CHANT(チャント)

浦和「損害賠償は検討中」。サポーターに損害賠償を求めるべきかを考える。

2014/04/03 05:09配信

ジャックナイフ

カテゴリ:コラム

ワールドカップイヤーの日本サッカー界に水を差す形になった、浦和レッズの横断幕問題。
Jリーグ開幕早々に、世間にサッカーに対するネガティブなイメージを与えてしまったこの事件は、残念でならない。



そんな中、無観客試合という厳しい処分を受けた浦和レッズの社長は2日、報道陣に対して問題を起こしたサポーターに対して「損害賠償請求は検討中」と話した。
果たして浦和レッズは当該サポーターに損害賠償請求をするべきなのか。少し考えてみたい。

サポーターに損害賠償を求めるデメリット

感情的には、「損害賠償は請求するべきだ」というのが一般のファンの意見なのではないかと思う。
問題を起こしたのはサポーター個人であり、浦和レッズではない。
だから、自ら起こした行動で誰かに損害を与えたのなら、それを賠償するのが人として当然だ、と。

確かにこの考えは「この事件だけを考えた場合」には正解だと思う。
しかし、浦和レッズというクラブがこれからも経営をしていくという将来を考えると、もう少し深く考える必要があるかもしれない。

浦和レッズはJリーグを代表する人気クラブだが、それでもピーク時に比べると観客動員数は大きく減少している。
まだスタジアムに来たことがない新規のお客さんに足を運んでもらうことこそが、経営的にはとても重要なことだ。

もし、当該サポーターに損害賠償請求をすると決めたとする。
すると、ゴシップが大好きなスポーツ紙などが挙って一面で「浦和、観客に損害賠償」とデカデカと掲載することが容易に想像できる。
それをよく事情を知らない道行く人たちが目にしたら。
「観客に損害賠償請求するって、怖いな…」と、事実を誤認したイメージを持たれてしまう恐れもある。
浦和レッズにとっては、今回の一発の罰金よりも、長期的には新規層にスタジアム来場の心理的ハードルを高めてしまうことこそ、大きな損失であるとも考えられる。

そもそも、サポーターに損害賠償を求めるメリットはあるのか?

また、損害賠償請求をすることによって、浦和レッズにメリットがあるのかという点も考えてみる。
今回の損害は、浦和社長が「1億円を超える」と話している通り、途方も無い金額だ。
ただ、その金額をそのままサポーターに請求する、という話は筋が違うかもしれない。

今回の制裁の最も大きな理由は、Jリーグが公開したリリースを見ても分かる通り、横断幕が「掲出された」ことではなく、横断幕を「撤去できなかった」ことである。
重ねて、今回だけではなく、2010年から何度もトラブルを起こしていながらも一向に是正されないという「累積」を加味して重い制裁になったのである。
【Jリーグ公式リリース】http://www.j-league.or.jp/release/000/00005691.html

刑法犯罪率が1.6%の現代において、統計的には100人いれば1~2人は問題を起こす人はいる。
つまり、何万人も集まるスタジアムにおいては、必ず何百人かは問題を起こす可能性がある人は混ざっているのである。

誤解を承知で言えば、ルールで犯罪をなくすことはできない。
できることは、できるだけ起こる確率を減らすための「予防」と、できるだけ早く解決するための「対応」のみである。
悲しいことに、これからも今回のような横断幕を掲出する人はいると思う。
だから、そういったことができるだけないように、できるだけ早く解決するようにする努力をJリーグはクラブに義務付けており、それを怠ったから制裁を受けた、というのが今回の制裁の本質なのだ。

そう考えると、1億円の損害の内訳は、ほとんどが運営側に起因すると考えられ、サポーターに求められる額としても浦和レッズという組織にとっては、何の補填にもならない微々たるものではないかと考えられる。
その微々たる賠償金のために、前述のリスクを受け入れるのか。その判断は筆者は決して懸命であるとは思えない。

(決して、当該サポーターに責任はないと言っているわけではない)

サポーターに損害賠償を求めないデメリット

しかしながら、サポーターをペナルティなしでいいのか、という選択にも違和感が残る。
恐らくそれは、前述の「起こる確率を減らすための予防」という意味で、観客に「問題を起こさないように気をつけよう」という動機が働かず、「問題を起こしても平気なんだ」と一部の問題児予備軍に思わせる可能性がある点だ。

極端な性悪説であるが、第三者のなりすましによる問題行為が誘発される恐れもある。
冷凍庫に入った写真を平然とアップするなど、世の中には他人に迷惑をかけることを楽しむモラルに欠ける人たちは少なからず存在する。
このサッカーファン以外にも広く認知された事件を見て、「次にもう一回事件が起こったら勝ち点剥奪」とも言われる現状を面白がり、ファンを装って同じような事件を遊び半分で起こすかもしれない。
こういったファンでない人の悪意ある行為の場合、「無期限入場禁止」というのは何の罰としても機能しない。

