CHANT(チャント) 川崎フロンターレ

川崎vs新潟 「ブロックを崩す、サイド攻撃」

2016/07/15 19:08配信

武蔵

カテゴリ:コラム

年間順位、並びに2ndステージでの順位でも首位に立つ川崎。

1stステージでは、首位で迎えた16節のアウェイの福岡戦で引き分け

まさかの取りこぼしによりステージ優勝を逃してしまいましたが

軸となる戦術と、中心選手が存在するチームらしい

気持ちの切り替えの早さを見せています。


ただ、その中心選手である中村憲剛が

前節、危険なタックルを受けて負傷退場をしてしまい、今節は欠場です。

件の福岡戦も、中村憲剛の不在の影響が囁かれる中でのドローであり

クラブ初のタイトルへ向け、試練と言える場面です。

逆に新潟は残留争いが濃厚となってきました。

年間15位という順位以上に深刻なのは得点力不足であり

2ndステージの2試合はともに0‐1での敗戦となってしまいました。

ただ、開幕6試合で5得点を奪ったエースのラファエル・シルバが

長期の離脱から戻り、コンディションを挙げていることは光明で

移籍報道に揺れたレオ・シルバも残留が決まり

この両助っ人を軸に、厳しい残留争いを勝ち抜いていきたいところです。

新潟、まずはポゼッションで勝負

川崎のいつもの形、ボール支配に対し

新潟は積極的に前からプレスを敢行し、奪ってからのカウンターを狙います。

夏場の中3日のアウェイと言えど、スタートダッシュを効かせて

試合のペースそのものを握ってしまおうという狙いがあったでしょう。


前半7分には低い位置で奪い、カウンターを狙うシーンがありました。

ここでフィニッシュまで行ければ、それこそ流れを掴めるのでしょうが

川崎の素早い切り替えの前にボールを運べず

左SBの前野貴徳が奪われ、逆カウンターを食らってしまいました。


試合前の新潟・吉田達磨監督の話した

「切り替えにおいては優位に立てると思う」というのも

首位・川崎の前では願望でしかなかった。

そう言われても仕方ないシーンだったと思います。

川崎が隙を見せません。


ただ、吉田監督の指導者としてのスペシャリティは

ビルドアップの多彩さ、崩しのパターンの豊富さにあります。

それは、昨年まで長きに渡り携わってきた日立台周辺での仕事ぶりを思い返せば

合点のいくものだと思います。


ここから2度、10分と17分に新潟は良い形を作ります。

左サイドに流れた山崎亮平が、相手SBの裏を取る良い動き出しを見せ

そこに前野から縦パスが入った場面。

また、最終ラインから右サイドへのロングフィードで相手を引き出し

その空いたスペースへのフリーランで突破した場面。


今季の躍進のタネとなっている川崎の守備ブロックの堅さに対して

サイド攻撃にてボールを運び、優位に立つシーンが目立ちました。

先制のシーンも、しっかり崩しての得点でした。

中央で起点を作り、相手を中央に寄せてからサイドへ。

相手をコントロールしたところにダイレクトの折り返し。

相手の2ボランチの及ばないところに落とし、シュートポイントを作りました。


Jリーグでも有数の左足を持つ野津田岳人を有効に使った攻撃とも言えます。

新潟が首位・川崎相手に先制点を奪いました。



しかしその3分後、川崎が追い付きます。

これは大島僚太の凄いミドルシュートによるものなのですが

4‐4の新潟のブロックの外からのシュートですので

つまり、それだけシュート自体の威力が凄いゴールだったということです。


ただこれも、相手をサイドに広げたことにより生まれたスペースで

シュートポイントを得たことによるゴールです。

ブロックを崩すには、サイド攻撃で横幅を出すこと

後半、新潟は指宿洋史に代わりラファエル・シルバが入ったことにより

ポゼッションというより、カウンター志向となりました。

夏場の連戦のため、より、切り替えで勝負したい意向を示したのでしょう。


センターフォワードというよりは、スピードとテクニックに定評のある選手であり

前を向いてボールを持たせたいタイプです。


新潟は徐々に、川崎の特徴であるボール支配時にも試合のペースを握り始め

カウンターのチャンスを作り始めます。

62分にはポゼッション時の川崎を間延びさせ、距離の長いパスを出させ

インターセプトしたボールをチャンスに結び付けます。

これはフレッシュな武岡優斗の切り替えでファウルにより止められますが

川崎の長所にプレッシャーを与えられたことは

試合を進める上で重要な要素だと言えるでしょう。


65分の得点シーンは川崎にとって不運なシーンと言えますが

ここも新潟が切り替えで勝ったシーンと言えます。


川崎守備陣としては、右CBと右SBが見なければならない選手を抱える中で

守備的MFの大島は不運を嘆くよりも

対峙したレオ・シルバに簡単にワンツーで剥がされてはなりませんし

少なくとも付いていくためのスプリントを怠ってはいけませんでした。


今や首位・川崎の中心となった大島僚太も、ポジションは守備的MFです。

この位置での守備、特にカバーリングは

ここから上を目指すにあたっての彼の課題だと言えるでしょう。



新潟が再びリードを奪います。

ただ、これで攻めるしか無くなった川崎です。

今のJリーグでこのシチュエーションの川崎より怖いチームがあるでしょうか。



新潟は4141になることもありましたが

基本的には442で中央を固めたブロックを敷きます。

これに対する川崎の猛攻が始まるきっかけは

79分のエウシーニョから田坂祐介への交代です。


これによりハッキリと3バックとなった川崎は

高い位置を取るSB改めWBを起点にして

442に対して発生するギャップを利用し、サイド攻撃を促進していきます。


ここから川崎は2得点を挙げ、逆転するのですが

これらはいずれも左WBとなった車屋紳太郎を起点とするものです。


3バックとなり、相手の2トップをいなし、シンプルにサイドへ運ぶことが可能となり

車屋が2人を相手にしながらも仕掛け、得たCKからの得点で同点。

相手右SBのところで起点を作ることでフリーにした車屋からの

ダイレクトのクロスでスクランブルを起こし

最後はゴール前のストライカーが詰めて逆転。


川崎がサイド攻撃によって相手ブロックを崩し、逆転。

年間首位の底力を示しました。


この試合でカギを握ったのは、両チームのサイド攻撃でした。

ブロックを崩すにはサイドを使い、横幅を出すことで、相手を動かすこと。

ただ、どちらかといえば、それにこだわることができたのは

新潟よりも川崎だったのかな、と思います。


内容のみならず、結果からも

サイド攻撃で横幅を使うことの重要性を示す一戦となりました。

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