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【コンサドーレ札幌】 昇格に必要となる溢れ生まれる一体感を兼ね揃えた「今」持つ強さ 【J2】

2016/07/27 11:40配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


7月20日―。
コンサドーレ札幌×松本山雅戦には、1位と2位の戦いにふさわしく平日にも関わらず12000人を超える観客が札幌ドームに足を運び、天王山であることが伝わる熱気に包まれていた。

どちらも譲らない戦いは試合開始序盤、コンサドーレ札幌・都倉賢が決めた先制ゴールが決まると、
その後も互いにゴールを目指しながら攻防を繰り広げ、力のある限り走り、ぶつかり、激しく戦った90分の死闘は結果的に都倉のゴールが決勝点となり、1-0で首位コンサドーレ札幌が勝ち点3を重ねた。

約1ヶ月ぶりのホームスタジアム・札幌ドームでの戦いを大一番で迎えたことは偶然か必然かで言うならば、必然だったのではないであろうかというほどに
ホームの力を存分に得た大きな1勝だったと言って良いであろう戦いだった。

この試合が終わり、感じた印象はただひとつ。

昇格するチームはこういうチームである―。
という印象だった。


●監督自らが動く細かな行動のひとつから感じる「こだわり」

松本山雅と戦う前2試合をアウェイで戦ったコンサドーレ札幌。
今年の日本列島はラニーニャ現象の影響により酷暑になると言われているが、北海道の今年の夏はかなり涼しい気候が続いている中で
セレッソ大阪と戦った大阪での試合、そしてファジアーノ岡山と岡山で戦った試合と、上位対決となった関西中国地方での気候との差はかなり大きく、選手たちのコンディションを整えるにはかなり難しい試合だったであると察する。

特にセレッソ大阪戦では、札幌のここまでの失点の少なさを象徴する存在であるGKク・ソンユンが傷み試合途中でGKを交代するというアクシデントがあった中、ナイターゲームとはいえ慣れない大阪独特の蒸し暑く気温が高い中で勝ち点1を得たことは札幌にとって決して悪くない結果だったであろう。
続くファジアーノ岡山との試合でもスコアレスドローと、気候条件が大きく違うアウェイの連戦で勝ち点を2戦どちらでも得たこと、そして失点が2戦で0だったことは現在の札幌の好調さを表しているといって良いであろう。

アウェイでの上位対決連戦をスコアレスドローで勝ち点2を持ち帰ったコンサドーレ札幌が、1ヶ月ぶりに帰ってきた札幌ドーム。
サポーターにとってもチームにとっても、待ちに待った札幌ドームでのホーム試合だったであろう。
チームが好調だからこそ、ホームスタジアムで戦うのは気持ちが良いであろうと感じる。
チームが戦い結果を得ることでチーム力がどんどん向上していく感覚を今、選手やスタッフ、サポーターそれぞれが感じているのではないであろうか。

コンサドーレ札幌が現在、首位を走り、強いと位置付けされるのはさまざまな理由が存在するであろう。
しかし、この日一番目についたのは他には観ない「一体感」だった。

試合前にはマッチコミッショナーや主審や副審などが、会場のチェックのためゆっくりとピッチを一周する。
その後、選手によってはアップ前にリラックスを兼ねて芝のチェックに現れる選手も存在する。
ここまではどこの試合でも存在する光景だが、その後ピッチに現れたのはコンサドーレ札幌 四方田監督だった。
監督自らピッチの確認に入り、芝の状態を念入りにチェックする。
歩くその足の感覚、気になったところでは両手に力を込めて芝を押す。ピッチ全面が一定でないスタジアムも当然存在するが札幌ドームは一面安定した整備がされていることが多いが四方田監督は複数個所に移動し自らピッチの確認を行っていた。
芝の長さ、芝の濡れ具合、クッション性…ホームスタジアムである利点としてホーム側が指定できるピッチコンディションがある。
札幌が指定しているであろう状態に整っているピッチであるが、それでも芝のチェックに監督自らが立つということはそれだけ細かくチームが戦う環境での左右に気を配り、把握することを意識しているからであろう。
監督自ら選手たちのプレーに影響が出る部分をしっかりと把握することで試合の流れを読むひとつの材料にもなる。

芝の状態によっては、やりたいサッカーができない場合もある。
芝の長さや濡れ具合によってボールの走り方に変化が出たりボールのバウンドにも変化が出ることもある。ピッチが一面均一ではなくボコボコしている場所もある。
把握をして損はない。情報はできるだけ多くのものがあった方が良い。
監督自らピッチに出てくるその行動はより勝負へのこだわりが強いこと、そして選手たちに伝える材料を多くすることで選手たちの能力を引き出しやすくするであろう愛情を感じた。


●創り出されたものではなく生み出された「一体感」

アップ練習が始まるときには選手たちがピッチに走っていくが、監督やスタッフまで総出で全員が一列に並び挨拶をするのは札幌の恒例ではあるが、
松本山雅との戦いが1位2位対決であるということも関係していたのかもしれないが、この日メンバー外だった選手たちも総出でピッチの横や下でアップの選手たちを見つめていた。
特にベンチ横で選手たちのひとつひとつのアップの練習を真剣な眼差しで見つめていたのは小野伸二だった。
ピッチ横でアップ練習のすべての時間、一度も視線を選手たちのプレーから逸らすことなく選手たちを見つめていた。
その他のメンバー外の選手たちもそれぞれの場所でアップをするチームを見つめていた。