ファンではない人が起こした問題の場合、「ファンではない人による悪戯だった」と主張すればいいのではとも思う。
しかし、人の不幸に群がり陥れる風潮の現在において、世論のうねりによって「どうせ言い訳だろう」と非難され、事実が世論に負けてしまう可能性も高い。

さすがに考え過ぎかもしれないが、二度と同じ事件を起こせない浦和にとっては、上記は想定しておかなければならないリスクである。
その場合、きちんと問題を起こした個人にも責任をとってもらう、というシグナルとして賠償請求の前例を作っておくことも大切のように思える。

●明確な答えはない。試行錯誤だけが答えに辿り着ける。

このように、両方の理由を考えると、果たしてどちらが正解なのかが分からなくなる。
しかし、その「正解がない」ということが正解なのだと思う。

サッカーに限らず、この世の中には「100%正解」という選択はあまりない。
いかなる選択にもそれぞれ良い面と悪い面があり、それらを選択して実行して、また問題にぶつかって、それをまた解決する。
どんどん良い方向へ進んでいくためには、その繰り返ししかないと思っている。

浦和レッズはいずれかの選択をすることになるが、どちらを選んでも「サポーターに甘い」「賠償請求なんて酷い」と思わずに、悩んだ末の決断であることを理解し、それを尊重して応援する。
サポーターとしては、その姿勢が大切なのではないかと思う。

また、浦和レッズ以外のサポーターも、今回の事件を「浦和はJ2に落ちろ」「浦和サポは常識がない」といったように、他人事として考えるのは将来に活かせない残念な問題の捉え方だと思う。
今回の事件は、たまたま浦和に起きた問題であり、いつ自分の好きなクラブで起きてもおかしくない。
そう思って、浦和の問題ではなくJリーグファン、またはサッカーファンという枠で自分事として考え、サッカーファンの中で敵対することなく協力して考えていければ、今回の問題も将来に繋がる良い事例になるのではないかと思う。
間違いを起こして、そこから学ぶことで歴史は積み重なってきたのだから。

●最後に筆者の意見を

長々と話したが、筆者としては何の意見も言っておらず綺麗事になってしまっているので、最後に筆者個人の意見を述べたいと思う。
私としては、この手の問題の着地点は、バランスが大切だと思っている。
賠償請求をしないことも大切だし、することも大切だと。

そこで、それぞれの選択のメリットが最も活きるように、当該サポーターの収入に合わせた例えば月収の1/4程度の罰金で着地するのが良いのではないかと思う。
または、よくあるクラブハウスの清掃などボランティアに従事させるなど。つまるところ温情も感じられ、ただ何かしらのペナルティが課すという着地。
そして、「以降クラブに損害を与える著しい行為を働いた場合は、損害賠償請求をすることがある」と正式に公表をする。

これでは今回のサポーターだけ優遇するのか、とお叱りを受けそうだが、私としては「前例の無い重い罰をいきなりサポーターに課す」ことで、その他大多数の新規層にネガティブなイメージを持たれる可能性を避けたいと考えている。
だから、「損害賠償なし」と「損害賠償あり」の中間として、「手頃な損害賠償」という前例を作る。
すると、次に問題が起きた時は多少スムーズに損害賠償を主張でき、問題児にとってのブレーキになるのではないか、という流れが良いのではと思っている。

そして、今回の浦和の判断を、サッカーファン全員で支持する。
とにかく、同じサッカーファン同士で罵り合ったり貶したりで、サッカーファン以外の人にネガティブなイメージをばらまくことが、何より愚かだと考えている。
すると、今回のこの問題は、「浦和の前例」ではなく「Jリーグの前例」として、日本サッカー全体が前に進めるのではないかと思う。

以上が筆者の意見である。
何より、今回の事件が、日本のサッカーの衰退ではなく、発展に繋がる形で活かせればと考えている。


Good!!(66%) Bad!!(33%)

昨年、清水エスパルス戦で警察沙汰になった時に、再発防止策として損害賠償を検討すると発表しているのだから、今回は損害賠償をすべきでしょう。

名無しさん  Good!!1 イエローカード1 2014/04/14|16:04 返信

え?だってこの横断幕、埼スタの管理会社と外す外さないでモメて、結局外さなかったんでしょう。
管理会社に 尊骸賠償の責任かと。

前田慎一  Good!!0 イエローカード0 2014/04/10|00:15 返信

Non Japanese sport..

Tim  Good!!0 イエローカード0 2014/04/09|19:21 返信

同意!!

名無しさん  Good!!0 イエローカード1 2014/04/08|16:00 返信

この記事も読んでみる