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【セレッソ大阪】ディエゴ・フォルランが導く未来

2014/04/15 21:14配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム

 

Jリーグが始まり21年目となる2014年。

Jリーグはまた新たな歴史を刻む時を迎えているが、日本サッカー界全体に大きな衝撃を与えたのが、ディエゴ・フォルランの獲得だった。

Jリーグは大物外国人の獲得を各チームに長年呼びかけていた。
狙いは観客数の増加、スポンサーの確保といったビジネス的な要素はもちろんだが、大物外国人を呼ぶことによって得られるレベルの向上も含めての影響を見越してのことだ。
Jリーグはそのためなら支援金を出すだけでなく、代理人交渉などを含めサポートすると各チームに呼びかけていたという。

その中で唯一手を上げたのが、セレッソ大阪だった。

極秘に行われたJリーグ・セレッソ大阪の一大プロジェクトは実を結び、ディエゴ・フォルラン獲得という結果を得ることができた。
そこでセレッソ大阪・岡野社長が口にした言葉を覚えているだろうか。

フォルランという育成

セレッソ大阪の社長である岡野氏が口にしたのは育成という言葉だった。
その育成の部分がどういったことであるか。私的ではあるが取り上げたい。

●増える観客数・グッズ販売

育成とはまた違った部分だが、もちろん増えるのが観客数そしてグッズ販売といった部分だ。
セレッソ大阪は柿谷曜一朗・山口蛍の日本代表の二人を筆頭に人気選手が多数在籍していることもあり、空前のブームといっても過言ではないほどの盛り上がりをみせたのは昨年のこと。
それに加えてさらにスターであるフォルランを迎えたことで、一目見てみたいというファンも増え、チケット争奪戦が起こるほどの観客数を記録している。
それはホームだけでなく、アウェイでも同じ現象が起きており、各地でセレッソ大阪を見たいという声が多く聞かれるようになった。
たとえ相手チームのサポーターであってもフォルランを観たいというサッカーファンが多く、サッカーを深く好きだという人間ほどフォルランは一度見たい、生でフォルランを見れるなんてと感激の声をあげるのだ。

今季に入ってまだ第7節までの終了時点ではあるが、不動の観客数を誇っていた浦和を大きく抜いてセレッソ大阪は観客動員数で圧倒的な1位を記録している。
それと同時にグッズも飛ぶように売れており、フォルラン来日の記念タオルは即日完売、フォルラン関連グッズも毎試合たくさん売り上げがあるという。
フォルラン見たさに来たファンも相手チームのサポーターも記念にと購入するケースも多く、セレッソ大阪を応援しているといった今までの販売ケースとは異なる現象も起きている。

当然フォルランが加入したことでスポンサー各社も大喜びであろう。
それはセレッソ大阪のみならずJリーグのスポンサーも含め、海外からやってきたスターが大きな広告塔となってくれることも期待している。

フォルランが来たことで、海外メディアも目立つようになった。
たくさんの報道陣の中に海外メディアからの取材陣も混ざっているのだ。
フォルランの日本でのプレーは海外でも大きく取り扱われている。
フォルラン移籍の報道を知り、フォルランが成功をおさめた時、他の海外のスター選手たちも日本に渡りたいと道となり得るのだ。
だからこそ、フォルランというひとつの大きな道は今後のJリーグの未来に大きな意味があるものなのだ。

●フォルランという育成

フォルランのこれまでのプレーを見て、こんなもんかとがっかりしているファンも少なくはないだろう。
海外の大物スターがやってきて、もっと一人だけ輝き一人でなんとかしてくれるような選手を想像していた人も少なくはないはずだ。
しかし、そうではないのだ。

フォルランのプレーを今一度見ていただきたい。
確かに、フォルランは一時期のプレーに比べて衰えた部分はある。
ドリブルであんなにつっかからなかっただろうし、シュートを何度も枠外に飛ばすところを見ると衰えたなぁと感じずにはいられない。
しかし、それは足のプレーの衰退。それは年齢と共にやってきてしまうものだから多少は否めない部分はる。

しかし、だ。
衰えない部分。
それは感性だ。
フォルランには世界トップレベルの感性と感覚があるのだ。

わかりづらい部分だが細かく見ていくと思わずため息が出てしまうようなプレーが多々あるのだ。

例えば
フォルランが何度も今試合で見せているのはワンツーの可能性の拡がり。
ワンツーをゴール前で使い相手のディフェンスを崩すようなプレーというのは観客を沸かせるが、基本的にワンツーは
出し手の選手がボールを「ワン」で「ツー」を出す選手に出す。
そして「ワン」の選手が「ツー」を出す選手にボールを出した瞬間に、「ワン」の選手が走りこみ「ツー」のボールを受けて…というのがワンツーで相手を崩すというのが基本だが、

フォルランの場合「ワン」で「ツー」を出す選手に出した後
通常ならば「ワン」を出した後に「ツー」を受けるために走り出すのが通常だが、フォルランはあえて。そこで「ストップ」するのだ。
ワン→ストップ
それはなぜか。
それは相手選手がワンツーだと思い、「ワン」を出したあとに相手ディフェンダーも「ツー」を受ける位置に走り出すからだ。
そこでストップをすることで相手ディフェンダーとの歩幅が4,5歩ほど空くことになる。
そこにできたスペースで「ツー」をもらうことで、相手ディフェンダーを連れることなく、フリーでボールをもらうことができるのだ。

その結果、そのスペースと時間の一瞬の余裕が生まれたことにより、他の選手が連動して入ってきたりすることでフォルランは自由にボールを配球できるようになる。
そして俗に言われる第3の動きとして選手が飛び込んでくることで相手を完全に崩した状態でシュートを打つことができたり、新たにサイドなどに展開することも可能となるのだ。