アップのメニューからも変化を受けた。
リラックスが主のアップを行うことが多い中で、より激しく速くボールを回すアップを取り入れるようになった印象を受けた。
速いワンタッチで繰り返されるパス練習は選手たちの息が上がり、より集中してプレーしなくてはならないようなメニューだった。
首位攻防戦ということもあるが、選手たちからはアップから熱気と集中力が溢れ出ており、それをメンバー外の選手たちが見つめることでより志気が自然に上がるような光景に見えたのだ。

前十字靭帯断裂の大けが負い現在戦線離脱している稲本潤一のユニフォームと、アキレス腱断裂の大けがを負ったGK杉山哲のユニフォームがスタッフよって丁寧にベンチに掲げられていた。
「全員で戦っている」
負傷している選手もメンバー外の選手たちも全員で戦っているということが強く伝わってくるのだ。

試合が始まってからもそういった光景は自然に現れた。
ハーフタイムに引き上げる選手たちを迎えるのは、ベンチのメンバーたち。
誰がそうしようと言ったわけでもなく自然発生の形でベンチの選手たちが全員で、ピッチで戦っていた選手たち全員を迎える。
声をかけ肩を叩き迎えてから、自分たちは後半の出番に向けてアップをするため、ピッチへ走り出す。

ハーフタイムを終えると、ピッチで練習していた控え選手たちが再び送り出すと、戦いに出る選手たちも控え選手たちに出番が来たら頼むぞと伝えるように
目を見てお互いを奮い立たせピッチへと向かう。

―。
現在の札幌は、常に試合に出る選手たちと、試合に出ていない選手たちがひとつになっている光景が自然に存在するのだ。

言われてやらされているという形ではなく、ごく自然な形で全員が同じ想いを持って自分にできる限りの行動し、現れているというように見え感じる。
全員で歓び、全員で讃え、全員で一生懸命。
ピッチで戦う選手たちだけでなく、ベンチに控えている選手たちもメンバー外の選手たちもそれぞれがそれぞれ自分のできることをしようとしているのが見える。

全員で勝利するという強い気持ちが見えるのだ。

「一体感」「一体となって」
簡単に口にはできるものの、実はこのひとつになるということが本当に難しい。
チームがうまくいかないときは特に、それぞれの考えの食い違いなどが発生しやすく、ぶつかりやすくなってしまうものだ。
上を目指し同じ目標を持っていても、なかなかひとつになるということは難しく、ひとつになろう!と意識しすぎるとどこか嘘臭くなってしまい違和感が発生してしまう。

これまでに昇格してきたチームに必ず存在したもの。それが「一体感」だ。
それは昇格だけに限らず、J1でリーグ優勝するチームにも同じことが言えるであろう。

技術や戦術も勝つためには必要なものかもしれないが、大きく左右するだけでなく100%以上の力を引き出すことができるのは「一体感」が生めるチカラだ。
いまだ見ぬ力を引き出すこともできるであろう力は一人で生み出すのではなく、信じる仲間と手を繋ぐことで生まれるものだ。

今まさにコンサドーレ札幌に存在するのは「絆」。
ほんのちょっとのことでは崩れないであろう絆がチームに存在し、お互いがお互いを信じ理解し、尊重している。
ただの仲良しこよしではない。そこには特別な存在であるお互いが必要としている絆が在る。


昇格するに絶対的に必要なことは、「ひとつになること」―。

昇格するためにひとつにならなくてはならない、という押し付けた強制ではなく自然発生で形成されてと感じるのだ。

チームのために何ができるか―。
勝利のために向かっているからこそだが、勝利をするためにはチームのためになにができるかを一人一人が考え、決してサボることなく行動しているからこその光景だった。


首位攻防対決を制し、続くホーム月曜開催でのFC岐阜戦では5-0と大勝。
昨年から続きホームで17試合連続負け無しとなった。
札幌ドームにはこれまで以上に、多くの観客が足を運ぶようになっている。
強いコンサドーレ札幌を見たいから、というよりは
この一体感を味わいたいからという人が多いのではないかと感じた、札幌ドームの力。

4万人が入場可能の札幌ドームに12000人以上の観客が入ったといっても、空席が目立つ箇所がもちろん存在する。
しかし、それでも一体感を感じる今のコンサドーレ札幌のホームスタジアムは、サポーターも一人が一人以上の想いを持って、チームに届けているからなのかもしれない。
90分で戦っているというよりは、監督がピッチに芝の確認に訪れた時間やサポーターが戦いに準備をはじめている時間、アップ練習でメンバー外の選手たちも共に見つめる時間…
その戦いに向けて動いている時間すべてがあってこその「今」のコンサドーレ札幌なのであろう。

昇格するチームはこういったチームだ―。
そう率直に、感じた。

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そういう見方をあまりした事がなかったので、とても興味深かったです。私達サポーターも、ひとりひとり出来る限りの事をひとつひとつ積み重ねて、一緒に闘おうと言っています。
最後まで気を抜かず、シーズン最後を良い形で迎えたいです。ありがとうございました。

サポ19年目  Good!!0 イエローカード0 2016/07/27|18:01 返信

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