッチェ広島が、クラブW杯で1勝を挙げ勝ち進んだが、勝ち上がれば勝ち上がるほどに当然試合が続く。
その後に続く天皇杯は、クラブW杯の影響でさらに残り試合の無理な詰め込みを感じるほどに日程がぎゅうぎゅうとなっており、26日・29日・そして1月1日に決勝を迎える日程となっている。
1週間に3試合を再びこなすことになる日程だ。

もし広島が勝ち進み、休みなく戦うことになった場合、天皇杯決勝まで過酷な日程が続き
さらに来季はACLへと出場するため始動も早く迎えなくてはならない。
2月にはACL、ゼロックススーパーカップ、そしてリーグも開幕することになる。
選手たちは1年の疲れを充分に休めることもできぬまま、また一年を戦う身体作りをしなくてはならず、チームの土台は広島は継続して創っているチームではあるものの一年を戦う準備期間が極端に少なくなってしまう可能性がある。

これは広島に限らず今後、生まれてくる現実だ。
ガンバ大阪がもし優勝していたとするならば今季ACLでも日本のチームで一番高いところまで勝ち上がり、ナビスコ杯も決勝まで進み、ということまでさかのぼると
昨年に引き続き今季はさらに多くの試合をこなすことになっていたであろう。


一年は365日しかない。
うるう年であっても366日。これ以上はどんなに頑張っても増えないのだ。

その限られた時間の中で、こんなにも過密になっていくこと。
そして逆に時間がたっぷりとできてしまうチームとの格差の問題も「違和感」でしかない。

過酷な日程となり、選手たちが故障しやすくなり注目選手たちが長期離脱をしてしまうことや、それによって戦力ダウンし迫力がなくなってしまうJリーグの方が
Jリーグが求めてやまない新規層は定着しないのではないであろうか。

チャンピオンシップで大きなメリットだったことはおそらく露出という部分だったであろう。
地上波放送でチャンピオンシップを放送されたことは、大きなメリットだったかもしれない。
ただ、それならば世間の人たちにもわかりやすいように、昔のように1stステージの優勝チームと2ndステージの優勝チームという図式の方が、わかりやすかったのではないかということにもなる。

昔バブルのようにJリーグが流行し、世間の目がチャンピオンシップに集まっていた時代があったからこそ
普及を求めるのであれば、同じやり方でも良かったのではないであろうか。
その当時にチャンピオンシップを目にしたことのある世代が11年経過したことで子どもを持つ世代になっていたり、孫を持つ世代になっていたりすることで
この試合はね…とチャンピオンを決める方式を説明することだってできたはずだ。
しかし、方式が違うことでよくわからないね。で終わってしまった可能性も否めない。

当時のチャンピオンシップにも矛盾点があり、問題点が浮き上がった。だからこそ年間順位という配慮をした今回のチャンピオンシップが生まれたのであろうが
結果的にチャンピオンシップを行うにあたり、どうしても勝ち点重視ではない矛盾が生まれるのであれば、同じだ。


生まれるお金はもちろん大事だ。リーグの発展にはお金なくして実現はないであろう。
しかし、変えるべきところは、そこなのであろうか。
日程をぎゅうぎゅうにして選手たちを壊し、ヘトヘトになるまでチームを稼働させることや
リーグの開始を早めて雪国のチームが地域密着を掲げるJリーグながら、地域で練習も試合もできない状況にさせることが本当に必要なことなのであろうか。


年間1番勝ち点を重ね、多くの勝利を重ねてきたサンフレッチェ広島が真のチャンピオンである。
それは11月28日に決まったことではダメなのであろうか。

チャンピオンシップという大会で勝利したからこそ、「真の」チャンピオンではない。
チャンピオンシップで優勝したチームは今季であれば広島以外であれば、「チャンピオンシップという大会の」タイトルに過ぎない。


来季は日程を緩和するために日程を早めたというが、その「日程」とはチャンピオンシップの日程を指す。
その分、チャンピオンシップに出場しないチームにとっては公式戦のない期間が増えることになり、
今も天皇杯に残っているチームは公式戦が1か月もない状態で日々の練習をこなしている。
95回もの歴史を持つ天皇杯という大会を、どういった扱いにするのか。
軽視していると感じてしまうのは、私だけではないはずだ。

この「違和感」は、日本サッカーを発展させるのであろうか。


サンフレッチェ広島が優勝したことで示した、やはり年間王者が強いというその有終の美。
「違和感」のないその結果を受けて、Jリーグにどう響いたのであろうか。

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私も、何故最大5チームでのチャンピオンシップを行うことに決めたのか? マスコミにも大きな責任があると思います。「年間勝ち点が過去最高・得失点もリーグNo.1」と大きく報道しながら、一方「下剋上」という言葉で報道する。しかし、チャンピオンシップの1戦目をテレビ観戦してサッカーの醍醐味にひかれた人たちも私の周囲に数人おられますので、ファン層の拡大という意味では一応の効果はあったものと考えられます。ただ、ガンバ大阪が優勝していたら「年間勝ち点が過去最高」という言葉の意味がむなしくなりますし、勝ち点差11も少ないチームが年間チャンピオンということを世界のサッカー界に発信できるのでしょうか?

サンフレ大好き爺  Good!!1 イエローカード0 2015/12/17|11:35 返信

納得し、共感させられました。Jリーグに携わる人たちにぜひぜひ読んでもらいたい記事です。

j8takagi  Good!!0 イエローカード0 2015/12/14|00:51 返信

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