ワンツーと見せかけた ストップ。
これはフォルランならでは、世界ならではの世界感なのだ。

これは数ある中の一例に過ぎないが、そういったフォルランの世界の感覚にまだセレッソ大阪の選手たちは感じきれていないというのが正直なところだ。
そこで止まっちゃうの!?そこでボール受けないの!?という場面が多々あるのはそういうところなのだ。
しかし、もちろん選手たちは当然それが世界の感覚なのだということがわかっている。
今までのセレッソ大阪のプレーや感性にフォルランが合わせてしまっては意味がないのだ。
Jリーグに順応してしまう外国人であれば世界を知る外国人でなくても良いのだ。

世界感を持っているフォルランだからこそ、そして今は合っていないかもしれないがそれを全うし、それに合わせることができるようになったセレッソ大阪になった時。
セレッソ大阪の選手たちはJリーグにいながらも世界に通用する感覚を持てることになる。
その結果どうなるか。

選手としてもチームとしても大きく成長し、世界の感覚を持った選手になることができるのだ。

そういった部分が随所で おっ!と思わせる部分で出ている。

前節のセレッソ大阪×ガンバ大阪。伝統の大阪ダービーで魅せたフォルランの1得点目。
フォルランはボールを出した時、あの時は確かにわかりやすく呼び込んでいたがそれに一瞬でフォルランのほしい場所に出すことができた山口蛍は素晴らしかった。
日々の練習や実戦を重ねることでフォルランの感覚をつかんできているからこそのボールだった。
山口蛍はフォルランの動きに一番連動している選手だ。
ストップをしてもそれに合わせてボールを出したり、フォルランが作った一瞬の時間に反応し、裏に走り出したりする回数が多いのは山口蛍なのだ。

他の選手たちにもそういった場面は一瞬の場面で多々見られる。
今年ポポヴィッチ監督に代わりポゼッションサッカーとなったセレッソ大阪はサイドの選手がサイドには張らずに中に入れる場面が増えたが、その中でもフォルランは絶妙なタイミングで動き出しスペースを作ってサイドからのスルーパスを要求するような場面がある。
前に長めのスルーパスを出すサイドバックなんて日本ではなかなか考えられないがフォルランは何度かそういった要求をするような動き出しをし、それに周囲は反応できず連動できなかった中で、唯一左サイドバックの丸橋がフォルランの求めていたボールが出した場面があった。
その後フォルランは周囲の連動がないため、ボールを失ってしまったが、丸橋のあのボールはフォルランという育成のひとつであろう。
今までには出しえなかったボールを出すことで新しい形を作った、サイドバックの新たな可能性を生んだパスだった。

セレッソ大阪の選手たちがこういったフォルラン基準のプレーを身体で覚えてそれを出すことができるようになった時。
他のチームとは違った感覚をもって相手には予測がつかないようなことができるチームになるだろう。
それが「フォルランはひとつの育成」と言い切った理由なのだ。

もちろんそれを相手にする各チームも育成という部分に触れることになる。
こういった動きをする選手もいるんだ、全然予測がつかないプレーだったと、当たったことがないとわからない感覚を感じることだろう。

そしてJリーグ全体の底上げという結果になるのだ。

フォルランは全然合っていない。そう感じている方は間違ってはいない。
そうなのだ。
でも、それで良いのだ。
今、Jリーグレベルにフォルランが合わせてしまったら、そこからの発展はなく、育成にはつながらない。
フォルランレベルになれた時。はじめてフォルランを呼んだ結果として結びつくのだ。

世界のスーパースターであるディエゴ・フォルラン。
彼が残すものはセレッソ大阪にとって大きな未来への一歩となる。

フォルランという育成はまだ始まったばかり、だ。

 

 

 

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素晴らしい着眼点だと感じました。以前、確かオシムがメッシの動かないプレーに言及していましたが、mint23さんのいうフォルランのストップと通ずるものがありますね。彼らのような自分ではなく、相手を動かすプレーができる日本人は少ないと感じます。日本の育成レベルだとそれを手抜きとする指導者が多いことに起因している気はしますが、、、

ミノル・スアレス   Good!!0 イエローカード0 2014/04/24|22:17 返信

読んでいただき、そしてコメントをいただきありがとうございます!
遅くなってごめんなさい!
動くプレーや連動するプレーももちろん大切なのですが、そればかりの囚われすぎてしまっているような気もしますねフォルランのプレーを見るとそういうことで生まれるスペースもあるのかと新しい発見がたくさんあってワクワクします。
そうですね、動かせる選手は本当にセンスのようなキラリと光る部分になっていて当たり前ではまだまだありませんよねJリーグでは。
フォルランの獲得、そしてプレーすることで日本の指導者たちのなるほどという発見の結びつきその結果全体の底上げになったら日本サッカーも進化すると思っています。

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|19:42

そんなフォルラン選手が加入したC大阪とFC東京の試合を今週末に観戦してきます!
この日記を参考にフォルラン選手の動きにも目を光らせてきます(^0^)/

cir   Good!!1 イエローカード0 2014/04/16|20:16 返信

読んでいただき、コメントありがとうございます。
遅くなって申し訳ございません!
FC東京戦はセレッソにとっては難しい試合といいますか、力を出し切れずな試合になってしまいました。逆に東京は大観衆の中勝利することができ、良い試合になったのではないでしょうか。
フォルランの意識はこれからきっともっと輝くものだと思っています。
セレッソだけでなく、Jリーグ全体、日本サッカー全体に影響するような存在になってほしいなと思っています。

Tomoko Iimori   Good!!0 イエローカード0 2014/05/02|19:39

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