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FC東京vs柏 「『ラッキー』が左右する試合」

2016/07/20 22:04配信

武蔵

カテゴリ:コラム

年間9位のFC東京は、城福浩監督の去就に揺れています。

その理由としては、2ndステージ・スタートの3試合において

年間順位が15位の鳥栖、18位の福岡に敗れたということで

この先、上位陣との対戦を控え、先行き不安定であること。

また、その負け方が、いずれも後半ATの失点による劇的なものであることが

昨年の堅守を誇ったチームとの落差を指摘する向きを多く感じます。


そして、勝利を収めた17位の甲府との一戦においても

後半43分には立て続けに決定機を作られ、辛くも逃げ切ったということで

内容は褒められたものではなく、その手腕を疑問視するというものです。


城福監督としては

就任1年目、ACLプレーオフからのシーズンスタートなど

いくつもエクスキューズがある中で、そういった声を無くすような試合を

この先、見せていかなければなりません。

年間8位の柏は、そのFC東京よりも一足早く、監督を交代しました。

第3節後、自身の家族の健康上の理由からミルトン・メンデス監督から

現在の下平隆宏監督へと交代し、シーズン途中での再出発を余儀なくされました。


ただ、昨年、吉田達磨元監督のもと

下部組織から一貫したサッカーを志向する姿勢を示した柏において

長きに渡り、その下部組織に関わってきた下平監督のトップチームの監督就任は

かえって好都合である、と言わんばかりの立ち直りっぷりを示し

就任直後の2戦で連続ドローとしたのち

そこから5連勝を達成するなど、驚異のV字回復を果たしました。


復調の要因はやはり、先発メンバーの過半数を占める下部組織出身の選手を中心とした

守備時442から変化した、3142によってポゼッションした際に崩し切る力であり

そこに、強力な外国人が加わるというものです。

「なにもできていない」前半の柏

この試合を論ずるにおいて重要なことは

両チームとも夏場の連戦であったこと、これに尽きると思います。

なぜなら、FC東京は前節からメンバーを2人入れ替え、その効果が出たのに対し

柏は前節と変わらないメンバーで臨み、その弊害が出た格好となったからです。


FC東京の新入幕は、高橋秀人と中島翔哉です。

昨今の停滞の原因として、ボランチを理由に挙げることは出来ると思います。

米本拓司と橋本拳人のボランチコンビでは

ボランチを経由する攻撃において有効なパスが出ず、また近距離のパスばかりとなり

相手を広げたり走らせたりといったパスの少なさが目立ちます。


また、守備時では共に球際に絡んでこそという選手であり

その2人の特徴が攻守において似ているということが

攻守のバランスを欠くことになる一因と言えました。


高橋は、CBの前の危険なエリアを埋めることに長け

そしてCBの経験もあることから、サイドへのロングフィードへの意識が高く

今のFC東京にとって、攻守のバランスの改善に繋がるものです。


前半4分には低い位置から、サイドに流れたバーンズへロングフィードを通し

早速、チャンスを演出しました。

中島の特徴は、技術の高さと豊富な運動量です。

自身の特徴を生かすために、頻繁に動いてボールに絡み、サイドでボールを受け

起点となりながら、ドリブルとパスを組み合わせて攻撃に絡みます。

前半は何度も中島を出発点に、バーンズ、ムリキでチャンスを作り出しました。


FC東京は、入れ替えた選手がそれぞれの特徴を出すことで

チームとしてのクオリティを上げてきました。



柏は先発メンバーを代えませんでした。

その影響もあってか、試合を通して単純なミスが相次ぎました。

それも、得意としているはずのショートパスでのミスばかりでした。


442で守るFC東京に対し、3142のような形となる柏は

行く先々で、相手ブロックを剥がすことが可能となります。

ただ、それはあくまでフォーメーションの噛み合わせの話であり

実際に有効な攻撃が行えなければ机上の空論となります。

まず、3バックで2トップを相手にし、2トップの間にアンカーが立つため

2トップの外からボールを運び、相手のサイドハーフを動かすことが出来るはずです。

しかし、中谷進之介、中山雄太という自慢の下部組織出身選手たちの

そういった意識が乏しく、あまりボールを運べません。


また、FC東京はこの日は右SHに入った橋本が

高い位置を取る柏の左SBの輪湖直樹に付くことで

柏の攻撃方向をFC東京から見た左側へと誘導する狙いもありました。


ただ、FC東京は果敢に組織的なプレスを敢行したとは言い難い状況でした。

ムリキ、バーンズともに、守備時には最低限の運動量でしたし

442の泣きどころ、ボランチの前のスペースにも

米本が単騎でプレスに来たり来なかったりとまちまちでした。

橋本の位置が低いなら、左CBの中山を使って縦パス

または対角線にボールを送るなどして、相手を動かすべきでしたが

そういった、相手の対応への対応を見せる場面はありませんでした。

前半18分、柏はアンカーの栗澤僚一にボールを入れたところに

米本が単騎でプレスを敢行。

栗沢がそれを交わし、真ん中に大穴の開いたFC東京相手に

柏がチャンスを作るかに思えましたが、そこからパスミス。

逆にFC東京のチャンスに繋げられてしまいました。


ビルドアップが上手くいかない柏は、インサイドハーフが下りてきて

その手助けをしようと試みることとなります。

しかし、そうすると前線の枚数が減ることとなり

また、味方が位置を下げるということは、相手が位置を上げられるということにもなり

相手に押し込まれる可能性を上げてしまいます。

フォーメーションの噛み合わせ上で優位に立っている以上

後ろの選手が改善の努力をするべきでした。


しかし柏の努力もむなしく、その後はFC東京の時間が続きます。

それは下平監督のハーフタイムコメント

「なにもできていない」「なめてんのか?後半は死ぬ気でやれ」

という文面に表れていたと思います。

洗練された組織的な守備ではないFC東京を前に停滞する柏

前半はそういった様相を呈していました。

FC東京の「やりたいこと」とは?

