【J2】 勝ち点47で並ぶ3チーム 過去データからJ1昇格ラインを改めて考える J1と比較できることの強み 【松本山雅】
2016/07/19 21:32配信
カテゴリ:コラム
J2は第23節を終え、コンサドーレ札幌がファジアーノ岡山とアウェイで対戦しスコアレスドローで引き分け、
セレッソ大阪がザスパクサツ群馬に2-0快勝、松本山雅もギラヴァンツ北九州に2-1で勝利という結果で
上位3チーム勝ち点が47でズラリと並んだ。
得失点差によってコンサドーレ札幌が首位を守ったが、次節は中3日の平日開催でコンサドーレ札幌と松本山雅が直接対決を控えている。
首位のコンサドーレ札幌はセレッソ大阪、ファジアーノ岡山、そして松本山雅と3戦上位対決が続くこととなる。
23節を終え、勝ち点47。
この数字を軸に昇格ラインを考えたい。
●23節終了時点で45以上は昇格ライン
過去の勝ち点推移と比較しても、23節終了時点での勝ち点47の積み重ねは昇格ラインにあるといって良いであろう。
2015年は大宮アルディージャがシーズン途中までを独走し、その後かっち円が詰まっていく形でジュビロ磐田とアビスパ福岡が後を追った印象のシーズンだった。
2015シーズンは23節終了時点で大宮が勝ち点51と抜け、磐田が44、C大阪が38、福岡が37だった。
2014シーズンは湘南がシーズンを通し独走体制のまま、ぶっちぎりで昇格を決めた年であったことがわかるように
23節終了時点で勝ち点は66。続いた松本が47と今季と同じ、磐田が43という勝ち点だった。
2013シーズンはG大阪、神戸というJ1で長く戦ってきた2チームがJ2で戦い
23節を終了した時点で積み重ねた勝ち点はG大阪が49、神戸が47、続く京都が41だった。
2012年、2011年シーズンをみると勝ち点の推移はやや落ち40前後に推移した。
この時点で45以上の勝ち点を重ねていたチームは近年では昇格しているチームになっているとみて良いであろう。
自動昇格圏が2つであることを考えると、現在47で3チームが並んでいるのは混戦といって良い。
最終的には勝ち点80というラインが自動昇格ラインとして必要となる数字であることを考えると、現在47という数字は昇格へ向けて良い勝ち点の積み重ねであることがわかる。
▽プレーオフが導入後のJ1昇格チーム勝ち点 ()はプレーオフを勝ち上がり昇格したチーム
2015 大宮アルディージャ87 ジュビロ磐田82 (アビスパ福岡82・3位)
2014 湘南ベルマーレ102 松本山雅83 (モンティディオ山形64・6位)
2013 ガンバ大阪87 ヴィッセル神戸83(徳島ヴォルティス70・4位)
2012 ヴァンフォーレ甲府86 湘南ベルマーレ75(大分トリニータ71・6位)
●J1を知ることで再びJ1へチャレンジするチームの基盤を創ることのできる強み
松本山雅の反町監督は、5連勝を重ねたチームに対しJ1での戦いを想定するとここ3戦の勝ち点0と言葉にした。
J1であるならここ3戦は3連敗という見方をし、チームにまだまだ課題があると挙げた。
昨年、松本山雅ははじめてJ1で戦ったが、1シーズンで降格を経験。
反町監督は2009年、就任1年目にして湘南ベルマーレを昇格させたが、その後1年で降格という厳しい現実を目の当たりした経験を持っている。
それに限らず反町監督は、J1チームに五輪監督と経験豊かな指揮歴を持ち、松本山雅の監督に就任したのは2012年のこと。
その手腕とチームマネジメントにより3年目にしてJ1昇格を掴み、挑戦した。
しかし、戦力が揃わなかった等現実的に抱えた問題も多く、1年で降格してしまうという経験を再び経験。
1年で松本山雅が挑戦したJ1での戦いを照らし合わせ、勝利をしてもJ1で戦う「標準」と比較する。
J1基準としてJ2を戦う―。
思い浮かべることができるのは2014年の湘南ベルマーレだ。
