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【日本代表】 帰ってきた日本代表 内田篤人 【シャルケ04】

2014/05/28 21:16配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム

 


昨日、日本代表のブラジルW杯前最後の国内試合となる、壮行試合×キプロス戦が行われた。
スターティングメンバーの発表で沸く埼玉スタジアム。

大きな画面に映し出され一段と大きな歓声へと変わったのは、サッカーファンが待っていた顔、そして名前が表示されたからだった。


内田篤人。


内田はやはりピッチに帰ってきた。
W杯のピッチに立つために、内田は帰ってきたのだ。

●帰ってきた内田篤人

内田は間に合うのか。
メディアをはじめ、たくさんのサッカーファンが不安に思っていたことだろう。
どんな時でもメディアに対し言葉を残してきた内田が、はじめて無言の帰国をしたのは2月のことだった。

怪我をして帰国、そして言葉を発さないことがいつもの内田ではないことを物語っていた。
結果的に太ももの肉離れ、そして腱の損傷ということだったが、手術が必要な怪我であった。
しかし、内田は手術という道を選ばずW杯までに回復するための道を選んだ。

以前にも書いたが、腱の損傷というぼんやりとした発表。
きっとこの怪我には大きな名前が隠されている。
手術をしなくてはならないほどの大きな怪我を負ってしまったことは間違いない。

その怪我以上に、内田は覚悟を背負った。
絶対に治すんだという覚悟。
4年間積み重ねてきたことを結果とする覚悟。
そして自分の怪我のために動いてくれる人たちの気持ちを背負う覚悟。

サッカー選手が怪我を乗り越えるためには、周囲の人々の協力が絶対的に必要となる。
信頼関係の下で時間を共有し、細かな行動や痛み、可動域などを確認しながら日々少しの回復を確認することになる。

内田には時間がなかった。
W杯に必ず出るためには、W杯前までに日本代表のサッカー選手として復帰しなくてはならなかった。
サッカー選手として復帰をすることはできても、日本代表の選手としてのレベルでの復帰をしなくてはならないのは並大抵のことではないのだ。

 

復帰か!?全体練習へ参加か!?
メディアはさまざまな情報を発信し、内田の復帰を煽った。

ブンデスリーガ終了まで、内田は全体練習に参加することはできなかった。
所属クラブであるシャルケ04で別メニューをこなし、ボールを使うところまでは回復していた。

その状態で迎えた、W杯選考。

内田の名前はあるのかとたくさんのサッカーファンは心配だったことだろう。
しかし、ザックジャパンにとって内田は必要不可欠であり、回復のスケジュールをしっかりと立てた上で6月に間に合うと踏んでいるのなら必ず選ばれると私は思っていた。
内田篤人がいないW杯は考えられなかった。

以前、執筆した文章でもそれに触れた

内田篤人のW杯、そして…~シャルケ契約延長へ~


サッカーの神様は内田に微笑んでくれるはずだと締めくくったが、
サッカーの神様は、やはり内田にW杯への切符を渡したのだ。

●感謝が込められたゴール

内田は日本に帰国してから本格的なトレーニングを開始した。
海外組の自主トレではフィジカルからボールを使ったメニューまですべてをこなし、鹿児島で行われた国内最終調整合宿では連日の2部練習のすべてをこなした。
公開になったのは冒頭の15分間だけだったため、どんな練習が連日行われたのかはわからないが、かなりフィジカル的にも厳しく実戦練習で何度も確認が行われたようだ。
選手たちがキツイと漏らすほどの合宿を内田は問題なくこなした。

それでももちろん、しっかりとした入念なケアは行われているであろう。
トレーナー、フィジカルコーチ、コンディショニングコーチなど内田を支えるスタッフたちとほんの少しの変化も見逃さないよう、コミュニケーションをとっていたはずだ。

怪我をして長い間実戦から離れてしまうと、どうしても身体も動体視力も衰えてしまう。
それはスーパーである選手であればあるほど起こると言われている。
「出来る」選手はそれだけ脳内でプレーのイメージが一瞬でできるため、その一瞬の判断に自分の身体が怪我明けだとついていけないことが多くなるのだ。
自分の脳内でイメージしたプレーと現実の身体が動かしたプレーの「差」が生まれることで、試合勘が鈍るという言葉が使われるのだ。

その「差」ができる限りで生じないように、怪我をしてる最中は怪我箇所以外の筋肉を限りなくいじめつくす。
他の部分の筋力が衰えてしまわないように筋肉に刺激を与え、鍛えるのはもちろん、その上でベストな体重を維持するのだ。


