CHANT(チャント) 日本 U-23代表

南アフリカ戦で見えたこと 新たなポリバレントがもたらす0.5枠の重要性

2016/07/01 19:48配信

武蔵

カテゴリ:コラム

リオ五輪に挑むU-23日本代表にとって、国内における最後の強化試合にして

最終メンバー18人の発表前、最後の実戦である南アフリカ戦が

29日、松本市のアルウィンに手行われました。


結果としては、同じくリオ五輪に挑む南アフリカを4‐1で退け

また、チームとしての内容も、快勝と言って良い内容でした。


ただ、何度となく言われていることは

オーバーエージ枠として内定している3人と

(塩谷司、藤春廣輝、興梠慎三)

メンバー入りが有力視されている海外組の2人を加えると

(南野拓実、久保裕也)

南アフリカ戦のメンバー21人から選ばれるのは

本メンバーの13人と、バックアップメンバーの4人ということになります。


また、この南アフリカ戦にケガで間に合わなかったものの

本メンバーに入るのではないかと言われている選手を入れると

(岩波拓也)

それよりも少ない数となってしまいます。

つまり、この南アフリカ戦はこれまでのアピールの総決算であり

ここまでに見せたものを手倉森誠監督がどう判断するかによって

メンバーに入れるか否かが決まります。


そして、当確と言える選手は良いとして、ここにきて問題なのは当落線上の選手であり

当落を分けるのは、ケガにより離脱が長かった「予選組」の状態と

複数のポジション、役割をこなせる選手、いわゆるポリバレントであること

これがカギとなると言えるでしょう。


特にポリバレントな選手は

そのサブポジションに0.5枠埋めることが出来るからです。


そして、今回の南アフリカ戦では

「予選組」の示した新たな「ポリバレント」

という風に1つのワードにできるのではないか

そういったパフォーマンスを見せてくれた選手たちがいました。

それが中島翔哉、室屋成です。

中島がFW枠に入る影響

チーム発足以来10番を背負い

予選を通してサイドハーフとして主力であり続けた中島は

この日はFWとして起用されました。


スピードのある浅野琢磨とのコンビであることから

浅野が相手DFラインと勝負し、スペースが空いた状態で

中島がボールを受けるトップ下・・という役割分担も予想されましたが

その実、個性の差はあるものの、完全な2トップだったと言って良いでしょう。


前半31分の裏抜けによる決定機や

前半ATの得点は、完全にFWのものだったと言って良いでしょう。


とにかく身体能力を生かしてボールに食いつく南アフリカは

空きがちなバイタルエリアをDFラインが埋めようと、ラインを高くなりがちでした。

とはいえ、浅野とともに裏抜けを使って相手を押し下げ

出来たスペースを矢島慎也、野津田岳人とともに使う、という

FWとしての周りとの連携も上手く出来ており

また、そういった風に役割過多になりがちの中でも

分かりやすい結果を示したこともあって、アピールに足る内容だったと思います。


中島は予選でも見せた通り、サイドハーフでも計算されているでしょう。

相手のレベルが上がるとスペースも無くなり

かといってこのチームは横幅をSBが出すことが多いため

サイドハーフは中の狭いスペースでプレーできることが必要だからです。


それと同時にFWとしても計算できるとなるとFW枠に影響してきます。

興梠は万能型、浅野は出来れば高い位置に置きたい

久保は出来ればセカンドトップ的に使いたい。

中島を久保の位置で計算できるとしたら、FWは3.5人置いたことになります。

その分を削って、他に回すことが出来るということです。


ただ、当然このメンバーだと前線の高さに不安が残ります。

少ない時間で得点が求められるようだと、高さという要素は必要でしょう。

この日、10分のみの出場に終わった鈴木武蔵が

その不安要素を埋めるため、その「他に回すことが出来る」枠に入る可能性は

まだ残されているでしょう。


反対にFWをこの3.5人で良しとするならば

その枠は、専任の多いボランチに割り当てが来ることでしょう。

SBが室屋と藤春のみとなる可能性

藤春の選出は内定しています。

藤春は左利きで左サイドバック専任となるでしょう。

つまり、サイドバックの枠に1人は両サイドバックが出来る選手が入るということです。

そこが室屋なのか、亀川諒史なのかは1つの焦点でした。


そしてこの南アフリカ戦で実際に両サイドを任されたのは室屋でした。

室屋は90分出場し、後半22分からは左サイドバックを務めました。

亀川はその後半22分に退きました。


室屋は骨折ということで、例えば6週間の離脱となった中島よりも

長い離脱となったことからも、コンディション面での不安が大きいものでした。

ただ、この日の室屋のプレーは

U-23アジア選手権で見せたプレーを取り戻していると言えるものであり

出色のデキだったと言えるでしょう。


体の向きの拙さからPKを献上してしまった亀川や

後半40分にはCKをファーで合わされてしまった松原健とは違い

室屋は90分を通して、左右同じように、守備での安定が光りました。


藤春、室屋を当確とした場合、サイドバックの枠はあと0.5と言えます。

もちろん亀川を招集しても良いのですが、ここは別の可能性を考えてみたくなります。


というのも、藤春と室屋をレギュラー格とした場合

残るサイドバック枠は控えでも構わないと見ます。

手倉森監督が藤春の良さを「頑丈さ」としている以上

藤春は全試合で使い倒すと見て良いでしょう。

となると必要なのは、右サイドバックの控え、0.5枠となります。


そして、3枚の選出が予想されているセンターバックから

塩谷は右サイドバックとしての計算が立つ選手であります。

岩波のコンディションが良ければ、数少ないJ1レギュラーが揃うセンターバックから

サイドバックにその0.5枠を割くこともあり得るでしょう。


他に右サイドバックのポリバレントといえば

橋本拳人を挙げることが出来ます。

本職はボランチでありながら、所属のFC東京ではJ1やACLの舞台で

右サイドバックを務める回数が増えてきています。

橋本を招集することで、専任枠の多いボランチの枚数も計算できますし

ボランチ内の役割としても、アンカー的な遠藤航と組むのは

攻撃的で、最近はランニングが増えた大島僚太や

バランスの良い選手になりつつも、基本的にはパサーの原川力などであり

橋本を呼ぶことで、役割のバランスを良くすることが出来ます。


球際で強さを発揮する選手の枠を

ボランチ専任の井手口陽介などと争う形になりそうです。

サイズとポリバレントさで橋本、予選での経験で井手口

そういった図式が出来ていることでしょう。


サイドバックにおいては、亀川の枠を他に回すことが出来る。

南アフリカ戦での室屋のパフォーマンスは

そういったピッチ外においても好影響をもたらすものでした。

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