CHANT(チャント) 日本代表

日本vsイラク 「ハリルと本田の宥和政策」

2016/10/07 19:58配信

武蔵

カテゴリ:コラム

ロシアW杯アジア地区最終予選、厳しい戦いが続くであろう日本ですが

ここにきて、西野朗技術委員長の否定をものともせず

ハリルホジッチ監督の解任論が日増しに大きくなっている印象があります。

結果を得ることで、全てを解決することは出来るでしょうか。


日本は4231です。

海外組の試合勘の問題についてはよく言われますが

秋の国際Aマッチウィークでは、準備期間の少なさが懸念となります。

選手として試合勘に加え、対戦相手の対策に掛ける時間が少ないこと

それに、移動による疲労蓄積を含めた

試合以外の要素でのビハインドが影響すると言えるでしょう。


今回は清武弘嗣が、他の海外組に先んじて帰国しており

本音はともかく、コンディション面で上回っているとして先発起用され

香川真司がベンチスタートとなりました。

また、懸念のボランチには柏木陽介が復帰しています。

イラクは442で守備をします。

オーストラリア戦では引き気味な布陣を敷いたことから

日本戦でも同様の姿勢で来ることが、チーム内外で予想されていましたが

前線から積極的にプレスを仕掛けてきました。

ただ、そこまでの影響は無く、西川周作を含めたビルドアップにより

上手く相手をいなすことが出来ていたと思います。

イラクの日本対策と、ハリルと本田の宥和政策

9月シリーズのUAE戦では

本田圭佑が攻撃のスタートからハーフスペースに陣取り

細かいパス回しを主体にした崩しを志向したことにより

味方のスペースを消し、相手に守られやすい体勢を作らせてしまいました。

昨年6月のシンガポール戦の失敗を繰り返してしまったのです。


これはハリルホジッチ監督の志向、また欧州スタンダードとは相反しており

もはや独断専行とも言える所業でした。

ただ、これは次のタイ戦では概ね修正されていましたので

本田には、戦術を実行し、結果を残すことが期待されました。



しかし、この日の本田もまた、サイドに張らずに、中寄りのポジショニングをしました。

ですが、これはイラクの日本対策への、日本の答えと言えるものでした。


イラクは442で積極的に前からのプレスを仕掛けてきましたが

10分ほどが経過し、スタートダッシュの期間を終えると

そのプレスは、徐々に収束し始めます。


日本はビルドアップの際、両SBが高い位置を取ることが多いのですが

右SBの酒井宏樹が高い位置を取ると

イラクの左SHのアドナン・アリはそれに付いていき

442が崩れ、532のようになる形が表れました。

イラクはCBとSB間が開いたり、横幅を守ることが不得手と見え

5枚にして横幅をカバーする姿勢を見せました。

イラクの左SHが人に付き、532的になることで日本には3つのメリットがあります。

1つめのメリットはSBを高い位置に送りこみ、横幅とすることで

SHであり、よりゴールを求めたい本田圭佑に、ある程度の自由を与えられます。


実際に本田は、コンディションが悪いながらも

中寄りのポジションを取り、右サイドでの攻撃の中心となっていたと思います。

また、決定機は決めなければなりませんが、得点の匂いを漂わせていたことも事実です。


この、イラクの日本対策への、ハリルホジッチ監督の出した答えにより

結果的に、ハリルホジッチ監督と本田の宥和政策が成立しました。



そして2つめのメリット。

イラクの左SHが空けた位置で、日本は攻撃の起点を作ることが出来ます。

もともと442の急所である2トップ脇ですが

カバーするべきSHの位置が下がったことにより

日本はボランチがそれぞれここに進出し、より容易にボールが持てました。


13分過ぎの、長谷部誠から原口元気への対角線は狙いどおりと言え

そこでもらったファウルの流れから得たチャンスは

酒井宏樹のクロス精度を欠きましたが、決定機の手前までいきました。


最後の3つ目のメリットですが

これは単純に、イラクの前線から枚数が減ることで

カウンターの鋭さが鈍化するというものです。

まして、イラクの左SHはウディネーゼでプレーするアドナン・アリであり

彼のスタートの位置が下がることによる恩恵は多大でした。



日本は原口元気を起点と終点にしたカウンターにより先制しますが

遅攻も戦術的には機能しており

前半は日本が概ねペースを握っていたと言えるでしょう。

先制されたイラクの出方と、必然の失点と得点

イラクはリードを許したことで、532となることをできるだけ止めます。

それにより、イラクの中心選手であるアドナン・アリが勢いづくこととなります。

イラクの同点ゴールが、酒井宏樹のもったいないファウルからとはいえ

イラクの左サイド(からのフリーキック)からであったことは偶然ではありません。


日本は準備期間の少なさと指揮官の取捨選択により

セットプレーの守備に割く時間がほとんど無かったと言います。

前半立ち上がりには、失点時と同じくセットプレーから酒井高徳が競り負け

ポスト直撃という場面をイラクに作られており

ハリルホジッチ監督が口にしているとおり

オーストラリア戦に向けて、セットプレーの守備を修正せねばならないでしょう。


では、ハリルホジッチ監督は

そのセットプレーの守備を捨てて、何の練習の時間を取ったのでしょうか。

それは、セットプレーの攻撃に関することでした。



日本の同点ゴールは、残り少ない時間でパワープレーに出た吉田麻也が粘り

サイド奥で得たファウルからのセットプレーでした。

ちなみにハリルホジッチ監督は、パワープレーの練習もしていないようです。


今までセットプレーにおいて、日本の選手がこぼれ球を詰めたゴールというのは

それほど多くない、というかあまり記憶にないように感じます。

山口蛍は「準備をしていた」とし、クレバーな面を見せました。


そして、ハリルホジッチ監督は常々

「PK、または決定的な位置でのFKを取りにいってほしい」と言っています。

今回はサイド奥ではありましたが、得点に繋がりました。

ハリルホジッチ監督もまた、攻撃時のセットプレーの準備をしており

今回は、それが実を結んだ格好です。

この日の日本は、戦術的に優位に立ちましたが

コンディション面、そしてフィジカル面において後れを取った結果

次第に劣勢となり、窮地に追い込まれました。

次に控えるアウェイでのオーストラリア戦も

フィジカル面で劣勢に立たされることは否定できないでしょう。


そして、その戦術面においても、この日の宥和政策は一時的なものでしょう。

あくまで、イラクの出方により、結果的にそうなったにすぎません。

状況が違えば、またハリルホジッチ監督は本田にサイドに張るように求めるはずです。

そして、やがてそれは、本田への要求ではなく、SHへの要求であった

ということになるかもしれません。

変化や新顔を求める向きにより、とかく解任論が騒ぎ立てられますが

戦術面でチームを優位に立たせる指揮官を、どうにかして生かす道は無いでしょうか。

それは、選手の、主力の、そして本田の奮起に懸かっているのではないでしょうか。

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