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【Jリーグ】 ノエスタ芝問題から考える芝事情 一年中ピッチがキレイな緑色である理由 【ヴィッセル神戸】

2015/10/09 12:12配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


毎週のように行われるJリーグ。
ホーム&アウェイで行われるため、変則はあるものの月に2回ほどのホームゲームがあり、使用されることとなる。

ホームスタジアムの管理者となっているクラブや、長い期間レンタルという形で契約しているクラブなどもあるが、今現在は自治体が管理しているところが多い。

今、ヴィッセル神戸のホームスタジアムであるノエビアスタジアムの芝問題が深刻となっている。
先週末に行われたヴィッセル神戸×鹿島アントラーズの試合では、芝の悪状況を理由に約1か月半ぶりに行われた試合だったが、その状態は酷いものだった。


●オーバーシートを採用しているスタジアムが多い中、ノエスタは採用していない?できない?

一昔前の天皇杯の歴史などの映像を見ると、芝が黄色っぽくなっているなと感じたことがあるのではないであろうか。
冬になると色が黄色っぽく枯れたようになっているピッチの上でサッカーをするのがあの時代の恒例だった。
高校サッカー選手権でも、黄色っぽい芝であることが多かったなと振り返れば思い返すことができる。

しかし、今は芝が黄色くなっている状態のピッチはあまり見かけなくなった。
冬でも青々としている芝の上で、サッカーができるようになったのは、オーバーシートというサイクルを導入したことによる影響だ。

日本のスポーツシーンにおいて、芝を使ったスポーツは他にも存在する。
サッカー場併設となることも多いラグビーや、ゴルフ、陸上競技、競馬等、芝を必要とするスポーツが年中開催されている。

日本の芝スポーツシーンでは主に、日本の温暖気候に適しているとされている夏芝である日本芝が使われてきたが、冬になると黄色っぽくなってしまうという難点があった。
1年を通じて芝が緑色の状態で保てないかと考えられ、その結果欧州で使用されている寒冷気候型の芝の種を秋に撒布し、夏芝とミックスした状態で冬芝を育て切り替え生育するサイクルが導入された。
それをオーバーシートという。

欧州では、雪が降る時期でもサッカーリーグが動くため、夏芝ではなく寒冷気候型の芝が採用されているスタジアムが多い。
その芝を西洋芝として冬季に使用することで、夏でも冬でも青々とした緑色のキレイなピッチの上でサッカーができるようになったのだ。

元々は日本中央競馬会が、JRA管轄の競馬場で唯一芝のコースを持っていなかった札幌競馬場に冬季でも芝が死んでしまわないようにしながらも、芝のコースが雪のある北海道でも維持できるようにと開発された技術であり、
さまざまな芝スポーツへと普及していった。

現在、そのきっかけとなった同じく札幌に位置する札幌ドームは、ノエスタと同じく屋根のあるスタジアムだが
札幌ドームの芝はサッカーステージが7.5㎝地上から浮くボヴァリングシステムを採用し、サッカー開催時ではない時には屋外にサッカーピッチが移動し
太陽の陽を目いっぱい浴びて天然の風に触れながら芝を育てている。
北海道という、高湿高温の地域ではないため、2種類の寒冷気候型の西洋芝をミックスし採用している。

北海道以外の地域では、夏季に適した芝として今は日本芝ではなく、日本芝よりも繁殖力の高いティフトンという系統の芝が用いられていることが多い。
繁殖力が高いだけでなく、日本芝よりもティフトンの方が冬季に向けての西洋芝をオーバーシートによる切り替えが早いという利点がある。
さらに毎年オーバーシートをすることで、日本芝は繁殖力が弱まってしまうのに対し、ティフトンの繁殖力は強いまま維持されていくという特性を持つことから、サッカースタジアムでは高温高湿に強いティフトンを夏季に採用しているスタジアムや練習場が多いという。

秋に撒かれる寒冷気候型の芝には数種類あり、その地域の気候によって採用されている芝に違いがあるという。
東日本地域と西日本地域の冬の気候の違いもあるため、地域の気候に合わせた西洋芝がオーバーシートによって切り替えられ採用されている。

Jクラブの練習場でも春と秋に芝の養生期としてグラウンドを数週間使わず、違うところや複数面のピッチを持つチームは、いつも使っているピッチとは違うピッチで練習するというチームも多いと思うが、
それはオーバーシートを行うためであり、種が撒かれると10日前後で新たな芝が伸びてくるという。
伸ばして刈るを繰り返すことで、もともとの主となっている芝との長さに合わせ、もともとある主の芝との割合を転換し、季節に合った芝を主にしていくという手法が取られているのだ。

しかし、ノエスタの芝は寒冷気候型の芝を通年通して採用しているという。
高温高湿である兵庫県において、夏季の芝を採用することができず通年寒冷気候型の芝を採用せざるを得ない理由は、やはり屋根による影響であり、日照不足に強いされてきた冬芝を採用してきた。
開閉式となっているとはいえスタジアムを厚く覆う屋根や、スタジアムの構造によって風が抜けないということも関係していると考えられる。
今季は春から梅雨時期までの日照が不足したことに加え、梅雨が明けると猛暑日が続いたことで通年よりもコンディションが落ちたことから難しいピッチとなってしまっているという。

来年全面張り替えをすることが決まり、来年からは夏芝と冬芝が採用され春と秋の2回全面張り替えが予定されているが、オーバーシートのように自然な形ではなく張り替えという方法で
夏芝から冬芝へと切り替えるということは日照や風の問題から自然なる切り替えのオーバーシートには適さないスタジアムなのかもしれない。