後半も基本的にはFC東京がボールを持つ時間が長いのですが

この日のFC東京には問題がありました。

それは、前線のメンバーにあります。


この日は、東慶悟や河野広貴といった、攻守のバランスに優れた選手たちではなく

より攻撃的でアイデア豊富な中島を先発起用しました。

その結果、中島、ムリキ、バーンズの3人が中心となって

低い位置、アタッキングサードの手前からボールに触り

攻撃の最終的な崩しに挑むという展開が前半から続きました。


ただ、ハッキリとしたストライカーがいない上に

サイドに流れる、落ちてビルドアップに関与するなどの役割も流動的なこの3人では

なかなか決定機らしい決定機も作れませんし

もし、前半34分のような決定機を迎えたとしても

エネルギーが残っていない場合が多々あります。


ましてこの日は中3日で、中島はともかく2トップは次第にキレを失います。

そうすると、サイドに追い込まれ

苦し紛れのハイクロスという場面が多くなるのですが

そこは平均身長170cmに満たない前線の3人ではクロスに合わせることも難しく

後半20分には、輪湖を見るために532の右WB的な位置取りをしている橋本が

リスクを犯して侵入し、強さを見せて決定的なヘディングシュート見せますが

ここはリオ五輪代表の柏GK中村航輔に防がれ

また、役割が流動的であるため、その形は単発に終わりました。

90分を終え、城福監督は

「受け入れがたい」とし

「内容と結果が一致しない」としました。

つまり、負けたけど内容は良かったということを示唆したということです。

ということは、城福監督の意図としては、ハーフタイムコメントである

「やりたいことはできている」のとおりと言えるでしょう。

「ラッキー」が勝敗を分けることもあるが・・

しかし、これには疑問が残ります。

アイデアのある中島を起用することで生じた「内容」とは

ムリキやバーンズと中島とで織り成すアイデア頼みであり

選手たちの個人能力に依ったものと言えるでしょう。

そこに、監督の手腕が介在する余地はあるでしょうか?


ペップ・グアルディオラ期のバルセロナの崩しが、実はシステマティックなものであり

多数に用意された引き出しの中から、選手たちが選択するというものであることは

今さら言うまでもありませんが、これは昨今のJリーグにおいても然りです。


美しい崩しを見せる川崎は、攻撃の出発点に代え難い人材はいるものの

基本的にはパターン練習の積み重ねによって得られたものです。


浦和の見せるフリックやワンタッチパスを多用したもの

または大きい展開でワイドを使い、相手DFの視野をリセットする攻撃は

日頃の地道なパターン練習によって積み上げられた成果です。


特徴のある選手を投入して、その即興性に期待するだけであれば

それは、今日におけるサッカー指導者の在るべき姿ではありません。

そして、攻撃が前線のアイデア頼みであるならば

堅い守備を構築するなど、補完する何かを示す必要がありますが

今年、J1最多の逆転負け数を記録しているFC東京の監督には、それも望めません。

もしこれで「内容が良い」とするのであれば

この先、FC東京の攻撃は即興性に頼った確実性の無いものを超えることは無い

ということになります。

アイデアのある中島もこの試合を最後に五輪へ旅立ちますので

前線との連携も深まりようがありません。


FC東京はこの先も、即興的なラッキー頼みの攻撃を続けるのでしょうか。

だとすれば、上がり目は期待できないというのが妥当でしょう。




柏は後半13分に先制しました。

ただ、プレスを回避すべく蹴ったロングボールを

森重真人がクリアミスし、なぜかジョグで戻っていた徳永悠平の裏を

伊東純也が付き、ワントラップをし、落ち着いてシュートを決めたものです。

これはもちろん、意図した攻撃ではなかったようで

試合後の下平監督は「ラッキーな形」としました。

今後としては、やりたい形があるだけに

なぜ、そのやりたい形が出せなかったのかを突き詰める作業が必要となります。

ハッキリしていることは、柏はラッキー頼みには固執していないということで

自分たちのやりたい形を出すために、今後も取り組んでいくことでしょう。


ポゼッションサッカーは、夏場に効果的な動きが減り

それ故に停滞しやすいという特徴もありますので

この日のようにメンバーを固定するのではなく

フレッシュな選手を使っていくことも必要でしょう。

そして当然、ベンチメンバーはアピールをしなければなりません。




夏場の連戦は、このような内容に乏しい試合を生むことがあります。

こういう時に勝ち点を拾えるチームが上位に行くのがJリーグであると言えます。

この日、勝ち点を拾ったのは、ラッキーが起こった柏でした。

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