内田は日本代表選手だ。

それは自分でも重く背負い、誇りを持っていることだろう。
だからこそ、日本を代表する選手としてプレーできるよう、徹底的に身体を作っていたことは間違いない。
怪我をした箇所以外の身体を作り続けていたはずなのだ。
普段は練習や試合で動かしている部分は自然に身体が動くもので筋肉なども自然と出来るのだが、それを人工的に負荷をかけて取り組むのは想像を絶するほど大変なトレーニングとなる。

その過酷なトレーニングをこなし、怪我中に筋力や瞬発力などが落ちぬよう積み重ねていたことだろう。
無言の帰国から、たくさんのメディカルスタッフに相談し、プランをいくつか立ててもらい、その中で内田が道を選びその道の先に向かってたくさんの人が連携を重ね目指した。

 


自分で打ったボールが跳ね返り、そのボールを押し込んだ。
ゴールラインを越えたとき。

内田は指を指し、走り出していた。


やっと笑顔になった内田の顔にあったのは、「感謝」の笑顔だった。


向かった先は、フィジカルコーチの元。

抱きついた腕は強く、「ありがとう」を示していた。

 

前半終了間際、復活のゴールを魅せたのは内田篤人だった。

内田は帰ってきたのだ。
日本代表の誇り高きピッチに。

 

自分が今そこに立っていること、W杯で戦えること

それは自分だけの力ではないことを内田本人が一番よくわかっていた。
たくさんの人の想いが重なり合ったからこそ起こせた、「今」という現実。


内田は、ブラジルの地へ一歩踏み出した。

 

内田は
「選手がピッチの上に立っていますけど、スポーツ選手はけががあって、そういう人たちの助けがあるので。スポットライトを浴びてほしいなといつも思っています」
そう、試合後にもそしてミックスゾーンでも繰り返して言葉にしたという。

そしてこう言った。


怪我にビビッていてもしょうがない。
また怪我をしたら治せばいい。思い切ってプレーすることが大事。

 

選手たちにとって、何か月もピッチから離れることはこわく不安なこと。
大きな怪我をしてしまうとどこか不安を抱えてしまう選手も多く、怪我をこわがっているとそれはプレーに出てしまう。
そうして自分のプレーを見失い、選手としてのピークを迎えてしまった選手も過去にはたくさんいる。


また怪我をしたら、治せばいい。

この言葉は内田の強さを表している。
どんなことがあっても、何度でもここに帰ってくる。そう内田は示しているのだ。


埼玉スタジアムが、揺れた。
会場中が、そして日本中が内田の復帰を心から喜び、そして怪我から復帰した内田を「信じた」瞬間になったことだろう。


試合の中での視野の狭さなど、内田はまだまだ自分の試合勘について万全ではないと話したという。
しかし、怪我をこわがることなく、果敢に勝負に行く姿、滑るところは滑り、身体を当てるところはしっかり当てに行っていた。
いつもの内田がそこには、いた。

昨日の試合については日本代表は全体の6.7割程度の戦い方をしたであろう。
壮行試合というものはそういうものであり、それで良いと思っている。

その中で、内田に「らしさ」が見られたこと、自分のプレーで「復帰」を示せたことが最大の大きなチカラだったのではないかと私は思う。


無言のあの時。


内田の頭には W杯に出られないかもしれない。
と過っていたのかもしれない。


あれから4か月を経て。
内田篤人は戻ってきた。

一度はダメかもしれないと思った、W杯行きの日本代表へ。


戻ってきてほしいというたくさんのサッカーファンの願い
絶対に治すんだ!と自分のこと以上に親身になってくれたスタッフの想い
戻ってくると信じてくれた仲間たちの信頼


W杯に出たいと心の底から願ってきた 自分の魂


4年前。
悔しい想いをした南アフリカから再出発をした内田篤人。

 


たくさんの積み重なった「感謝」を背負って2回目のW杯が今、はじまろうとしている―。

 

 

 

 

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本当に頭が下がる想いです・・どうしたらあんなに心が強くなれるのか、どうしたらあんなに素敵な人間に育つのか・・心から誇りに思います。どうかサッカーの神様、彼を見守ってください。

名無しさん  Good!!5 イエローカード0 2014/05/31|02:42 返信

読んでいただきありがとうございます。
悔しい想いをしてから4年。内田選手は良い意味でとても変わったと思っています。
鹿島時代からシャルケ時代、そして代表の内田選手と本当に違った印象を持ちます。
楽しみです!

飯守 友子 (CHANT編集部)   Good!!0 イエローカード0 2014/06/07|19:05

込み上げるものを抑えられない…
泣ける

名無しさん  Good!!4 イエローカード0 2014/05/31|00:54 返信

読んでいただきありがとうございます。
いよいよ内田選手の2回目のW杯がはじまりますね。

飯守 友子 (CHANT編集部)   Good!!0 イエローカード0 2014/06/07|19:02

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