湘南ベルマーレは2013年、J1で戦ったものの通用するものとしないものという現実にぶつかり課題を持って降格し、徹底的にJ1レベルにこだわり、J1で勝つためにはどうすれば良いのかを考え曺監督が後に湘南スタイルと呼ばれるようになる「湘南らしさ」走るサッカーを構築。
J1を意識した戦いで驚くべき勝ち点の積み重ねを経てJ2首位独走体制となり、結果的にJ2で勝ち点100以上を積み上げ1年でJ1へと昇格した。
これまでJ2から昇格し1年で降格してしまうと、その後はチーム状態が乱れたまま立て直すのにも時間がかかりJ2でもなかなか結果を出すことができないという連鎖に陥りがちだったことは否めない。
しかし湘南ベルマーレは昇格と降格を繰り返してしまった過去や、1年でJ1へと降格したという経験をしたからこそ、J1での戦いの感覚が薄れることのない戦いが鮮明に残っている中で、選手たちに高い意識を持たせ課題を挙げ再びJ1を目指した。
J2での戦いで1番になることへの意識ではなく、J1で戦っていることを想定した戦い方で結果を積み重ね、J1で戦うことへの準備をシーズンを通して進めて行ったことに勝算があった。
2013年、オリジネル10のチームでありJリーグ強豪ビッグクラブの1つであるガンバ大阪が降格しJ2で戦った時も、J1を想定しての戦い方だった。
リーグ序盤はなかなか順位を上げられなかったガンバ大阪を指し、ガンバは1年で戻れるのかという心配の声も聞こえたが、それはチームを創る上で必要な我慢の期間だった。
1戦1戦の結果にこだわっていないわけではなかった。しかし、J2の舞台だからこそチームの今後の先行きを考え編成に着手。
それまでなかなかJ1の舞台では起用することのできなかった選手たちに経験を積ませることで、その後のガンバ大阪の基盤を作り、宇佐美がドイツから帰ってきた時には新チームの基盤が完成し、勝利を重ねることに繋がった。
J1に戻った時に降格してしまったチームで戻ってもなんの意味もない。再び降格してしまう苦しい戦いが待っている。
だからこそ新たなチームとして強くなって戻る必要があった。
その後、J1に戻ると前期はJ1に戻ったことでJ2では通用したことでも通用しないという壁にぶつかるものの、その経験もすべて吸収しジワジワと結果を積み重ねると
リーグ・ナビスコ杯・天皇杯と3冠を獲った。J2降格から偉業を成し遂げたのは、J2でのチーム基盤が生きた形となったからだった。
J1を知っているからこそJ2で上位となるための戦いではなく、上のステージを想定し戦うに必要なことを念頭に置き意識する。
J1での経験を持って再び昇格を目指せるチームは、チームの方向性をしっかり持つことができる分、同じ方向を向き同じ目標を持つことができる。
共に戦ったJ1で見た経験したものを持って、強化しなければならないこと、自信を持つことができることを共有できるという強みがある。
昇格はひとつの結果。ゴールではないことを知っている。
現在、松本山雅がそうであるように。
J1へ向けて再びチャレンジするためには、過去の昇格した年よりも「強く」昇格することが必要となる。
J2リーグは全42試合。
現在23節が終わり、残り19試合が11月下旬まで行われる。
上位の勝ち点差が詰まっている混戦の今季J2。
23節が終わり勝ち点47以上を重ねたチームで昇格しなかったチームは、近年では存在しない。
47以上を積み重ねているチームは今、3チーム。
日本特有の厳しい夏を迎え、長いリーグ戦を戦う上で必ず抱えてしまうこととなる負傷者やアクシデント。
それも含めてリーグは難しい戦いとなる。
19試合最大で得られる勝ち点は残り57。
今後をどう戦い、勝ち点をどれだけ重ねられるか。
チームの総力を持って戦う今後が、大きく左右することとなる。
昇格枠は3つ。
自動昇格権を手にするのは、どのチームになるのか目が離せない。