2014/08/18 13:09配信

Tomoko Iimori

カテゴリ：コラム

 

現在のJリーグにおいて、屈指の好カードといってよいだろう試合が8月16日、埼玉スタジアムで行われた。
浦和レッズ×サンフレッチェ広島の試合で起きたことが今、議論を呼んでいる。

同じシステムで戦う両チームながら、お互いが同じサッカーをしているわけではなく互いにプランが違うチーム同士の戦い。
広島からペドロヴィッチ監督、そしてそのスタッフたちやその下でプレーしたたくさんの選手が浦和に移籍したことで、因縁の対決と表現されることも多い。
この日も3-4-2-1で戦った両チームだったが浦和は積極的な攻撃、広島は徹底的な守備に徹した。
積極的にボールを動かし攻撃を仕掛けたい浦和に対し、広島のゲームプランはとにかく人数をかけて守り、そこから奪ったボールでカウンターを仕掛けること。
それを徹底して行うことをプランとしていた。

浦和は当然ボールを持つ時間が長くなるものの、縦にいれてもなかなか効果的な攻撃には繋がらず広島のディフェンスに遮られてしまう。
浦和はそんな中からセットプレーからゴールをこじあけ、広島が追う形になったものの、なかなか広島はその形を崩そうとはせず、追う立場になりながらも守備的で自陣から動こうとはしなかった。

そのゲームプランに対し、浦和DFであり、広島を古巣とする槙野の行動が議論を呼んだ。

●サッカーやろうぜ!という示し

槙野はボールを止め、両手で広島の選手たちに対し
攻めてこい!とジェスチャーをしたのだ。

それを挑発という捉え方をするか否かは個人的な見解になるのだろうが、挑発だとしても私個人的には槙野のあの行為は古巣広島だからこそだったのではないかと捉えた。
広島にはゲームプランがあり、それは浦和攻略のために準備してきたプランだった。
なので、ゴールを入れられてもそのスタイルを変えることをしないのもまたプランだ。

しかし、槙野はサッカーしようぜ!と 古巣相手だからこそ言ったのではないだろうか。

以前、故松田直樹がアビスパ福岡との一戦にて、アビスパはJ1残留のために得失点差を気にしていて一切攻撃に出るのをやめ守りに徹した試合があった。
試合はマリノスが勝っていて、終了まであと10分ほどという状況だったと記憶している。
アビスパ側は得失点差をこれ以上拡げたくないためにとった苦肉の策だったが、負けている状況でも攻めてこない相手に対し、松田直樹はボールに座り、吠えた。

松田直樹はプレー中にボールを止めボールの上に座り、かかってこい!!と相手を一喝したのだ
試合後、松田直樹は涙ながらに訴えた。
残留や降格はとても大切なものだけど、サッカーは得点することが魅力のスポーツでお客さんもそして子どもたちだってボールが動いてゴールを目指す試合を観に来ている。
あぁいうのは悲しい。と。

槙野の行動はあの時のことにリンクした。

特に槙野は古巣だからこそ、だったのではないだろうか。
広島の力を知っているからこそ、広島に特別な感情を持っているからこそ お前らそんなもんじゃないだろ!?こいよ!と示したのではないだろうか。

ボールが前にいかずイライラして、というよりはもっとお互いに攻めてガチンコでやろうぜということだったのではないだろうか。

もちろん広島のゲームプランも全然間違ってはいない。
むしろ相手選手をイラつかせたのだとしたらそれは手中にハマったといっても良いかもしれない。
しっかり守ってカウンターでというサッカーを否定するわけではないことを理解していただきたい。

槙野の海外を経てからの移籍に関しては、広島サポーターはさまざまな意見を持っており、良く思わない方も多いだろう。
それ故に許せない気持ちを持っている人も多くいるのは知っている。

ただ、私個人的で申し訳ないが、あの行為はただイライラして起きたことではないのではないか?と受け止めたということ。
むしろ広島ともっとガツガツやりたい!という気持ちを前面に出した姿でそこには愛情があるように感じた。

広島が引いたことで浦和の攻撃を防いだ場面はたくさんあり、勝利のためにとったプランだ。
結果的にセットプレーから得点した浦和が勝利したが、広島のサッカーを面白くないという人々もいるだろうが、戦い方・ゲームプランとして間違ったことでは全然なく、それもひとつのfootballだと私は思う。

●守備に効果がないと感じたストライカー

そしてもうひとつ、この日行われた試合で大きく取り上げられる出来事があった。
それは川崎フロンターレ×セレッソ大阪の一戦で起きた。

ここ4試合無得点だったセレッソ大阪が念願の先制ゴールを奪ったものの、その後崩壊。
前半だけで4失点もするという大惨事が起きた。
しかし後半セレッソは後半序盤から一気にフロンターレゴールに攻撃を仕掛けると早々に1点を返し、その後ゴールを重ねもしかしたらもしかするかも!?というようなあと一歩のところまで何度も追い上げた。
しかし、結果的には5失点。4得点したものの5-4というスコアで川崎フロンターレが勝利した。

その試合後、エース大久保嘉人が話した話が物議を呼んでいるのだ。
と、いうのも試合中にセレッソディフェンスにアドバイスをしたというものだ。

自分につくよりも小林悠の位置に付いたほうが良いとアドバイスしたというのだ。
そのアドバイスが作戦だったと捉えたか、それともそんなものは関係なく監督の指示の下で守備をしていたかはわからないが、たしかにセレッソの現在のディフェンスは厳しいものがある。

今でもセレッソは特別と言い切る大久保だからこそ、セレッソの守備形態にこれは…と思ったのかもしれない。
この守備はまずいと感じたからこその助言だった。

しかし、これを余計なお世話と捉える人もいるだろう。選手たちもどう捉えたかはわからない。
ただし、私個人的な見解からするとそれが嫌味かとか余計なお世話とか、親切だとかそういったものではなく
相手にそう思わせてしまったこと、相手が自分たちがやりづらくなっても良いからそうアドバイスするほどのことだったということを重く受け止めなくてはいけないのではないかと思う。

アドバイスをきくかきかないかは別としても、相手に心配されるようなプレーをしていたということは決して良いことではない。

これまでのセレッソは守備としてはなんとか守れていたものの得点ができていない状態だったのに対し、この日は守備が崩壊し、得点しても勝てない試合となってしまった。
これまでの試合でも「なんとか」守れていたという試合が多く、効果的な守備を組織的に行っているわけではないため、改善が必要だという示しになったのではないだろうか。

セレッソ大阪はこれからナビスコ杯決勝トーナメント1回戦でもフロンターレと戦うことになっており、この試合を経てどういったスカウティングをし、どういった試合に臨むか、経験としていかすかが重要となる。

槙野にしても、大久保にしても2つの出来事は全く別のものであるが
2人とも古巣相手だったというところが共通点だ。

そこに愛があったのではないかというのは楽観的だと言われるかもしれないが。
それでも槙野のシーンには鳥肌が立つほどの奮い立たせがあったと私は感じた。

受け止め方は人それぞれであり、選手個人がその理由を発信したところできっとその受け止め方もそれぞれになることだろう。
ただ槙野の一件も大久保の一件も
悪意ではなく、

それもfootballの一場面だったと私は感じた。

 

 

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