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宇佐美貴史の再挑戦 カギを握るのはハリルのあの教え

2016/06/27 18:58配信

武蔵

カテゴリ:コラム

G大阪の宇佐美貴史のドイツ1部・アウクスブルクへの移籍が発表されました。

契約期間は4年で、違約金150万ユーロの完全移籍と伝えられています。

会見では「挑戦の無い人生なんて」「人生を懸けた再挑戦」と強調しましたが

その通りに、2016‐17シーズンより、宇佐美の2度目のドイツ挑戦が始まります。

1度目のドイツ挑戦時、宇佐美に足りなかったもの

かつて、バイエルン・ミュンヘン時代のルイ・ファン・ハール監督をして

「将来の10番候補」や

「素晴らしい才能の持ち主」と称された上に、直々に請われ

レンタル移籍ながら、このドイツのチャンピオンチームへと移籍しました。


この移籍は能力とともに、オランダ式のサッカー

つまり、今日において欧州スタンダードとなっている

両翼を生かすサイド攻撃への適性を買われてのものでした。

しかし、若かりし頃の宇佐美は、そのシステムへの理解、適合に苦労した印象があり

また、単純に同ポジションのフランク・リベリーの壁にも跳ね返されました。


バイエルンは買い取りオプションを行使しなかったため

同じくドイツ1部のホッフェンハイムに再度レンタル移籍を果たしますが

厳しく言えば、この1年で、そのシステムへの適合に関する伸びしろを

メガクラブ基準で示すことができなかったということでしょう。


ホッフェンハイムにおいても、左サイドから

ドリブルで4~5人を交わしてのシュートを決めるなど、随所にその才能を見せますが

ここでも定着できなかったのは、監督交代が相次いだ影響以上に

そういったスタンダードを身に付けることができなかったからだと考えます。

身に付けつつある欧州スタンダード

では、それ以降の宇佐美はどうなったのでしょうか。

その欧州スタンダードを身に付けることは叶ったのでしょうか?


それに関して、状況は変わっていると言えるでしょう。

つまり、宇佐美はサイドアタッカーとして必要な動き方を

会得しつつあるように思えます。


その大きな立役者と言えるのが、現日本代表監督の

ヴァヒド・ハリルホジッチ監督です。

彼の指導により、宇佐美はサイドアタッカーとして格段の進歩を見せています。


先のボスニア・ヘルツェゴビナ戦においては、右サイドの浅野拓磨とともに

特に前半、スタートの位置をタッチライン際に取り

外経由のビルドアップやサイドチェンジを引き出すことで

日本のとても有効な攻撃手段となっていました。

先制点のアシストも、ドリブル突破やグラウンダーのクロスも見事でしたが

まずは相手の右SBの外に張ることで

森重真人のミドルパスを上手く受けたところから始まりました。


思えば昨年6月、スコアレスドローに終わったシンガポール戦においても

真ん中に密集する本田圭佑や香川真司とは違い

左サイドに張ってボールと相手DFを引き出そうとしていた宇佐美が印象深いです。

あの時のハリルホジッチ監督のコメントは

「なぜ長谷部は対角線(左への)のフィードを出さないのか」でしたから

この頃から、宇佐美はこの役割をこなせていたとも言えます。


ただ、ここに来て、チームとしてその動きを生かすことが出来てきており

また同時に、宇佐美もこの役割、システムに対して手応えを感じていることでしょう。

新天地で必要となるのは「キレ」と「メンタリティ」

宇佐美とハリルホジッチ監督といえば

体脂肪率の問題など、意見の相違があるかのような報道もあります。


実際、宇佐美は帰国後、当時J2所属だったG大阪をより直接的に救うため

渡独前よりも得点に直結するポジションでのプレーが増えました。

それに伴い「ストライカーで勝負」するための肉体改造により

体重を大幅に増やすなど、ゴール前のプレイヤーになりつつありました。


そのため、1対1でのドリブル突破に必要なキレに関しては

錆びつきつつありありましたし、J1昇格後のドリブル成功率も良くありませんでした。

サイドハーフに再コンバートされてから

パフォーマンスが落ちたように見えたのはそのためでしょう。


ただ、現在ではサイドハーフナイズされつつある肉体とキレを持ちます。

今日の日本代表の左サイドハーフにおいて、原口元気と争うレギュラー格と言え

また、前回は持ち得なかった戦術面での武器も今では持っています。

実際にこれらを携えることで、実際にドイツ再挑戦の切符を手にしました。


宇佐美のドイツ再挑戦に必要となってくるものは

ボスニア戦で見せたドリブル突破に必要なキレを、更にレベルアップすること。

それと、強いメンタリティが必要と言われています。


アウクスブルクの新監督となるディルク・シュスターは

前任のダルムシュタットで、人数を懸けた守備から速さ重視のカウンターを武器に

昇格初年度のチームを残留に導くなど一定の成果を出しました。

そんなハードワークが当然のように求められるであろうチームにおいて

サイドハーフに求められることは、自陣ゴール前まで戻っての守備から

相手ゴール前での決定的な仕事まで多岐に渡るでしょう。


イメージとしては、それこそ

ヘルタ・ベルリンでの原口がモデルとなるのではないでしょうか。


シュスター監督は宇佐美に対して

「ドイツで自分の能力を証明してやろうという強い意志」を求めており

移籍会見で自身が言ったような

「アウクスブルクのスタイルは合わないかもしれない」

などということを、言っている場合ではありません。


宇佐美の再挑戦は、卓越した技術に戦術面が加わったことで始まります。

この再挑戦が上手く行くかどうか。

それには、メンタリティが大きく関わっていると言えるでしょう。

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