●芝は生き物であり、それを管理するスペシャリストたちの想いが詰まっている

Jリーグライセンスの条件に将来的に含まれるスタジアムの屋根問題だが、今後スタジアムの観客席を覆う屋根が導入されることが見込まれている。
観戦する観客にとって天候に左右されず、快適な観戦となるかもしれないが、太陽の位置によってピッチに光がバランス良く当たらないという現象が出ないように構造を工夫することや、それらを考慮した芝の管理やメンテナンスが必要となるであろう。

現在の状況から、ノエスタの芝だけが大きく取り上げられているが、真夏を過ぎる中で味の素スタジアムや日産スタジアム等の芝もボコボコとめくれ上がることや、傷んだ状態であることがわかる状態の時期がある。
これらはコンサートなどサッカー以外のイベントの開催が多くなることも原因のひとつとされているが、スタジアムの維持のためには当然収入が必要であり、さらに首都圏の5万人以上規模のスタジアムということもあり、サッカー以外の用途も必要であるため、難しい。
大規模なスタジアムを維持するためにはさまざまな運営方法があるが、チームのための使用サイクルを第一としているスタジアムも在る。


クラブが指定管理者となっているカシマスタジアムは当然鹿島アントラーズ第一のスケジュールを組むことができ、埼玉スタジアムも浦和レッズ第一で運営スケジュールが動くため、試合を開催するために万全を期した芝の状態が良好な時期が多い。それでも一時期は芝が荒れていると感じる時期もあるのはやはり高温高湿であり高温という部分では埼玉県は特に厳しい状況も関係しているのかもしれない。
埼玉スタジアム2002はこけら落としとなった日韓W杯前の試合で、芝が簡単にめくれ剥がれ酷い状態となった。スタジアムのスタートが芝問題に大きく直面したことでW杯開催前に芝を改めて改良。その大きな問題があったことで二度と同じことを起こしてはいけないと取り組んできたことがわかる。
日本代表の試合が多く埼玉スタジアムで行われるのは警備上の点などさまざまな利点があるといわれているが、芝の状態や信用という点ももちろん汲み取られてのことであろう。

天候や芝の種類、イベントの有無などだけではなく、芝は生き物であるため病気になることもあり、生育が遅れることや雨の日の日数などによっても状況が変わってくるデリケートなものである。
芝の長さを設定し刈り試合日を迎えても、雨で迎えると5ミリ以上伸びた状態で迎えることになり、そういった日には試合開催の前に急きょ芝を刈るメンテナンスを入れることもある。

生きものだからこそ、日々の徹底管理が必要であり、それをプロの経験と技術でメンテナンスを行うグリーンキーパーの存在が大きく関係する。

芝だけでなく、その下の土の固さなども選手たちがプレーする上で重要であり、固いピッチではけが人が生まれやすいといわれている。
プレーをする上で土が固いと、足から身体に伝達される跳ね返りが大きいため身体への負担が大きくなる。

芝と土を統合したクッションバランスなども考え、ボールを速くまわすチームであれば芝は短めに刈り、試合前に水を撒くなどしてホームスタジアムである利点をいかす。、
チーム戦術に適したピッチコンディション作りが可能となることで、ホームスタジアムでプレーすることはホームチームにとって利点でなくてはならない。

しかし、今季ヴィッセル神戸はなかなかホームスタジアムで勝てない日々が続いていた。
それが芝の状態だけが原因ではないかもしれないが、あまりの芝の状態の悪さに開催スタジアムを変更し、神戸ユニバに変更するとチーム状況が好調となったのにはやはり芝との関係性があると考えるのが通常であろう。

先日行われた鹿島アントラーズ戦では、アウェイチームである鹿島の選手のピッチコンディションへの声ばかりが拾われたが、ホームのヴィッセル神戸の選手たちにとってもボコボコでめくれ上がり、砂が水しぶきのように舞うスタジアムでのプレーは
厳しいものがあったであろう。

ノエビアスタジアムは日本国内のスタジアムの中でも、大規模なスタジアムながらピッチと観客席が近く、臨場感を楽しむことのできる
素晴らしいスタジアムだ。
だからこそ、芝の状態が悪く今を迎えていることは本当に残念であり、ノエスタで試合を観たいという人が多くいるからこそ改善を期待したい。
来年には10年ぶりの芝の張替が行われると発表されたが、来季の前に今後の残り試合で大きな怪我やチームの結果に影響が出てしまうような状態のままではないことを願いたい。

一部張り替えただけの部分に凹凸が生まれ、芝が剥げてしまった部分には大量の砂が撒かれ。
ボールが芝によってイレギュラーに飛ぶようなゲームは決して良い状態ではない。


ピッチ練習がはじまる1時間ほど前に、その日の主審やマッチコミッショナーなどがピッチを1周している姿を見かけたことがあると思う。
あれは、その日の芝の長さやコンディションをそれぞれのチームに事前に伝えるためのチェックを行っているのだ。

会場があり、ピッチがあり、試合を行うことができる。
今Jリーグで良いピッチ状態で一年中緑色のピッチの上でのサッカーを観ることができているのは
たくさんの人たちの努力と仕事、気候や状況による日々の格闘、最良に仕上げようというプロ意識の上で
成り立っている。

そういったピッチの上でプレーしていることを チームもサポーターもそして選手たちも
忘れてはいけない必要不可欠なものだ。


当たり前にあるのではなく、目の前に拡がるピッチがあることに
今一度、感謝をするのも大切なことだ。

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LED照明で夜間に生育が図れるようにできないでしょうか?
野菜の生産にLEDが使用されていますが、芝にも効果があると思いますが

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2016/03/07|16:08 返信

イングランドでは専用の照明で芝生を育成してましたよ

名無しさん  Good!!0 イエローカード0 2016/08/27|19:34

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