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ルヴァンカップ準決勝 FC東京vs浦和 「対策の逆手を取った武藤」

2016/10/06 19:26配信

武蔵

カテゴリ:コラム

準々決勝から名称を新たにしたJリーグカップは

その名も、YBCルヴァンカップとなり

その第1回の勝者を決める戦いは準決勝まで進められてきました。


準決勝のカードの1つはFC東京と浦和です。

Jリーグサポーターには今さらの話ですが、相性の上では圧倒的に浦和です。

浦和はミシャ式と呼ばれる特殊なサッカーをします。

攻撃時に415、ときに505、守備時には541、ときに523、343

といったような並びで、今までJリーグで猛威を奮ってきました。


今年も年間順位では首位に付けています。

ただ、この指導者、ミハイロ・ペトロビッチ監督は

日本でまだメジャータイトルに恵まれていません。

今年は未だに3冠の可能性を有しており、今年こそはの気持ちに燃えます。


FC東京は、特にここ最近は、浦和のミシャ式に対して苦しんでいます。

今年でいうと、リーグ戦の2戦では

首尾良く先制するも、深い時間帯で失速し、逆転負けという試合が続きました。

前半から量で、浦和の質に対抗し

その結果、体力的に落ちた終盤は劣勢に立たされるという展開です。


FC東京が90分の中で勝利するには、もっと有効な手立てが必要です。

それが無ければ、第1回ルヴァンカップの王座は見えてきません。



ファーストレグはFC東京のホーム、味の素スタジアムで行われました。

FC東京は「前プレ」が不発・・・

とはいえ、前回対戦から1ヶ月も経っていません。

そして、FC東京は篠田監督が就任してから2ヶ月半ということで

欧州式のゾーンディフェンスを完璧に運用できるワケではありません。

従って、戦術面に関して、大きな上積みはなく

基本的には442での前からのプレス、前プレを武器とします。

それは、前回対戦の試合後会見で「次回もそう変わらない」と

篠田監督が述べたとおりのことです。

ただこの「前プレ」の精度に関しては前回の方が良かったと言えたでしょう。

というのも、この日のFC東京は

浦和のビルドアップに対して数的同数になるように追いかけましたが

浦和は415を基本とするも、ビルドアップが上手くいかないとなると

アンカーが最終ラインに降りてゼロボランチ、505のような形となることがあります。


ここに442で守るチームが数的同数プレスを仕掛けると

2トップ、両サイドハーフに加え、ボランチの片方が相手の最終ラインに付くという

極めてアンバランスでリスキーな布陣が完成します。

そこで外されないようにやるのですが、どうしても外される場面は出てきますので

そうなると、FC東京の残された41と浦和自慢の5トップとの対決となります。


前半18分の場面では、そのプレスを浦和がかい潜り

最終ラインの目の前で、シャドーである李忠成がフリーで前を向きます。

後ろからスプリントした武藤雄樹が、ボランチの橋本拳人を剥がし

室屋成のスライド、カバーリングも間に合わない中で決定機を迎えましたが

シュートはゴールの左に外れました。


これが、この日の象徴的なシーンでした。

FC東京の武器であったはずの「前プレ」が攻略されてしまいました。

FC東京の篠田監督も「前半はなんとかしのいでくれました」と。


これを境に、歪な形でも確かに行われていたFC東京の「前プレ」も鳴りを潜めます。

試合は、浦和のペースで進んで行きました。

FC東京の「対策」を逆手に取った武藤のゴール

FC東京には弱点があります。

それは、相手に横幅を取られた時、最終ラインのCBSB間が開くことです。

これが直接的な原因となり、アウェイG大阪戦では勝ち点を落としました。

そして浦和は基本的に、5トップの横幅を生かした攻撃が得意です。

FC東京はここを締めなければいけません。


これは欧州のトップクラブでも頻繁に起こり得る問題です。

昨今のアトレティコ・マドリードや昨シーズンのレスターなど

442のゾーンディフェンスの運用に血道を上げるコンセプトのチームにおいても

その4で間に合わないところに前線の選手がカバーリングに入り

結果的に5となることも少なくありません。


この日のFC東京は、特に狙われていた小川諒也と高橋秀人の間に

ボランチが落ちることで、セット時の守備において

浦和の5トップに対抗していました。


サッカーはパズルのようなもので、まず初めにボールチャレンジがあり

その次に、カバーリングが必要となります。

そしてカバーリングする状況が発生したら、その穴も埋めなければいけません。

ここで順々に前線の選手が落ちて埋めるというやり方も、最近は出てきました。


昨季のレスターにおいては、最終ラインが5枚となった時に

2トップの一角のはずの岡崎慎司が守備時にボランチの位置に落ちることは

全く珍しいものではありませんでした。


FC東京の2失点目は、まず自分たちがボールを失うという形が悪いものでしたが

浦和が平川忠亮で横幅を出し、小川を引き出し、CBSB間を開けたところに

橋本拳人が落ちる動きを見せています。

ただ、その橋本のスペースを埋める動きはありません。

田邉草民がスライドをして、せめてニアを潰すといった動きもありません。

こういった「対策」に対して、武藤が素晴らしいマーク外しを見せ

その橋本の空けたスペースに落ちてフィニッシュ。

バイタルエリアが、なぜバイタル=致命的な、と呼ばれるのかを体現して見せました。


ミシャ式でなくとも、相手の4バックに対して横幅を出した攻撃を仕掛け

スペースを空けさせる、そのスペースを使う、というのは常套手段です。

4枚では間に合わない、68mという横幅をカバーしきれない。

だからこそ生まれた、最近では珍しくもなくなった発想なのですが

だからといって、大事なスペースを開け放って良いワケではありません。

FC東京の守備からは、大事なものがスッポリと抜け落ちていたようです。



FC東京は日曜日のセカンドレグまでに、守備の修正をしなければなりません。

現実的に「前プレ」を採用するしかない以上、体力的な問題はあるでしょうが

この2失点目のような中盤でのロストを減らすことができれば

この守備も、もう少し精度の高いものが期待できそうです。



浦和は見事な逆転勝利で、アウェイゴールも2つ積みあげました。

ペトロビッチ監督がベンチ入り停止処分の中、先制されながらも

いつものやり方、視野リセットなどを駆使してゴールを陥れたことは

今後のチーム運営にとってもプラスと言えるものでした。



とはいえ、まだ試合は90分残されています。

ペトロビッチ体制初のメジャータイトル獲得へ、一切の緩みも許されません。

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