日本代表メンバー発表 永木の選出から読み取れる2つのこと
2016/10/03 20:32配信
カテゴリ:コラム
9月29日、10月シリーズに挑む日本代表26人が発表となりました。
今回も日本代表は、ロシアW杯アジア地区最終予選に挑むこととなります。
その内訳は、ホームのイラク戦、アウェイのオーストラリア戦ということで
控え目に言ってヤマ場、と言えるでしょう。
そのヤマ場を迎える日本代表のメンバー発表において、注目点がありました。
それは、本メンバー初招集となった永木亮太のメンバー入りです。
永木亮太とはどんな選手?
永木は、国内組の代表候補合宿に呼ばれた経験はありますが
本メンバーへの招集は初めてとなります。
昨年、躍進を果たした湘南において、強い球際
また、カウンターの際の優れた判断力、精度の高い運ぶドリブルとパス
そしてプレースキックを武器に、ボランチとしてチームの中心に据えられ
「ノータイムフットボール」の象徴として活躍しました。
今季、ステップアップを期して鹿島へと移籍を果たした永木は
序盤、なかなか出番に恵まれませんでしたが
セカンドステージ第8節に柴崎岳が負傷欠場すると先発出場するようになり
それ以来、柴崎を2列目に回すなど、チーム戦術の転換もありましたが
ここ9試合で7試合、先発フル出場を果たしています。
ハリルホジッチ監督も「ずっと追跡していた」とし
アピールに成功していた模様です。
上記の特徴を考えると、現代表への選出も納得がいきます。
永木選出から読み取れる2つのこと
我々は、アルジェリアを初のW杯ベスト16に導いた監督を迎え
「日本サッカーの発展に貢献したい」と言わしめていることに感謝し
その通りになるように、そう長くない彼の契約期間の中で
少しでも多くのことを得て、血肉とする必要があります。
それが有意義というものでしょう。
そんな指揮官は、メンバー発表の際に多くの説明をしてくれるのですが
それにしても限られた時間でのものとなってしまいます。
従って、現代表の歩み、チームビルディングに沿って
ある程度、彼の意図を読み取っていく必要があります。
今回の永木招集において、読み取れることは2つあります。
1つは、柴崎タイプではなく永木タイプが必要とされているということ。
もう1つは、代表のボランチは人材不足であるということです。
「柴崎でなく永木」が示すこと
今回初招集となった永木の所属は鹿島です。
鹿島のボランチと言えば、長きに渡り小笠原満男と柴崎のコンビでしたが
特に柴崎はブラジルW杯以降、日本代表に招集され、遠藤保仁の7番を受け継ぎ
このポジションにおける新世代の旗手としての扱いを受けてきました。
しかし、昨年の11月シリーズで招集外となって以来、代表から遠ざかりました。
招集外となってからしばらくは、ハリルホジッチ監督も観察対象だとし
代表メンバーの大枠に入っていることを示唆しましたが、それも徐々に減ってきました。
それはなぜでしょうか。
もちろん、好き嫌いではないでしょう。
それは、ボランチとしての守備力に問題を抱えているからです。
単純なデュエル能力だけでなく、スペースを守ることへの意識も低く見えます。
スペースへの意識が低いと、周りとの関係性で守備をすることが出来ません。
つまり、組織的な守備の構成員としての適性に難があるということです。
そして現在の鹿島では、もちろんケガ人の発生や戦術の転換もありますが
柴崎は2列目で起用されています。
そこでは、伝統的な4222ともいえる鹿島の442においては
2列目の方が生きるのではないか、といった気持ちが起こるプレーも見せています。
現状において、もはやボランチの選手でもないということです。
柴崎がオンザボール時に見せる優れた技術と
遠藤を彷彿とさせる落ち着きは日本人の中でもトップでしょう。
しかし、現代表において、ボランチに求められる適性は、そうではないということです。
ボランチの人材不足への不満
もう1つの方を説明するには、ハリルホジッチ監督の言葉を引用する必要があります。
それは「最終予選はテストの場ではない」というものです。
これに照らし合わせると、永木の初招集は矛盾が発生するように思えます。
ただこれも、これまでのチームの歩みを考えると
それだけボランチに新戦力を欲している、ということになります。
永木が即戦力ではない、とは言いませんが
この最終予選の場において、現在の序列を覆して出場を果たせるかというと
28歳にして初招集の選手としては、その可能性は低いのではないでしょうか。
これまでのチームの歩みとして取り上げたいのは先のUAE戦です。
ここで、柏木陽介、山口蛍らのコンディション不良という問題を解決するため
限られた選択肢の中から、大島僚太の抜擢を選択しました。
これは、端的に失敗だったと言って良いでしょう。
抽象的に言うと、チームは大島を生かせませんでしたし
大島もチームに適応できませんでした。
試合後、ハリルホジッチ監督も任命責任と選択の誤りを認めました。
代表はクラブと違い、時間が少なく
また、日本サッカー界は育成年代から培うべき共通理解が
まだまだ不足しているというのが現状であるため
こういったスクランブル時に採り得る選択肢が少なくなりがちです。
そして、こういったスクランブル時には、どれだけチームに適応できるか
今まで積み上げてきたことに寄り添えるかが、第一に問われます。
その中で初キャップとなり、比較的引き出しの少ない若手の抜擢という選択肢が
序列の3番手、4番手に来る程度には、ボランチの人材が枯渇していると言えます。
また、今回の欧州行脚において、ハリルホジッチ監督が
ブルガリアリーグのベロエ・スタラ・ザゴラの加藤恒平を視察したことも
ボランチに広く人材を求めている証と言えましょう。
今回の代表メンバーは、サッカーメディアが新戦力の登用を求めている中で
招集されたのは永木1人に留まりました。
ただ、ここからでも多くのことが読み取れます。
代表で求められる能力、適性の部分でのアピールを
特に日本人のボランチの選手には期待したいと思える
今回の代表メンバー発表となりました。