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ドイツvsスロバキア 「ドイツの基本の『キ』」

2016/06/29 11:00配信

武蔵

カテゴリ:コラム

欧州選手権、EURO2016は決勝トーナメントに突入しています。

優勝候補の2強のうちの1つと言われるドイツは

グループリーグC組を1位通過し、予定通りの運びを見せています。


グループリーグの3戦で2勝1分け、3得点ということで

決定力不足を指摘される場面もありましたが、優勝候補のチームというのは基本的に

グループリーグに主にコンディション面での照準を合わせていないので

恐らく予定通りの1位通過を果たしたという結果こそが大切だと言えるでしょう。


決勝トーナメント1回戦の相手はスロバキアです。

グループリーグ初戦で、今大会の主役となっているウェールズに敗れたものの

続くロシア戦ではエースのハムシクのスーパーゴール2連発で勝利し

最終戦のイングランド戦で耐え忍んで引き分け

勝点4の3位で決勝トーナメント進出を果たしました。


今大会から24カ国の参加となり、グループリーグ3位でも進出の目が出るという

レギュレーションに救われた格好となりましたが

その代償が1回戦でのドイツとの対戦、ということになりました。

ドイツの基本その1:ビルドアップ

試合の趨勢として、基本的にはドイツがポゼッションの7割近くを占めたため

ドイツの見せる姿は2つだけと言っても過言ではない状態となりました。

そして、その大半はビルドアップとゲーゲンプレス時における形となりました。


後ろは必ず4枚でビルドアップをします。

これは4141で守るスロバキアが、まずは1トップの脇を使われないように

また、首尾良く真ん中で奪ってカウンターを仕掛ける際に

より相手ゴールに近い位置にエースのハムシクを配置したいという狙いから

1トップのクツカとインサイドのハムシクとフロソフスキが

高い位置に進出してくる際に備えてのものです。


ドイツのその4枚のうち2枚はCBで、それはボアテングとフンメルスです。

そこに中盤のケディラとクロースがそこに加わり4枚とし

大半の場合でボックスビルドアップ、四角の形を形成することで

スロバキアのプレッシングを回避しました。


また、横幅は高い位置を取る両SBが担うのですが

ドイツは基本的にローテーションを行うチームですので

横幅を取る=相手のSBの裏を狙うこともあるSBがサイドに不在の場合は

普段はインサイドに居る選手がサイドに出てきて

そのエリアで必要とされるタスクを請け負うことになります。


前半27分には、相手右SBの裏を取り中へ入った左SBヘクターに代わり

左利きのエジルが左サイドに出てきてボールを受け、クロスを放り込みました。

スロバキアはこのドイツに対して、いわゆる受けた状態となってしまい

低い位置でのブロックはドイツのビルドアップにコントロールされた状態となり

かなり動かされていました。

プレッシングは空転し、簡単にサイドへと運ばれてしまいます。

サイドの深い位置まで運ばれるとラインは下がらざるを得ず

そこからクロスを入れられるだけでも

ゼロトップを捨てセンターフォワードを起用し始めたドイツに対するとなると

かなりの脅威となっていました。


対策としては、ドイツが4枚でビルドアップをするなら4枚

その助けに下がるならその都度追加、というように

数を揃えてのプレスが必要だったと思いますが

スロバキアとしては、いわゆる、相手をリスペクトしすぎた状態

ということになるでしょうか。


1つ注意点のようなものがあるとすれば

ドイツのビルドアップ部隊は、世界でも有数の技術を持つ選手たちということです。

ケディラはともかく、他の3人のようなクオリティの選手たちを揃えている国は

今大会、ドイツともう1つの優勝候補であるスペインくらいでしょう。


ちなみに、1点目はコーナーキックを跳ね返したところに詰めたボアテングの

見事なダイレクトシュートでしたが

ボアテングが、少なくともコーナーキックの時には中に入らず

外で待ちうけるパターンがドイツにはあります。

192cmのボアテングが中に入らないのは、こぼれ球をサイドに供給するためで

実際にそういった展開の形を、このスロバキア戦で見ることも出来ました。

この1点目はそういった狙いから生まれたポジショニングの産物と言えるでしょう。


それだけの技術を持ちながら

サイズと守備技術に恵まれた選手を擁しているということになります。

スロバキアとしては、そういう選手が揃うドイツ相手に

前からのプレスを仕掛けるのは勇気が必要でした。

ただ、世界王者に勝つためには絶対に必要なものとも言えるでしょう。


まして、ドイツより試合間隔において1日猶予があったスロバキアに

出来ないことなど無い、とは思ったので、そこは残念でした。

ドイツの基本その2:ゲーゲンプレッシングを考えた選手の配置

ドイツはサイドまで運ぶとそこからチャレンジのパスを繰り出します。

サイドからの攻撃パターンは、インサイドの選手のインナーラップや

インサイドへの横パスで相手のアンカー脇を衝くこと

いわゆる外中と呼ばれるパターンなどでした。

そのうち、2点目はインサイドから出発したドラクスラーの

インナーラップで生まれた1対1での、ドリブル突破から生まれたものでした。



ドイツはポゼッション時、大まかに言うと

後ろに4人(とノイアー)、両サイドに1人ずつ、そして中央に4人いる状態となります。

これはボールを失った際の守備を考えてのことになります。


サイドでボールを失った場合は

相手にとてもクオリティの高いカウンターの術が無い限りは危険性が少ないので

そこまで人数を掛けて追いかけ回す必要はありません。


反対に、中央でボールを失った場合は比較的危険となりやすいので

中央に4人を配し、人数を掛けたゲーゲンプレッシングを開始し

取り切れない場合は442に収束して、また守備を開始していきます。

ドイツの2つめの形といえば、このブロック形成の442と言えるでしょう。


ただ、ドイツがブロックを形成する時間は、後半は増えましたが

前半はドイツのボール保持が長く、ほぼ見られませんでした。

ドイツはこのように攻守一体

もっと言うと、攻撃のことを考えた守備

そして、守備のことを考えた攻撃の形となっています。

これは、切り替えというサッカーにおける最重要の課題と向き合う上で

1つの理想を体現していると言って良いでしょう。


ドイツにはバイエルン・ミュンヘンというモデルチームがありますが

それよりはだいぶシンプルというか

バイエルンほどの複雑なシステムがあるわけではありません。


今後はこの日のスロバキアよりも強い、というよりも

ハッキリとドイツ対策をしてくるチームと当たっていくわけですが

相手のその対策に対して

どれだけシンプルではない、相手の対策を上回るような形を繰り出せるかどうか

ということに懸かっているでしょう。

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